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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

高齢患者がPTPシートのまま薬剤を服用した事例が発生、服用歴から「一包化」等の必要性確認を―医療機能評価機構

2019.5.8.(水)

 定期薬の処方箋や服用歴から「一包化調剤」の必要性を確認可能であった高齢患者に対し、臨時薬の処方箋に一包化の指示がなかったことから、一包化せずに調剤し、患者が誤ってPTPシートのまま薬剤を服用してしまい、胃内視鏡処置を受けるに至った―。

 日本医療機能評価機構は4月23日に、保険薬局(調剤薬局)からこのようなヒヤリ・ハット事例が報告されたことを公表しました(機構のサイトはこちら)。

薬剤服用歴を十分に確認し、「一包化調剤」が必要な患者には、確実に一包化調剤を

 日本医療機能評価機構は、医療安全確保の一環として、患者の健康被害などにつながる恐れのある「ヒヤリとした、ハッとした」事例(ヒヤリ・ハット事例)を薬局から収集する「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」を実施。あわせて、収集事例の中から医療安全対策に有用な情報を「共有すべき事例」として公表しています(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。4月23日には3つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。
 
 1つ目は、高齢の患者がPTPシートのまま薬剤を服用してしまった事例です。

 70歳代の高齢患者に対し、臨時薬として気管支炎等における去痰剤「アンブロキソール塩酸塩」と咳嗽治療薬「デキストロメトルファン臭化水素酸塩」が処方されました。この患者は脳出血の既往があり、薬剤の飲み忘れや飲み間違いがあることから、定期薬の処方箋には「一包化」の指示があり、薬剤服用歴にもその旨が表紙に記載されていました。ただし、今回の臨時薬の処方箋にはその指示がありませんでした。

 このため薬剤師は一包化を行わず、PTPシートのまま両薬剤を交付。家族も一包化されていないことに気づきましたが、患者にPTPシートのまま薬剤を手渡したところ、患者はPTPシートのまま薬剤を飲み込んでしまい、救急外来で胃内視鏡による処置を受ける事態となりました。

 機構では、「薬剤を一包化調剤すべきであったところ、それをしなかったために患者が服用を誤った事例などが多数報告されている」ことを紹介した上で、薬剤服用歴などを利用して患者情報を管理し、調剤の際には患者情報を必ず確認し、「服薬支援のために一包化調剤を行う必要のある患者に、毎回同じ方法で確実に一包化調剤する」よう強く要請しています。

 
 2つ目は、漢方製剤の成分を処方医が把握していなかった事例です。

40歳代の女性患者に、鼻汁緩和等に用いる「ツムラ小青竜湯エキス顆粒(医療用)」と、悪寒等の緩和に用いる「ツムラ麻黄湯エキス顆粒(医療用)」が処方されました。両剤に含まれるマオウ(麻黄)の量から「動悸などの副作用の恐れあり」と考えた薬剤師が、処方医に疑義紹介を行ったところ、処方医は「ツムラ小青竜湯エキス顆粒(医療用)」にマオウ(麻黄)が含まれていることを把握しておらず、処方内容が変更(ツムラ麻黄湯エキス顆粒(医療用)の減量)されるとともに、「動悸が現れた場合には服用を中止する」よう指示がなされました。

機構では、▼2種類以上の漢方製剤が処方される場合、生薬が重複し、総投与量によって副作用が出現しやすい▼注意を要する生薬として「麻黄」(エフェドリンを主成分とし、不眠や発汗過多、動悸などの副作用あり)、「甘草」(グリチルリチン酸を主成分とし、低カリウム血症や血圧上昇などの副作用あり)などがある―ことを指摘。これらの成分は漢方製剤以外にも含まれることから、「一般用医薬品も含め、患者の服用歴を注意して確認する」よう求めています。

薬剤師の疑義紹介により、医療安全を確保できた好事例と言えるでしょう。2015年10月にまとめられた「患者のための薬局ビジョン」では、かかりつけ薬局が(1)服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導(2)24時間対応・在宅対応(3)かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化—を持つべきと提言されています(関連記事はこちら)。また2018年度の調剤報酬改定では、▼薬剤師から処方医に減薬を提案し、実際に減薬が行われた場合に算定できる【服用薬剤調整支援料】(125点)を新設する▼【重複投薬・相互作用等防止加算】について、残薬調整以外の場合を40点に引き上げる(残薬調整は従前どおり30点)—など、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経済的に支える基盤が整備されてきており、こうした取り組みを多くの薬局・薬剤師が進めていくことが期待されます。

 
 3つ目は、薬剤師が一般用医薬品の販売にあたり、処方薬があることを踏まえて、患者の希望とは異なる医薬品を勧めた事例です。

鼻炎治療として、登録販売者が一般用医薬品「ストナリニS」を勧めましたが、緑内障の疑いで病院から処方薬が出ていることが分かりました。引き継いだ薬剤師は、緑内障患者に禁忌とされている「クロルフェニラミンマレイン酸塩」(抗コリン作用のある薬剤は眼圧を上昇させ、緑内障を増悪させることがある)を含有するストナリニSを避け、緑内障患者でも比較的安全に使用できる「アレグラFX」を勧めることとなりました。

一般用医薬品の販売に当たっても、患者の服用歴確認の重要性を再確認できる事例と言えるでしょう。なお、緑内障患者については、「緑内障の種類」「薬剤の使用制限」を記載した「緑内障カード」を活用することで、医師・薬剤師・患者が情報共有する取り組みも進められており、機構でも、こうした連携を推進するよう勧めています。

 
 
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