薬剤師からの疑義照会をカルテに反映させず、再度、誤った薬剤処方を行った事例が発生―医療機能評価機構
2018.10.16.(火)
薬剤師の疑義照会があり薬剤の量などが変更になったが、電子カルテの処方内容を修正しなかったため、その後、処方歴をもとに変更前の薬剤を再び処方してしまった―。
こうした事例が、2017年1月から2018年8月までに2件報告されていることが、日本医療機能評価機構の調べで明らかになりました(機構のサイトはこちら)。
薬剤師疑義のカルテへの確実な反映が重要だが、それを補完する仕組みの検討も必要
日本医療機能評価機構は、全国の医療機関(国立病院や特定機能病院等は義務づけ)から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故に至る前に気づいたものの、ヒヤリとした、ハッとした事例)を収集し、その内容や背景を分析して事故等の再発防止に向けた提言等を行っています。また事故事例などの中から、毎月、とくに留意すべき事例等をピックアップし、「医療安全情報」として公表し、医療現場に注意を促しています(最近の情報はこちらとこちらとこちら)。10月15日に公表された「No.143」では「処方内容の未修正による再処方時の誤り」がテーマとなりました。
ある病院では、医師が処方箋を作成するに当たり、免疫抑制剤のセルセプトカプセル250を「1回2カプセル・1日2回(1日4カプセル)」と入力するところ、誤って「1回4カプセル・1日2回(1日8カプセル)」と入力してしまいました。保険薬局の薬剤師が疑義照会を行ったところ、誤りであることが分かり用量を変更して調剤を行いました。しかし、処方医は電子カルテの処方内容を修正しなかったため、後に患者が休日に緊急入院した際、処方歴をもとにセルセプトカプセル250を「1回4カプセル・1日2回」処方してしまいました。入院後に血中濃度を測定した際、数値が高く過剰投与していることが分かったといいます。
また別の病院では、外来担当の医師Aが高血圧症や狭心症等の治療薬ビソプロロールフマル酸塩錠「12.5mg」を処方しましたが、院内の薬剤師から「処方量が多いのではないか」との疑義照会があり「1.25mg」へ変更となりました。その際、医師Aは電子カルテの処方内容を修正せず、その後、患者が夜間に救急外来を受診して入院した際、別の医師Bが処方歴の用量をもとに、ビソプロロールフマル酸塩錠「12.5mg」を処方。薬剤師も看護師も気付かず、患者が内服してしまいました。
薬剤量の誤りは、種類によっては患者に重篤な副作用をもたらし、健康・生命を脅かすことも決して稀ではありません。事例が発生した病院では、「疑義照会により薬剤の量などを変更した際は、確実にカルテの処方内容を修正する」との取り組みを行ったといいます。
ただし、これまでにも院内で同様のルールがあったと考えられ、これの「徹底」では事例の再発防止としてはやや不完全な気もします。例えば、院内であれば「疑義照会を行った薬剤師やその代理が、カルテ等の修正内容をチェックする」、院外処方であれば「疑義照会の記録を残し、定期的にカルテ内容等との突合を行う」など、ミスが生じても補完できる仕組みを構築することなどが求められるでしょう。さらに、地域全体で「疑義照会の内容を確実にカルテ等に反映し、それを共有できる」仕組みを構築することも検討に値するのではないでしょうか。もちろん費用もかかりますが、その際に、行政も巻き込み「各種補助金の活用ができないか」を併せて検討することも重要です。
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