Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 看護モニタリング

薬剤師が「検査値から患者の状態を把握」し、重大な副作用発生を防止した好事例―医療機能評価機構

2018.4.10.(火)

 高コレステロール血症等の治療に用いる「アトルバスタチン」には横紋筋融解症やミオパチーといった重大な副作用があり、「CK(CPK)上昇」等の症状が出た患者では投与を中止することが必要であるが、医師がこれに気づかずに処方を行ってしまった。薬剤師が検査結果から患者のCK(CPK)上昇に気づき、疑義照会によって処方が中止された―。

 日本医療機能評価機構は4月4日、薬局からこのようなヒヤリ・ハット事例が報告されたことを公表しました。(機構のサイトはこちら)。薬局薬剤師には、「検査結果や聞き取り情報から患者の状態を把握し、処方内容の適正性を確認する」「一般用医薬品の適正使用を勧奨する」など、極めて重要な役割があることを再確認できる事例が紹介されています。

お薬手帳への記載漏れで、患者の副作用情報が医師に伝わらなかった事例も

 日本医療機能評価機構は、患者の健康被害などにつながりかねなかった事例を薬局から収集する「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」を実施。その中でも、医療安全対策に有用な情報を「共有すべき事例」として毎月公表しています(関連記事はこちら)。4月4日には、5つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。

 まず1つ目は、一包化調剤を行う際に、高血圧症治療薬「ディオバン錠」の代わりに、同じく高血圧症治療薬である「コニール錠」が1錠混入してしまった事例です。

一包化を行う調剤機器の中に、前に調剤したコニール錠が残っており(静電気や糖衣錠のべたつきなどで機器に付着したと考えられる)、それに薬剤師が気づかなかったことが要因です。幸い、両剤は形状・色が異なるため、鑑査の時点で気づき、誤った薬剤が患者の手に渡ることはありませんでした。

機構では、「最新機器にも落とし穴が生じることを念頭において作業することが必要」「業務手順書にも反映させることが望ましい」とコメントしています。

 
 また2つ目は、初回来局時に「神経障害性疼痛などの治療に用いる『リリカ』で薬疹が出た」との情報を家族(患者本人は認知症)から得ていたにも関わらず、医師が『リリカカプセル』を追加処方してしまった事例です。

薬局では、家族から「リリカによる薬疹」情報を聞き取りによって得ていましたが、それを新しく作成したお薬手帳に記載していませんでした。このため処方医に、「リリカによる薬疹情報」が伝わっておらず、今回の事態が生じてしまったといいます。機構では、「お薬手帳の新規作成や更新時には、患者情報欄を確認して、もれなく記載する」よう強く求めています。

 
さらに3つ目は、以前から高コレステロール血症等の治療に用いる「アトルバスタチン」を服用している患者において、「CK(CPK):1245U/L」と極めて高い値(通常は男性40-250U/L、女性30-200U/L)であるにも関わらず、医師が同剤を処方してしまった事例です。

アトルバスタチンには横紋筋融解症やミオパチーといった重大な副作用があり、「CK(CPK)上昇や筋肉痛、脱力感、血中・尿中ミオグロビン上昇などが現れた場合には、直ちに投与を中止する」ことが添付文書に定められています。医師がこれに気づかず、患者が「処方箋とともに検査結果を薬局に提示して、相談をしてきた」ために、薬剤師が疑義照会を行い、事なきを得ました。

 機構では、薬剤師が▼検査値に関する情報▼患者とのコミュニケーションから得られる情報—などから、副作用や期待される効果などを確認し、患者の不利益を回避することで、安全かつ有効な薬物療法が行えると期待を寄せています。ヒヤリ・ハット事例ではありますが、各薬局で参考にすべき好事例と言えるでしょう。

 
また4つ目は、閉局間際に、一般用薬であるロキソニンSを販売したものの、「購入者は同剤の服用経験があった」が、「実際の服用者には服用軽減がなく、喘息の治療を受けていた」という事例です。服用者にアスピリン喘息(スピリンに代表されるNSIADsの服用で喘息発作が誘発される)の可能性を説明し、同剤は返却となりました。

機構では、▼一般用医薬品や要指導医薬品を販売する際、「使用されるのはどなたですか?使用されるご本人でないと販売できない薬があるので確認させて頂きます」などと使用者を確認する▼購入者が商品名を指定した場合、思い込みが生じ使用者の確認がおろそかになることがあるため、チェックシートを用いて確認漏れを防ぐ▼販売後でも疑問が生じたらすぐに再確認し、販売を中止する―などの対応をとるよう強く要請しています。

 
さらに5つ目は、甲状腺機能亢進症の治療等に用いる「メルカゾール錠」を服用している患者が、増毛剤の「リアップ」購入を希望した際、「内科の処方医に確認してほしい」旨を伝え、販売を見送ったという事例です。

リアップの説明書には、「甲状腺機能障害(甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症)の診断を受けている人は、医師・薬剤師に相談する」旨の記載があり、薬剤師がこれを遵守した好事例の1つと言えます。機構では「一般用医薬品や健康食品等の安全かつ適正な使用に関する助言」「健康の維持・増進に関する相談」「適切な専門職種や関係機関への紹介」なども、薬剤師に求められる役割であるとコメントしています。

 
診療報酬改定セミナー2024MW_GHC_logo

 

【関連記事】

薬剤師も患者の状態を把握し、処方薬剤の妥当性などを判断せよ―医療機能評価機構
複数薬剤の処方日数を一括して変更する際には注意が必要―医療機能評価機構

2017年10-12月、医療事故での患者死亡は71件、療養上の世話で事故多し―医療機能評価機構
誤った人工関節を用いた手術事例が発生、チームでの相互確認を―医療機能評価機構

薬剤師も患者の状態を把握し、処方薬剤の妥当性などを判断せよ―医療機能評価機構
複数薬剤の処方日数を一括して変更する際には注意が必要―医療機能評価機構
人工呼吸器、換気できているか装着後に確認徹底せよ-医療機能評価機構
手術場では、清潔野を確保後すぐに消毒剤を片付け、誤投与を予防せよ―医療機能評価機構
胸腔ドレーン使用に当たり、手順・仕組みの教育徹底を―医療機能評価機構
入院患者がオーバーテーブルを支えに立ち上がろうとし、転倒する事例が多発―医療機能評価機構
インスリン1単位を「1mL」と誤解、100倍量の過剰投与する事故が後を絶たず―医療機能評価機構
中心静脈カテーテルが大気開放され、脳梗塞などに陥る事故が多発―医療機能評価機構
併用禁忌の薬剤誤投与が後を絶たず、最新情報の院内周知を―医療機能評価機構
脳手術での左右取り違えが、2010年から11件発生―医療機能評価機構
経口避妊剤は「手術前4週以内」は内服『禁忌』、術前に内服薬チェックの徹底を―医療機能評価機構
永久気管孔をフィルムドレッシング材で覆ったため、呼吸困難になる事例が発生―医療機能評価機構
適切に体重に基づかない透析で、過除水や除水不足が発生―医療機能評価機構
経鼻栄養チューブを誤って気道に挿入し、患者が呼吸困難となる事例が発生―医療機能評価機構
薬剤名が表示されていない注射器による「薬剤の誤投与」事例が発生―医療機能評価機構
シリンジポンプに入力した薬剤量や溶液量、薬剤投与開始直前に再確認を―医療機能評価機構
アンプルや包装の色で判断せず、必ず「薬剤名」の確認を―医療機能評価機構
転院患者に不適切な食事を提供する事例が発生、診療情報提供書などの確認不足で―医療機能評価機構
患者の氏名確認が不十分なため、誤った薬を投与してしまう事例が後を絶たず―医療機能評価機構
手術などで中止していた「抗凝固剤などの投与」、再開忘れによる脳梗塞発症に注意―医療機能評価機構
中心静脈カテーテルは「仰臥位」などで抜去を、座位では空気塞栓症の危険―医療機能評価機構
胃管の気管支への誤挿入で死亡事故、X線検査や内容物吸引などの複数方法で確認を―日本医療機能評価機構
パニック値の報告漏れが3件発生、院内での報告手順周知を―医療機能評価機構
患者と輸血製剤の認証システムの適切な使用などで、誤輸血の防止徹底を―医療機能評価機構
手術中のボスミン指示、濃度と用法の確認徹底を―日本医療機能評価機構

2016年に報告された医療事故は3882件、うち338件で患者が死亡―日本医療機能評価機構
手術室などの器械台に置かれた消毒剤を、麻酔剤などと誤認して使用する事例に留意―医療機能評価機構
抗がん剤投与の速度誤り、輸液ポンプ設定のダブルチェックで防止を―医療機能評価機構
2016年7-9月、医療事故が866件報告され、うち7%超で患者が死亡―医療機能評価機構
2015年に報告された医療事故は3654件、うち1割弱の352件で患者が死亡―日本医療機能評価機構
2016年1-3月、医療事故が865件報告され、うち13%超は患者側にも起因要素―医療機能評価機構
15年4-6月の医療事故は771件、うち9.1%で患者が死亡―医療機能評価機構
14年10-12月の医療事故は755件、うち8.6%で患者死亡―医療事故情報収集等事業