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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

医療・介護分野の人材紹介、「紹介料の適正な水準確保」や「紹介人材の質担保」などが依然として大きな課題—社保審・医療部会(2)

2024.2.13.(火)

医療・介護分野の人材紹介については、紹介料が高く、例えば「診療報酬の加算」などを設けても紹介会社に流れてしまっている事態をどう考えるべきか—。

また、紹介された人材の知識・技術が不十分なケースもあり、質の担保も重要な課題である—。

2月9日に開催された社会保障審議会・医療部会では、こういった議論も行われています(同日の新興感染症対策にかかる「協定締結」状況の記事はこちら)。

2月9日に開催された「第106回 社会保障審議会 医療部会」

診療報酬で「人材確保のための加算」を設けても、紹介患者に流れてしまう

医療・介護人材の確保は「医療・介護提供体制の根幹」となります。しかし、例えば「生産年齢人口の減少」や「他産業の賃上げ」により人材確保が難しくなってきています。実際に昨年(2023年)6月時点の有効求人倍率を見ると、全産業平均では1.19倍(1.19人の必要求人に対し、応募は1人というイメージ、数字が大きいほど人材不足であることを意味する)であるのに対し、介護職は4.02倍、医師・歯科医師・薬剤師等は2.22倍、看護職は1.99倍と高くなっています。

医療・介護分野の人手不足は深刻である(日慢協会見1 231214)



ところで医療・介護サービス提供にはケアの質・安全確保のために厳しい「人員配置基準」が設けられています。例えば、医療法では一般病院について「医師は患者16人に対し1人以上、看護師は患者3人に対し1人以上(診療報酬の基準に換算する場合は5倍(つまり看護配置で言えば15対1以上)する」などという標準人員が定められており、これを満たさない場合(いわゆる標欠医療機関)では指導等の対象になるとともに、診療報酬の減額が行われます。また、診療報酬上は医療法標準よりも厳しい人員配置基準(例えば急性期一般入院料1では7対1(医療法の基準に換算すると1.4対1)看護配置など)が設けられ、基準を満たさない場合には「低い区分の、低い報酬を算定」しなければならなくなります。

このため医療従事者が離職した場合には、すぐさま「新しい人材の確保」をしなければ、「低い区分の、低い報酬を算定」しなければならないケースが起こりえます。

医療人材確保のルートとしては、「直接雇用」(病院の求人に対し、医療従事者自らが応募してくるケース)や「ハローワーク利用」などのほか、「有料人材派遣会社の利用」が最近では多くなってきています。厚生労働省の調査では「医療・介護分野全体での、ハローワーク・有料人材派遣会社の比率は4対6と、有料人材紹介会社の方が多い」状況です(職種による差があるが、医師や看護師、医療技術者で顕著に有料人材派遣会社経由が多い)。

医療・介護分野でも「人材紹介会社」利用が増加している(日慢協会見2 231214)



ところで有料人材紹介会社による医療人材紹介に関しては、▼手数料が非常に高い▼スタッフの質が保たれていない(知識・技術が不十分な人が派遣されるケースもある)▼短期間での転職等を繰り返すケースもある—などの問題点が医療現場からたびたび指摘されています。

厚労省も事態を放置せず、例えば「短期間での転職勧奨につながるような求職者への『就職お祝い金』などを禁止する(2021年4月)」、「手数料等の情報開示を義務づける(2018年1月)」、「適正な職業紹介事業者の基準を策定し、認証する(2023年6月)」、「ハローワークでの人材確保対策を拡充する」といった対策を実施。

職業紹介の適正化に向けたこれまでの取り組み(社保審・医療部会(2)1 240209)



さらに今後、▼法令に違反する職業紹介事業者への厳正な対応(「医療・介護・保育」求人者向け特別相談窓口の周知、2023年度における集中的指導監督)▼有料職業紹介事業の透明化(紹介手数料の平均値・分布、離職率についての地域・職種ごとの公表、過去5年間の離職者数掲載)▼優良な紹介事業者の選択円滑化(2023年度中に認定基準見直し予定)▼ハローワークの機能強化(オンライン上での求人・求職者の利用推進、ハローワークごとの職種別就職実績の公表)―なども行われます。

職業紹介の適正化に向けた今後の取り組み(社保審・医療部会(2)2 240209)



より適正な医療人材紹介が行われると期待されますが、医療部会委員からは▼看護師1人当たりの紹介手数料が非常に高額なケースも少なくない。国や自治体による指導・監督を十分に行ってほしい(加納繁照委員:日本医療法人協会会長)、▼人手不足の医療機関等は足元を見られ、紹介手数料が非常に高額となる。診療報酬で人材確保に向けた【加算】などを設けても、紹介会社に流れてしまう。手数料などを詳細に分析し対策につなげる必要がある(神野正博委員:全日本病院協会副会長、島崎謙治委員:国際医療福祉大学大学院教授)、▼紹介会社を通じて医療人材を紹介してもらったが、知識・技術が不十分というケースもある。紹介人材の質を担保する仕組みが必要ではないか。看護補助者については、容易に他産業へ人材が流出してしまう。介護福祉士などの有資格者は医療分野でも適正に評価することが必要であろう(松田晋哉委員:産業医科大学教授)―などの意見・注文がついています。

こうした声も参考に「適正な医療人材紹介」を進めていく必要があります。なお人材紹介に関しては「医療・介護分野」で閉じられた世界ではなく、「他産業」も含めた検討が強く求められます。



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