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救急搬送患者の受け入れ実績が芳しくない3次・2次救急には何らかの対応も―厚労省・医療計画検討会

2016.9.12.(月)

 2018年度からの第7次医療計画では、5疾病・5事業のうち救急医療についてメディカルコントール協議会などを活用して円滑な搬送・受け入れ体制を構築するとともに、地域住民に「かかりつけ医を持ち、不要な救急車要請を行わない」などの理解を求める。また3次救急医療機関について「地域連携」の視点での評価や、救急患者受け入れ実績が極めて少ない2次救急医療機関について何らかの対応を検討する―。

 こういった方向が9日に開かれた「医療計画の見直し等に関する検討会」(以下、検討会)で固まりました。

9月9日に開催された、「第4回 医療計画の見直し等に関する検討会」

9月9日に開催された、「第4回 医療計画の見直し等に関する検討会」

救急搬送患者の受け入れがゼロ件の2次救急医療機関もある

 2018年度から新たな医療計画(第7次)が始まります。検討会では、新たな計画指針の策定に向けた議論を進めており(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)、9日には5事業(救急、災害、へき地、周産期、小児)について見直しの方向性を検討しました。

 救急医療については、提供体制の整備や診療報酬上の手当などの充実策が図られていますが、まだ下記のような課題があると指摘されます。

(1)出動要請・搬送患者が増えており、とくに高齢の軽症(外来治療のみ)・中等症(入院医療を要する)患者が増えている

高齢者の救急搬送が実に半数超を占めている

高齢者の救急搬送が実に半数超を占めている

とくに軽症(外来治療)・中等症(入院医療が必要)の高齢者で、救急搬送が増えている

とくに軽症(外来治療)・中等症(入院医療が必要)の高齢者で、救急搬送が増えている

(2)とくに都市部において搬送困難事例(照会4回以上、現場滞在時間30分以上)が少なからずある

(3)3次救急・2次救急の医療機関間で患者受け入れ実績に大きな格差がある

(4)出口問題と言われる「救急治療を終えた患者の受け皿が不足している」状況が十分に解決されていない

 厚労省はこうした課題の是正・解決に向けて、都道府県の作成する第7次計画の中で次のような取り組みを行ってはどうかと提案しました。

▽地域のメディカルコントロール協議会(MC協議会)などをさらに活用して、円滑かつ適切な救急搬送・受け入れ体制を構築する

▽地域住民に救急医療への理解を深めてもらう

▽救命救急センターを含めた救急医療提供者の機能・役割を明確にしつつ、地域包括ケアシステムの中で救急医療を考え、地域で連携したきめ細かな取り組みによって出口問題に対応する

 こうした提案を検討会は概ね了承しましたが、いくつか注文も付いています。加納繁照構成員(日本医療法人協会会長)は「2次救急医療機関が減少していることが示された。3次救急は逆に必要量を超えて整備されている状況もあり、2次救急を充実していく方向を明確にすべき」旨を強く求めました。厚労省の調べによれば、2011年以降、2次救急医療機関は年間100施設程度のペースで減少しており、2015年3月31日時点で2769施設にとどまっています。医療の根幹とも言える2次救急の充実は重要なテーマと言えます。

2次救急医療機関は最近、減少傾向にある

2次救急医療機関は最近、減少傾向にある

 また相澤孝夫構成員(日本病院会副会長)は、要介護度の高い高齢者が夜間に急変した場合など、家族や施設職員では対応できず救急車の出動を要請することはやむを得ないと説明。ただし「救急治療を終えた後、自宅や施設に帰すことができないのが実際である。特別養護老人ホームのショートステイベッドなどで受け入れてもらえるようなネットワークづくりが必要になる」と提言しています。まさに出口問題への対応であり、厚労省もこの問題を重視しています。ちなみに東京都八王子市では▽救急業務連絡協議会▽救命救急センター▽医師会▽介護事業者▽市▽消防署▽社会福祉協議会―といったさまざまな組織が連携した「広域連絡会」を設置。後方病床などの整備を検討し、成果を上げており、各地での横展開が期待されます。さらに構成員からは「信頼できるかかりつけ医を持ち、不要不急の場合には救急車の出動を要請しなくても済む」ように地域住民に理解を求めていくことの重要性も強調されています。

 なお上記(3)の受け入れ実績格差も極めて大きな課題です。3次救急における年間搬送患者数を見ると、最大の施設では1万2701名なのに対し、最小では772人にとどまっています。また2次救急では最大1万名であるのに、最小の施設ではゼロ名となっています。厚労省医政局地域医療計画課の担当者は「数年にわたって搬送患者ゼロ名のような2次医療機関については、都道府県が見直しを要請できるような仕組みをつくれないか検討したい」との考えを示しています。

3次救急の医療機関でも、患者受入には大きな格差がある

3次救急の医療機関でも、患者受入には大きな格差がある

2次救急医療機関の中には、年間の受け入れ患者がゼロ件のところもある

2次救急医療機関の中には、年間の受け入れ患者がゼロ件のところもある

 さらにまた3次医療機関については、上記のような格差があるのもかかわらず、ほぼすべての施設で「A」評価(2015年度救命救急センター充実段階評価)となっています。救急医療の実態を把握するための評価項目が組み込まれていないためと考えられ、厚労省は2018年度に向けて「地域連携の視点に立った評価項目の見直し」を検討していきます。

ほぼすべての3次救急はA評価となっているが、厚労省は、今後「地域連携」の視点に立った評価項目も加えていく方針である

ほぼすべての3次救急はA評価となっているが、厚労省は、今後「地域連携」の視点に立った評価項目も加えていく方針である

へき地医療拠点病院、指定要件に巡回診療や医師派遣の「実績」を追加する方向

 また救急以外の4事業については、次のような見直し方向が厚労省から提案され、概ね了承されました。

【災害医療】

▽災害医療コーディネート体制を引き続き整備・強化する。地域の一般病院にもBCP(事業継続計画)の策定を推進する。南海トラフ巨大地震を想定し、広域医療搬送を想定した訓練の積極的な実施などを求める。

災害時にも事業系継続するための計画(BCP)をすべての医療機関で構築していくことが求められる

災害時にも事業系継続するための計画(BCP)をすべての医療機関で構築していくことが求められる

【へき地医療】

▽「へき地保健医療計画」を「医療計画」に一本化する。へき地医療拠点病院の1割程度が巡回診療や医師派遣などを行っていないことから、指定要件の見直し(例えば巡回診療・医師派遣・代診医派遣について年間12回以上の実績を求めるなど)を行い、へき地医療提供体制を充実する

厚労省は、へき地医療拠点病院の指定要件として「実績」を求めていく考え

厚労省は、へき地医療拠点病院の指定要件として「実績」を求めていく考え

【周産期医療体制】

▽「周産期医療体制整備計画」を「医療計画」に一本化する。圏域の弾力的な設定を行う。災害時における小児・周産期医療体制を構築する。

【小児医療(小児救急医療を含む)】

▽小児医療の拠点機関がない地域において、小児医療に積極的な中小医療機関を『地域振興小児科』(独立型・連携型)と位置づける。拠点医療機関と小児科かかりつけ医との連携を推進し、人材の育成なども強化する

小児中核病院などがない地域でも、小児医療に積極的な中小医療機関があり、そこを「地域振興小児科」として整備していく考え

小児中核病院などがない地域でも、小児医療に積極的な中小医療機関があり、そこを「地域振興小児科」として整備していく考え

 
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