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介護保険で「2割の利用者負担」を求める高齢者の範囲は結論先送り、「1割と2割の中間負担」(15%負担など)も検討—社保審・介護保険部会

2023.12.26.(火)

「介護保険の利用料を2割とする者」の範囲拡大について引き続き検討することが決まったが、「できるだけ早期に、より詳細なデータをもとに議論していく」必要がある—。

12月22日に開催された社会保障審議会・介護保険部会で、こうした点が確認されました。

介護保険の利用者負担、「1割と2割の中間」(15%負担)なども検討を

Gem Medで報じているとおり、▼2024年度の介護報酬改定率は「プラス1.59%」とし、うち0.98%分を介護職員等の処遇改善に充てる▼介護医療院(II型)・老健施設(療養型、その他型)の多床室について、月額8000円程度の室料負担を入所者に求める(2025年度中に実施)▼「介護保険の利用者負担を2割とする人の範囲」については引き続き検討し、2027年度からの第10期介護保険事業(支援)計画期間の「開始前」までに結論を得る—などの方針が武見敬三厚生労働大臣・鈴木俊一財務大臣との間で決定しました(関連記事はこちら)。

12月22日の介護保険部会では、このうち「介護保険の利用者負担を2割とする人の範囲について引き続き検討する」(先送り)方針が報告され、委員からは「現役世代の負担が限界に来ている中で、先送りは極めて遺憾である」(伊藤悦郎委員:健康保険組合連合会常務理事、ほか)、「各方面に配慮された妥当な決定内容である」(小泉立志委員:全国老人福祉施設協議会副会長、ほか)といった感想が出されました。

ただし、すでに決定した事項であり、決定内容に沿って「議論を早急に再開するべきである」との点では委員間の考えは一致しています。

また、今後の議論に向けた提案・注文として、例えば「高齢者を一括りにするのではなく、要介護者を抱える世帯の収支状況を把握し、それに基づく議論が必要である」(粟田主一委員:東京都健康長寿医療センター研究所副所長、染川朗委員:UAゼンセン日本介護クラフトユニオン会長)、「1割負担と2割負担の中間の負担割合(15%負担者など)設定なども考えていく必要がある」(津下一代委員:女子栄養大学特任教授)、「医療・介護双方の自己負担に関するモデルを示してほしい」(幸本智彦委員:日本商工会議所社会保障専門委員会委員)、「詳細なデータをもとに『確実に2割負担できる』層にのみ2割負担をお願いすべき」(江澤和彦委員:日本医師会常任理事)、「負担論議だけでなく、中長期的視点をもって『給付の在り方』も検討していく必要がある」(座小田孝安委員:民間介護事業推進委員会代表委員)といった声が目立ちます。

武見厚労相・鈴木財務相は次のような点も確認しており、今後の議論の柱となります。

▽利用者負担の「一定以上所得」(2割負担となる人)の判断基準について、以下の2つの考え方を軸に検討する
(i)直近の被保険者の所得等分布を踏まえ、「一定の負担上限額を設けずとも、負担増に対応できる」と考えられる所得を有する利用者に限り2割負担とする

(ii)負担増への配慮を行う観点から、当分の間、一定の負担上限額を設けた上で「(i)よりも広い範囲の利用者」を2割負担とする。その上で、介護サービス利用等への影響を分析し、2028年度までに「負担上限額の在り方」について必要な見直しを検討する

▽上記の検討にあたり「金融資産の保有状況等の反映のあり方」「きめ細かい負担割合のあり方」と合わせて早急に検討を開始する

2割負担者の範囲に関する議論は先送りとなった(社保審・介護保険部会1 231222)



今後、早い段階でこの議論が再開されると見込まれますが、これまでのように「利用者サイドは負担増を厭う、介護サービス提供サイドも利用者減を恐れて負担増を厭う」、その一方で「費用負担者サイドは負担増を急ぐ」という構図のままでは一向に議論は深まりません(すでに、この問題は何年にもわたって議論されているが全く内容が深まらない)。利用者サイド・事業者サイドは「介護保険財政の安定化」をどう考えるのか、費用負担者サイドは「利用者の生活など」をどう考えるのか、互いに逆の立場・視点に立って発言するなど、議論を深める工夫が期待されます。
が必要でしょう。

より所得の高い65歳以上高齢者には、より多くの介護保険料を負担してもらう

ところで介護保険部会では、65歳以上の1号保険料について「標準段階の多段階化」「高所得者の標準乗率の引き上げ」「低所得者の標準乗率の引き下げ」を行う。これにより低所得者の負担軽減に充てられている公費が浮くが、これは「介護従事者の負担軽減」など介護にかかる社会保障の充実に活用する方針を固めており(関連記事はこちら)、武見厚労相・鈴木財務相もこの方針を確認しています(関連記事はこちら)。

12月22日の介護保険部会では、この大臣決定を受けて「65歳以上の1号保険料」の詳細な見直し内容が明らかにされました。

国の定める標準段階は、現在の9段階から「13段階」に多段階化されます。より高所得の高齢者に、より多くの保険料負担をしてもらう区分を4つ新設し、それにより生じる「保険料収入増」を財源として、低所得者(第1―3段階)の保険料をより低く設定します。「応能負担の考え」(経済力が高く負担能力の高い人が、より多くの負担をすべき、との考え方)をより強化する見直しです。

具体的には、次のようになります。

(見直し)【第1段階】
→生活保護受給者世帯などが対象で(約647万人、2023年4月1日の状況に照らした推計値、以下同)、標準的な保険料水準(第5段階の人の負担、以下同)の0.285倍を負担する(現在は0.3倍を負担しており、5%の負担軽減となる)

(見直し)【第2段階】
→世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入等80万円超120万円以下の世帯が対象で(約357万人)、標準的な保険料水準の0.485倍を負担する(現在は0.5倍を負担しており、3%の負担軽減となる)

(見直し)【第3段階】
→世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入等120万円超の世帯が対象で(約319万人)、標準的な保険料水準の0.685倍を負担する(現在は0.7倍を負担しており、2.1%の負担軽減となる)

【第4段階】
→本人のみが市町村民税非課税(世帯にほかに課税者がいる)かつ本人年金収入等80万円以下の世帯が対象で(約397万人)、標準的な保険料水準の0.9倍を負担する(変更なし)

【第5段階】(標準的な保険料水準)
→本人のみが市町村民税非課税(世帯にほかに課税者がいる)かつ本人年金収入等80万円超の世帯が対象で(約519万人)、標準的水準の保険料を負担する(変更なし)

【第6段階】
→市町村民税課税かつ合計所得金額120万円未満の世帯が対象で(約493万人)、標準的な保険料水準の1.2倍を負担する(変更なし)

【第7段階】
→市町村民税課税かつ合計所得金額120万円以上210万円未満の世帯が対象で(約503万人)、標準的な保険料水準の1.3倍を負担する(変更なし)

【第8段階】
→市町村民税課税かつ合計所得金額210万円以上320万円未満の世帯が対象で(約226万人)、標準的な保険料水準の1.5倍を負担する(変更なし)

【第9段階】
→市町村民税課税かつ合計所得金額320万円以上420万円未満の世帯が対象で(約89万人)、標準的な保険料水準の1.7倍を負担する(変更なし)

(新)【第10段階】
→市町村民税課税かつ合計所得金額420万円以上520万円未満の世帯が対象で(約42万人)、標準的な保険料水準の1.9倍を負担する(新設)

(新)【第11段階】
→市町村民税課税かつ合計所得金額520万円以上620万円未満の世帯が対象で(約22万人)、標準的な保険料水準の2.1倍を負担する(新設)

(新)【第12段階】
→市町村民税課税かつ合計所得金額620万円以上720万円未満の世帯が対象で(約14万人)、標準的な保険料水準の2.3倍を負担する(新設)

(新)【第13段階】
→市町村民税課税かつ合計所得金額720万円以上の世帯が対象で(約67万人)、標準的な保険料水準の2.4倍を負担する(新設)

標準的な保険料多段階の全体像(社保審・介護保険部会3 231222)

保険料多段階の見直し内容(社保審・介護保険部会2 231222)



各保険者(市町村)は、この標準段階を参考に、自地域にマッチする保険料段階を設定することになります。

なお、このように「より高い所得の人に、より多くの保険料を負担してもらう」ことで、低所得者の保険料軽減に充てていた公費が少し少なく済むことになります(約382億円、国費約191億円、地方約191億円)。この浮いた公費は介護従事者の処遇改善をはじめとする「介護に係る社会保障の充実」に活用されます。



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