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外来診療 経営改善のポイント 看護必要度シミュレーションリリース

薬剤師が患者の服用状況、添付文書内容を把握し、医療事故を防止した好事例―医療機能評価機構

2020.2.4.(火)

薬剤師が、患者と十分にコミュニケーションをとり服用状況を把握したことから「処方医の知らない状況」が明らかとなり、適切な処方へ変更できた。また薬剤師が薬剤の添付文書情報等を的確に把握していたため、やはり適切な処方への変更が可能となり、医療事故発生を未然に防ぐことができた―。

日本医療機能評価機構は1月27日に、保険薬局(調剤薬局)からこのようなヒヤリ・ハット事例が報告されたことを公表しました(機構のサイトはこちら)。

患者への薬剤情報提供書、個々の患者に合わせた内容での作成が望ましい

医療機能評価機構は、医療安全確保に向けて、患者の健康被害等につながる恐れのあったヒヤリ・ハット事例(「ヒヤリとした、ハッとした」事例)を薬局から収集する「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」を実施。収集事例の中から医療安全確保に向けてとりわけ有益な情報を「共有すべき事例」として公表しており(最近の事例に関する記事はこちらこちらこちら)、1月27日には新たに3つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。



1つ目は、患者への薬剤に関する説明が不十分で、患者の誤解を招いてしまった事例です。

患者に、うつ病・うつ状態、末梢性神経障害性疼痛などの治療に用いる「トリプタノール錠25」が処方され、薬局で薬剤が交付されました。その際、「疼痛に対して処方されたもの」と薬剤師は理解しましたが、「患者には処方医から説明があった」と思い込み、説明をしませんでした。その後、患者から「処方医からは痛み止めの薬を処方すると説明されたが、薬剤情報提供書にはトリプタノール錠がうつ病の治療薬であると記載されている」ことについて問い合わせがありました。トリプタノール錠が「帯状疱疹による疼痛」に対して処方されたことを患者に説明し、理解を得ています。

機構では、▼薬剤情報提供書は個々の患者のために作成されるべきものであり、複数の効能・効果を有する薬剤が処方された場合は「患者の病状に適した情報を選択して提供する」ことが望ましい▼やむを得ず、薬剤情報提供書に患者の病状と無関係な情報を掲載して提供する場合は、誤解を招かないよう丁寧に説明する必要がある―と強調しています。



2つ目は、薬剤師が患者に服用状況を確認することで「処方医の知らない状況」が明らかとなり、処方変更となった好事例です。

患者に対し、1回目に血栓塞栓症治療・予防薬「ワーファリン錠」が1日1.5㎎当たり処方され、2回目の処方で1日2㎎に増量になりました。処方医がワーファリンの効果が不十分(血液凝固因子に関する指標であるPT-INRが0.98であった)と判断したようです。薬剤師が患者に服用状況を確認すると、「初めて服用する薬剤だったため飲み忘れてしまい、服用回数は1-2回であった。患者はそれを処方医に伝えていなかった」ことが判明。薬剤師はワーファリンの増量で出血リスクが高まる可能性があると考え、処方医に患者の服薬状況を報告したところ、1日1.5㎎へ変更になりました。

機構では、▼薬剤師が患者の服薬情報を継続的に把握し、それに基づく管理・指導を行うことが重要である▼「特に注意が必要な薬剤」が処方された場合は、薬剤交付時だけでなく患者の服薬期間中にも服用状況を確認することで、服薬アドヒアランス不良を早期に発見し、服用しないことによるリスクを回避できる―とアドバイスしています。



3つ目は、薬剤師の役割を考えるうえで重要な事例です。

下痢や軟便の症状が続いていた患者が近隣の医療機関を受診し、下痢型過敏性腸症候群治療薬の「イリボー錠5μg」1錠が処方されました。薬剤師は、▼患者が女性である▼初回投与である―ことに鑑み、1日の投与量について疑義照会。その結果、同錠「2.5μg」1錠へ変更となりました。

イリボー錠の添付文書によれば、女性患者の下痢型過敏性腸症候群治療に対しては、▼通常、成人女性に2.5μgを1日1回経口投与する▼効果不十分の場合には増量できるが、1日最高投与量は5μgまでとする―旨が記載されており、薬剤師がこの点を把握していたために疑義照会を行うことができた好事例です。

機構では、「添付文書やインタビューフォームなどから薬剤の特性を理解し、処方監査を行うことが重要」とアドバイスしています。



2015年10月にまとめられた「患者のための薬局ビジョン」は、かかりつけ薬局・薬剤師に対し、(1)服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導(2)24時間対応・在宅対応(3)かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化—を持つべきと提言しています。

さらに2018年度の前回調剤報酬改定では、▼薬剤師から処方医に減薬を提案し、実際に減薬が行われた場合に算定できる【服用薬剤調整支援料】(125点)の新設▼【重複投薬・相互作用等防止加算】について、残薬調整以外の場合を40点に引き上げる(残薬調整は従前どおり30点)—など、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経済的にサポートする基盤の整備も行っています(関連記事はこちらこちらこちら)。

「疑義照会=点数算定」という単純構図ではありませんが(要件・基準をクリアする必要がある)、事例のような薬剤師の取り組みが積み重ねられることで、「かかりつけ薬局・薬剤師」の評価(評判)がさらに高まり、それが報酬引き上げに結びついていきます。「薬剤の専門家」という立場をいかんなく発揮し、積極的な疑義照会・処方変更提案が行われることが期待されます。



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