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薬剤師が患者の腎機能低下に気づき、処方医に薬剤の減量を提案した好事例―医療機能評価機構

2018.6.12.(火)

 複数の医療機関から同じ薬剤が処方されていることに薬剤師が気づき、減量を実現できた。また、腎機能の低下した患者について、薬剤師から処方医に減量を提案し、これを処方医が受け入れて減量が実現できた―。

 日本医療機能評価機構は5月30日に、保険薬局からこのようなヒヤリ・ハット事例が報告されたことを公表しました。薬剤師からの積極的な疑義照会が、処方内容に変更に結びついた事例が4例取り上げられています(機構のサイトはこちら)。

複数医療機関からの重複投薬に薬剤師が気づき、減量が実現できた事例も

 日本医療機能評価機構は、患者の健康被害などにつながる恐れのあった事例を薬局から収集する「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」を実施しています。あわせて、収集事例の中から、医療安全対策に有用な情報を「共有すべき事例」として毎月公表しています(関連記事はこちらこちらこちら)。5月30日には、4つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。いずれも「疑義照会」に関するものです。

 1つ目は、複数の医療機関から同じ薬剤が処方されていた事例です。患者がA病院から紹介されてB医院を受診したところ、B医院で不整脈治療剤のピルシカイニド塩酸塩カプセル50mgと、塞栓予防のためのエリキュース錠5mgを処方されました。薬局で薬剤服用歴を確認したところ、実はA病院においてピルシカイニド塩酸塩カプセル25mgとエリキュース錠2.5mgが処方されていました。薬局が疑義照会したところ、B医院において、A病院の処方量を読み違えていたことが分かり、ピルシカイニド塩酸塩カプセルは50mgから25mgに、エリキュース錠は5mgから2.5mgに変更となっています。

 
 また2つ目は、「患者が処方薬を服用していない」ことを主治医が把握していなかった事例です。高血圧症等の治療薬であるアムロジピンの処方量が、従前より倍増となった患者がいましたが、薬剤師が薬剤を交付する際、当該患者は「今まで処方されていたアムロジピンを服用していなかった」ことが判明しました。主治医に報告したところ、主治医は患者が薬剤を服用していないことを知りませんでした(患者が後ろめたさからか、主治医に報告していなかった)。結果、増量は取りやめとなり、患者に「処方薬は飲み忘れることなく、適切に服用する」よう指導がなされています。

 
さらに3つ目は、適切な剤形への変更提案がなされた事例です。インフルエンザ治療薬のイナビル吸入粉末剤が4歳の小児に処方されましたが、薬剤師が確認したところ「吸入粉末状を適切に吸入できない」ことが判明しました。薬剤師が処方医に連絡し、タミフルドライシロップに処方変更となりました。処方医は小児科医でなく、「吸入可能な年齢かどうか」の判断が困難であったと推察されています。

 
 また4つ目は、患者の腎機能低下を踏まえ、薬剤師が減量を提案した事例です。70歳代の患者に対し、サイトメガロウイルス感染症治療に用いるバリキサ錠が処方されましたが、薬剤師は患者の腎機能が低下していることに気づき、「薬剤性腎障害診療ガイドライン2016」に基づき減量を提案。主治医がこれを受け入れ、バリキサ錠が半分に減量されました。

 
 このように、薬剤師が患者と十分にコミュニケーションをとり、▼患者の状態▼薬剤の服用状況▼処方量▼剤形―などを総合的に評価し、改善の余地がある場合に、処方医に疑義照会をすることが極めて重要です。

 2015年10月にまとめられた「患者のための薬局ビジョン」では、かかりつけ薬局は(1)服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導(2)24時間対応・在宅対応(3)かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化—を持つべきとされ、今般の4ケースは、(1)と(3)の機能を適切に果たした好事例と言えます(関連記事はこちら)。

かかりつけ薬局には、(1)服薬情報の一元的・継続的管理(2)24時間対応・在宅対応(3)医療機関などとの連携―という3つの機能が求められる

かかりつけ薬局には、(1)服薬情報の一元的・継続的管理(2)24時間対応・在宅対応(3)医療機関などとの連携―という3つの機能が求められる

 
 また、今年(2018年)5月には、高齢者においては生理機能が変化し、薬剤に起因する可能性のある有害事象が生じやすいことから、医師・薬剤師等が連携し適正に処方内容を見直していくための指針「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」がまとめられました。4つ目のケースなどは、この指針の内容をすでに具現化しているものと言えるでしょう(関連記事はこちらこちら)。
高齢者における薬剤処方見直しの一般的フロー

高齢者における薬剤処方見直しの一般的フロー

 
 さらに2018年度の調剤報酬改定では、▼薬剤師から処方医に減薬を提案し、実際に減薬が行われた場合に算定できる【服用薬剤調整支援料】(125点)を新設する▼【重複投薬・相互作用等防止加算】について、残薬調整以外の場合を40点に引き上げる(残薬調整は従前どおり30点)—など、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経済的に支える基盤が徐々に整備されてきています(関連記事はこちら)。
服用薬剤調整支援料の概要

服用薬剤調整支援料の概要

重複投薬・相互作用等防止管理料の見直し概要(上段)

重複投薬・相互作用等防止管理料の見直し概要(上段)

 
 もちろん、点数を算定するためにはさまざまな要件や基準をクリアしなければならず、疑義照会が直ちに経済的な評価につながるわけではありませんが、こうした取り組みの積み重ねが「かかりつけ薬局・薬剤師」の評価充実に結びついていきます。薬剤師と処方医との積極的に連携に期待が高まります。
 
 
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