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外来診療 経営改善のポイント 看護必要度シミュレーションリリース

メトホルミン休薬せずヨード造影剤用いた検査を実施、緊急透析に至った事故発生―医療機能評価機構

2018.7.2.(月)

 今年(2018年)1-3月に報告された医療事故は963件、ヒヤリ・ハット事例は8422件となった。医療事故のうち5.7%・55件では患者が死亡しており、10.6%・102件では死亡にこそ至らなかったものの、障害残存の可能性が高い—。

 こういった状況が、日本医療機能評価機構が6月28日に公表した「医療事故情報収集等事業」の第53回報告書から明らかになりました(機構のサイトはこちら)(2017年10-12月の状況はこちら)。

 また報告書では、(1)集中治療部門のシステム関連(2)錠剤の粉砕関連(3)ヨード造影剤使用時のビグアナイド系経口血糖降下剤の休薬関連―に関連する医療事故を詳細に分析しています。

2018年1-3月、医療事故の5.7%、55件で患者が死亡

 今年(2018年)1-3月に報告された医療事故963件を、事故の程度別に見ると、「死亡」が55件(事故事例の5.7%、前四半期に比べて1.5ポイント減)、「障害残存の可能性が高い」ものが102件(同10.6%、前四半期に比べて0.1ポイント減)、「障害残存の可能性が低い」ものが232件(同24.1%、前四半期に比べて2.7ポイント減)、「障害残存の可能性なし」が293件(同30.4%、前四半期に比べて2.8ポイント増)などとなっています。「死亡」事故や「障害残存の可能性が高い」事故が、前四半期に比べて減少しています。

 医療事故の概要を見ると、最も多いのは「療養上の世話」で331件(同34.4%、前四半期に比べて8.3ポイント減)、次いで「治療・処置」250件(同26.0%、前四半期に比べて0.8ポイント増)、「薬剤」101件(同10.5%、前四半期に比べて2.5ポイント増)、「ドレーン・チューブ」77件(同3.0%、前四半期に比べて0.5%増)などと続いています。前四半期に比べて「広範な医療行為において事故が発生している」状況が伺えます。
医療事故情報収集等事業 第53回(2018年1-3月)1 180628
 

依然として幅広い場面でヒヤリ・ハット事例が発生、院内チェック体制の確認を

 ヒヤリ・ハット事例に目を移すと、今年(2018)年1-3月の報告件数は8422件でした。

概要を見ると、「薬剤」関連の事例が最も多く3117件(ヒヤリ・ハット事例全体の37.0%、前四半期と比べて0.4ポイント増)、次いで「療養上の世話」1565件(同18.6%、前四半期と比べて1.9ポイント増)、「ドレーン・チューブ」1328件(同15.8%、前四半期と比べて1.0ポイント増)などとなっています。前四半期に比べて、特筆すべき変化はないようですが、医療事故と同じく「広範な医療行為」においてヒヤリ・ハット事例が発生しており、院内のチェック体制を再確認(ダブルチェック、トリプルチェックなど)する必要性に変わりはありません。
 
ヒヤリ・ハット事例のうち4961件について、患者への影響度を見てみると、「軽微な処置・治療が必要、もしくは処置・治療が不要と考えられる」事例が96.8%(前四半期と比べて0.8ポイント増)と大半を占めていますが、「濃厚な処置・治療が必要と考えられる」ケースも2.6%・129件(同0.7ポイント減)、「死亡・重篤な状況に至ったと考えられる」ケースも0.6%・29件(同0.1ポイント減)あります。レアケースではあるものの、一歩間違えば重大な影響の出る事例が生じており、全医療機関において院内のチェック体制を再度、点検しなおす必要があります。
医療事故情報収集等事業 第53回(2018年1-3月)2 180628
 
なお留意すべきは、「個人が気を付ける」ことだけでは医療事故やヒヤリ・ハットの防止には十分に結びつかないという点です。人は誰でもミスを犯しますし、とりわけ医療従事者は多忙です。「必ず複数人でチェックする」「ミスが生じる前に、あるいは生じた場合にはすぐに気付くような仕組みを考慮する」「院内のルールを誰もが遵守する風土を作り上げる」など、医療機関全体が「自分の課題である」と捉えて対策を講じることが重要です。

ヨード造影剤用いた検査にあたり、メトホルミン等は休薬が必要である点を再周知せよ

 報告書では毎回テーマを絞り、医療事故の再発防止に向けた詳細な分析も行っています。今回は、(1)集中治療部門のシステム関連(2)錠剤の粉砕関連(3)ヨード造影剤使用時のビグアナイド系経口血糖降下剤の休薬関連―の3テーマについて、詳細な分析が行われました。このうち(3)について、少し詳しく見てみましょう。

ビグアナイド系経口血糖降下剤(メトグルコ錠やその後発品であるメトホルミン塩酸塩など多数)は、ヨード造影剤と併用にした場合、乳酸アシドーシスを起こすことがあります。このためヨード造影剤を用いた検査を行う場合には、ビグアナイド系経口血糖降下剤の投与を一時的に中止することが必要です(とりわけ、ヨード造影剤投与後48時間は本剤の投与を再開しない)。
医療事故情報収集等事業 第53回(2018年1-3月)3 180628
 
今年(2018年)1-3月には、ビグアナイド系経口血糖降下剤を、ヨード造影剤を用いた検査の「前」に内服した事例が1件、検査の「後」に内服した事例が1件報告されています。また、2017年にも検査の「後」に内服した事例が1件報告されています(都合、検査前内服が1件、検査後内服が2件)。このうち検査後内服1件では、患者に、無尿や嘔吐などの症状が現れ、乳酸アシドーシス、急性腎不全を呈したため、緊急入院・緊急透析が行われています。

これら3件について、詳細を見てみると、▼医師が血糖降下剤の中止指示を失念し、看護師が休薬に関する十分な認識がなかった▼看護師が休薬の必要性を知らず、患者にも説明がなされていなかった▼医師の中にも休薬の必要性を知らない者がいた▼ビグアナイド系経口血糖降下剤の後発品が休薬対象であると十分に認識していなかった―ことなどが明らかになっており、「入院時チェックリストの休薬情報の確認」「ビグアナイド系経口血糖降下剤の一覧周知」「造影CT検査の問診票改訂」などの対応が図られています。
医療事故情報収集等事業 第53回(2018年1-3月)4 180628
 
機構では、「後発品などで、休薬が必要な医薬品と気づかなかった」点を重くみて、「ヨード造影剤との併用に注意が必要な経口血糖降下剤」の一覧表を示すとともに、日本医学放射線学会が作成した併用注意に関するポスターを紹介し、院内での周知を図るよう要請しています。

ヨード造影剤との併用に注意が必要な経口血糖降下剤

ヨード造影剤との併用に注意が必要な経口血糖降下剤

 ヨード造影剤(尿路・血管用)とビグアナイド系糖尿病薬との併用注意に関するポスター(日本医学放射線学会 医療安全管理委員会)

ヨード造影剤(尿路・血管用)とビグアナイド系糖尿病薬との併用注意に関するポスター(日本医学放射線学会 医療安全管理委員会)

 
 
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