酸素ボンベ使用中に「残量ゼロ」となり、患者に悪影響が出てしまう事例が頻発―医療機能評価機構
2019.1.16.(水)
酸素ボンベ使用中に「残量ゼロ」となり、患者の呼吸に悪影響が生じた―。
こうした事例が、2010年10月から昨年(2018年)11月までに9件報告されていることが、日本医療機能評価機構が1月15日に公表した「医療安全情報 No.146」から明らかになりました(機構のサイトはこちら)。
酸素ボンベ使用は搬送時のみとし、逐次、酸素残量の確認を
日本医療機能評価機構は、全国の医療機関(国立病院や特定機能病院等については義務づけ)から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故に至る前に防いだが、ヒヤリとした、ハッとした事例)の報告を受け、その内容や背景を詳しく分析したうえで、事故等の再発防止に向けた提言等を行っています(医療事故情報収集等事業、医療事故情報収集等事業、関連記事はこちらとこちらとこちら)。
さらに事故事例などの中から「とくに留意すべき事例」等を毎月ピックアップし、「医療安全情報」として公表。医療現場に特段の注意喚起を行っています(最近の情報はこちらとこちらとこちら)。1月15日に公表された「No.146」では「酸素ボンベの残量確認不足」がテーマとなりました。
ある病院では、患者の呼吸状態が悪化したため医師が緊急で造影CT検査を指示。看護師は「酸素流量8L/分での使用可能時間」を確認しないまま患者を搬送し、酸素ボンベが「満タン」であるため、CT検査室の前室に到着後、中央配管からの酸素投与に切り替えませんでした。約20分後、CT検査室に入室し検査準備を行っていた際、患者が下顎呼吸となり、SpO2値は90%にまで低下していました。酸素ボンベを確認すると残量が「ゼロ」になっており、ただちに中央配管に切り替え、酸素投与を行いました。
また別の病院では、医師からの心臓超音波検査指示を受け、看護師が酸素ボンベの残量が8MPaあり、酸素流量5L/分での使用可能時間を勘案し「病室と検査室間の搬送には十分足りる」と考えて準備を行いました。看護助手が患者を搬送した検査室には中央配管がありませんでした。臨床検査技師は、酸素ボンベを使用しながら検査を行いましたが、検査中に残量がゼロになっていることに気付きませんでした。検査終了後、看護師と看護助手が検査室に行くと、患者の顔色は不良で呼名反応がなく、酸素ボンベを確認すると、残量がゼロになっていました。
「酸素ボンベ使用中に残量ゼロ」となってしまった事故事例9件のうち、5件では搬送時以外にも酸素ボンベを使用していました。こうした状況を踏まえて機構では、▼酸素ボンベの使用は「搬送時のみ」として、中央配管がある場所では速やかに切り替える▼酸素ボンベ使用中は、「引き継ぎ時」「検査中」「検査終了時」などに酸素の残量を確認する▼患者の検査時は、酸素投与量と患者の状態に応じて医師や看護師が付き添う―などの対策を検討するよう注意喚起しています。
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