Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages

メトトレキサート、「休薬期間」「患者の腎機能」などを確認し、適切量等の処方・調剤を―医療機能評価機構

2020.8.25.(火)

関節リウマチや乾癬などの治療薬である「メトトレキサート」については、▼休薬期間が必要である▼腎機能低下者では減量の必要がある―などの特性がある。薬剤師はこうした点について十分に知識を獲得するとともに、患者と積極的にコミュニケーションをとり、また検査値を確認するなどし、疑義については積極的に医師に照会を行い、適切な調剤を心掛ける必要がある—。

日本医療機能評価機構が8月17日に公表した、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の「共有すべき事例」から、こういった重要ポイントが浮上しました(機構のサイトはこちら)。

患者の検査値確認などを積極的に行い、投与量が正しいかなどの確認を

日本医療機能評価機構では、医療安全確保のために、全国の保険薬局(調剤薬局)から「患者の健康被害等につながる恐れのあったヒヤリ・ハット事例」(ヒヤリとした、ハッとした事例)を収集する「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」を展開しています。その一環として、収集事例の中から医療安全確保のために有益な情報を「共有すべき事例」として整理し、公表しています(最近の事例に関する記事はこちらこちらこちら)。8月17日には、新たに3つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。

1つ目は、「休薬が必要な薬剤」について、処方医・薬剤師(調整者)ともにその点を失念して処方・調剤してしまったが、鑑査者(薬剤師)が「休薬が考慮されていない」点に気づいて過剰投与を防止できた好事例です。

ある患者に、医療機関のリウマチ科から初めて、関節リウマチ等の治療薬である「メトトレキサート錠2㎎」3錠分2(朝食後2錠、夕食後1錠)28日分が処方されました。薬局の調製者は84錠を取りそろえて鑑査に回したところ、鑑査者が「メトトレキサート錠の添付文書にある用法・用量に照らして、処方箋の投与日数は正しいのだろうか」という疑問を感じました。鑑査者が患者に確認したところ、処方医からは「週に1日服用する」ように説明を受けていたことが判明。疑義照会を行った結果、「28日分」から「4日分」へ変更となりました。

メトトレキサート錠の用法・用量は、関節リウマチ等の治療にあたっては「通常、1週間単位の投与量を6mgとし、1週間単位の投与量を1回または2-3回に分割して経口投与する。分割して投与する場合、初日から2日目にかけて12時間間隔で投与する。▼1回また2回分割投与の場合は残りの6日間▼3回分割投与の場合は残りの5日間―は「休薬」する。これを1週間ごとに繰り返す」とされています。誤って連日服用した場合には、「骨髄抑制」などの重篤な副作用が発現する可能性もあります。

今回のケースでは、調整者がこの用法・用量の特殊性を十分に認識しなかった(知識として持っていても、多忙なために確認をおろそかにしてしまった可能性あり)ことにより、危うく患者に過剰量の薬剤が手渡されてしまうところでした。

機構では、同様の事例を防止するために、▼メトトレキサート製剤は特殊な服用方法の薬剤であることを薬局内で周知するため、教育・研修などに取り組む▼調剤する 際は用法や投与日数を見て、休薬期間が正しく設定されているか確認する▼メトトレキサート製剤の他にも休薬期間が必要な薬剤があり、これら薬剤の一覧表を作成したり、薬品棚に「休薬期間あり」などの札を貼るなどの対策をとる―ことをアドバイスしています。



2つ目も、薬剤師が患者とコミュニケーションをとって情報収集し、医師に疑義照会を実現した好事例です。

患者に、乾癬治療にも効能効果が認められている「メトトレキサートカプセル2㎎」3カプセル分3毎食後7日分が処方され、1週間の投与量が「42mg」とされていました。薬剤師は、患者から「乾癬の治療薬が処方される」と聞き取りましたが、乾癬治療において、メトトレキサートカプセルは「1週間単位の投与量6mg」とされていることから疑問を持ち、処方医に疑義照会。結果、「メトトレキサートカプセル2㎎」3カプセル分2(朝食後2カプセル、夕食後1カプセル)4日分に変更となりました。処方医は循環器内科医師で、メトトレキサートカプセル2㎎に関する知識が不足していた可能性があります。

これも第1の事例と同様で、薬剤師がメトトレキサートに関する知識を十分に持ち、添付文書等の確認を行い、さらに疑義照会を「実行」したことで、医療事故を防止できた好事例と言えます。



3つ目は、処方箋の投与量が、患者の状態に照らして好ましくないのではないかと考えた薬剤師が疑義照会を行い、投与量が見直された好事例です。

関節リウマチの診断を受けた患者に、▼「メトトレキサートカプセル2mg」2カプセル分2朝夕食後(土曜日服用)▼同1カプセル分1朝食後(日曜日服用)▼葉酸欠乏症などの治療薬「フォリアミン錠」1錠分1朝食後(火曜日服用)―が処方されました。処方箋には検査値が記載されており、▼クレアチニン1.14㎎/dL(正常値は、男性1.0mg/dl以下、女性0.7mg/dl以下、高い場合には腎機能低下が考えられる)▼eGFR36.7mL/min/1.73m2(正常値は90以上、低い場合には腎機能が低下していると考えられる(30-59は中等度の腎機能低下))―でした。日本リウマチ学会のガイドラインでは、「メトトレキサートの投与は、腎機能が低下した患者には初回2-4mg/週の開始が望ましい」とされていますが、今回の処方量は「通常どおりの6㎎/週」となていたため、薬剤師が処方医に疑義照会。結果として、▼「メトトレキサートカプセル2㎎」について、日曜日の服用が削除(土曜日のみの服用)▼フォリアミン錠の服用日が火曜日から月曜日に変更―となりました。

こちらも、薬剤師がメトトレキサートに関する知識を十分に持ち、処方箋の検査値情報を確認して、さらに疑義照会を「実行」したことで、医療事故を防止できた好事例です。

機構では、▼検査値が付されている処方箋を応需した場合は、検査値を基に、処方薬の1日の投与量・投与回数や投与期間の妥当性、服用薬による副作用発現の可能性を判断したうえで調剤を行う▼日頃から最新の診療ガイドラインなどに目を通し、薬物療法に関する広い知識を身につけておく―ことが重要とアドバイスしています。



厚生労働省は2015年10月に「患者のための薬局ビジョン」をまとめており、そこでは「かかりつけ薬局・薬剤師が▼服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導▼24時間対応・在宅対応▼かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化—の機能を持つべき」旨が強調されています。薬局・薬剤師がかかりつけ機能を強化・発揮し、「適正な薬学管理の実現」「重複投薬の是正」など医療の質を向上していくことが不可欠なためです(関連記事はこちら)。

とりわけ高齢者においては多剤投与が健康被害を引き起こす可能性が高いことが知られており、厚労省は「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」および「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))」を取りまとめ、公表しています。入院医療においては医療機関(薬剤部など)が薬剤適正使用の責任を負いますが、外来医療等において保険薬局(調剤薬局)のかかりつけ機能が極めて重要であることは述べるまでもないでしょう(関連記事はこちらこちらこちら)。

2018年度の前回調剤報酬改定では、▼薬剤師から処方医に減薬を提案し、実際に減薬が行われた場合に算定できる【服用薬剤調整支援料】(125点)の新設▼【重複投薬・相互作用等防止加算】について、残薬調整以外の場合を40点に引き上げる(残薬調整は従前どおり30点)—など、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経済的にサポートする基盤が整備され、さらに今般の2020年度改定でその充実(例えば【服用薬剤調整支援料2】の新設など)が図られています。

決して「疑義照会=点数算定」という単純な構図ではりません(要件・基準をクリアする必要がある)が、今回の事例(2つ目、3つ目の事例)のような薬剤師の取り組みが積み重ねられれば、確実に「かかりつけ薬局・薬剤師」の評価(評判)が高まっていきます。こうした現場の動きは、確実に報酬引き上げ論議等に結びついていくことから、「薬剤の専門家」という立場を踏まえて、積極的な疑義照会・処方変更提案などが行われることがさらに期待されます。

ぽんすけ2020 MW_GHC_logo

【関連記事】

患者からの収集情報に加え、「検査値」を積極的に入手し、それに基づく処方監査を―医療機能評価機構
定期処方薬剤についても患者とコミュニケーションとり、「副作用発現の有無」を確認せよ―医療機能評価機構
薬剤師は添付文書等から「正しい服用方法」など確認し、当該情報を処方医にも共有せよ―医療機能評価機構
薬剤師は診療ガイドライン等通じて「薬物療法の広い知識」身につけ、患者にも丁寧な情報提供を―医療機能評価機構
薬剤師は「薬剤添付文書の確認」「患者の服用歴確認」「医師への既往歴確認」などを―医療機能評価機構
骨粗鬆症治療、外来での注射薬情報なども「お薬手帳」への一元化・集約化を―医療機能評価機構
薬剤師が患者の服用状況、添付文書内容を把握し、医療事故を防止した好事例―医療機能評価機構
薬剤師が患者とコミュニケーションをとり、薬剤の専門的知識を発揮して医療事故を防止した好事例―医療機能評価機構
薬剤師が「患者の処方歴やアレルギー情報」を十分に把握し、医療事故を防止できた好事例―医療機能評価機構
薬剤師が「薬剤の用法用量や特性に関する知見」を活用し、医療事故を防止した好事例―医療機能評価機構
薬剤師が患者とコミュニケーションとり、既往歴や入院予定を把握して医療事故防止―医療機能評価機構
薬剤師が薬剤の添加物を把握し、患者とコミュニケーションをとってアレルギー発現を防止―医療機能評価機構
薬剤の専門家である薬剤師、患者の検査値・添付文書など踏まえ積極的な疑義照会を―医療機能評価機構
高齢患者がPTPシートのまま薬剤を服用した事例が発生、服用歴から「一包化」等の必要性確認を―医療機能評価機構
薬剤師の疑義照会により、薬剤の過量投与、類似薬の重複投与を回避できた好事例―医療機能評価機構
薬剤師が多職種と連携し、薬剤の過少・過量投与を回避できた好事例―医療機能評価機構
薬剤師が患者の訴え放置せず、メーカーや主治医に連絡し不整脈など発見できた好事例―医療機能評価機構
薬剤師が併用禁忌情報等に気づき、処方医に疑義照会した好事例―医療機能評価機構
薬剤師が患者の腎機能低下に気づき、処方医に薬剤の減量を提案した好事例―医療機能評価機構
薬剤師が「検査値から患者の状態を把握」し、重大な副作用発生を防止した好事例―医療機能評価機構
薬剤師も患者の状態を把握し、処方薬剤の妥当性などを判断せよ―医療機能評価機構
複数薬剤の処方日数を一括して変更する際には注意が必要―医療機能評価機構



どの医療機関を受診しても、かかりつけ薬局で調剤する体制を整備―厚労省「患者のための薬局ビジョン」



外来や在宅、慢性期性期入院医療など療養環境の特性踏まえ、高齢者への医薬品適正使用を―厚労省
外来・在宅、慢性期医療、介護保険施設の各特性に応じた「高齢者の医薬品適正性」確保を―高齢者医薬品適正使用検討会
医師と薬剤師が連携し、高齢者における薬剤の種類・量の適正化進めよ―高齢者医薬品適正使用検討会