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検体を紛失等してしまい、「病理検査に提出されない」事例が頻発―医療機能評価機構

2018.11.15.(木)

 検査のために患者の組織など(検体)を採取したが、検体を紛失したり、破棄してしまったため、病理検査に提出されなかった―。

 こうした事例が、2014年1月から2018年9月までに19件も報告されていることが、日本医療機能評価機構が11月15日に公表した「医療安全情報 No.144」から明らかになりました(機構のサイトはこちら)。
医療安全情報 144 図表 181115
 

再度の検体採取は患者に大きな負担、再採取できないケースもあることに注意

 日本医療機能評価機構は、全国の医療機関(国立病院や特定機能病院等については義務づけ)から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故に至る前に防いだが、ヒヤリとした、ハッとした事例)を収集し、その内容や背景を詳しく分析したうえで、事故等の再発防止に向けた提言等を行っています(医療事故情報収集等事業、関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちら)。また事故事例などの中から、とくに留意すべき事例等を毎月ピックアップし、「医療安全情報」として公表し、医療現場に注意を促しています(最近の情報はこちらこちらこちら)。11月15日に公表された「No.144」では「病理検体の未提出」がテーマとなりました。

 ある病院では、骨生検の後、医師が病理検体とラベルを病棟看護師に渡しましたが、看護師は病理部の受付時間が過ぎていたことから、その検体を病棟で保管することにしました。しかし、そうした検体の置き場所が定められておらず、行方不明になってしまいました。1か月後に医師が骨生検結果を患者に説明する予定でしたが、結果が出ていないことから「病理検体が提出されていない」ことに気付いたといいます。

 
 また別の病院では、下垂体腫瘍摘出術を施行する場合、通常は「摘出した腫瘍を脳神経外科医師が病理検査に提出する」手順をとっていましたが、検体を処理する医師が手術室にいないことがありました。手術後に、器械出し看護師が執刀医に「腫瘍の処理」を確認したところ、執刀医は「すでに検体が病理検査に提出されている」と思い込み、「破棄してよい」と伝えました。看護師は、腫瘍を破棄してよいか疑問に思ったものの、すべて破棄。1週間後に、医師が「検査の結果が遅れている」と思い、問い合わせたところ、病理検査に提出されていないことが判明したといいます。

 
 患者の疾患・状態等を把握するために検査を行ったものの、その検体を滅失してしまっては意味がありません。再度の検査は患者の身心に大きな負担となります、上記の後者事例に至っては「再検査は不可能」なため、別の手法を取らなければなりません。

 こうした事態は、例えば▼手術終了時に病理検体の有無、個数、組織名を確認する▼病理検体の置き場所を(病棟内で)定め、検体提出手順を作成する―といったルールを明確にし、かつそれを遵守することで確実に防止できます。

 各病院において、自院において「ルールがそもそも定められていない」「ルールに不明確な部分がある」「スタッフ全員が適切に認識していない(1人でも認識していないスタッフがいれば意味はない)」「認識はあるが遵守されていない」といった事態が生じていないか、改めて確認する必要があります。

 
 
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