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薬剤師が薬剤の添加物を把握し、患者とコミュニケーションをとってアレルギー発現を防止―医療機能評価機構

2019.8.5.(月)

 薬剤師が、薬剤の添加物なども踏まえ、さらに患者と十分なコミュニケーションをとってアレルギー情報を把握し、薬剤アレルギーの発現を未然に防いだ―。

 日本医療機能評価機構は7月31日に、保険薬局(調剤薬局)からこのようなヒヤリ・ハット事例が報告されたことを公表しました(機構のサイトはこちら)。

薬剤師が患者のアレルギー情報把握し、処方医に代替薬提案を行った好事例

 日本医療機能評価機構は、医療安全確保の一環として、患者の健康被害などにつながる恐れのあったヒヤリ・ハット事例(「ヒヤリとした、ハッとした」事例)を薬局から収集する「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」を実施。さらに収集事例の中から医療安全対策に有益な情報を「共有すべき事例」として公表しています(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。7月31日には3つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。
 
 1つ目は、FAX用紙による調剤を処方箋原本と照合せず、調剤誤りが生じた事例です。

 薬局にFAXで「1枚の処方箋」が送られ、薬剤師はそれをもとに調製しました。患者が来局した際、処方箋を2枚受け取りましたが、処方箋とFAXとを照合する際に患者から話しかけられたことから、確認が不十分となり、処方箋の2枚目に記載されていた痔核に伴う症状(出血、疼痛、腫脹)の緩解に用いる「ネリザ軟膏」(一般名:ジフルコルトロン吉草酸エステル, リドカイン)を患者に渡し忘れたといいます。

 機構には、ほかにも「FAX用紙の文字が不鮮明で、散剤の成分量を読み違えて秤量してしまったが、患者から受け取った処方箋を確認し、調製誤りに気付いた」事例も報告されています。機構では、「処方箋のFAX用紙による薬剤の取り揃えは、あくまでも準備であり、調剤は処方箋原本に基づいて行わなければならない。FAX用紙に基づいて調製した薬剤は、必ず処方箋と照合する」ことを求めています。

 
 
 2つ目は、「小児へは処方しない」旨の「使用上の注意」改訂内容が十分に周知されず、誤って小児へ調剤されかけた事例です。

 10歳の小児に対し、気管支炎などに伴う咳嗽の緩和に用いる「フスコデ配合錠」(一般名:ジヒドロコデインリン酸塩、dl-メチルエフェドリン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩)が処方されました。「ジヒドロコデインリン酸塩を含む薬剤」については、「使用上の注意」が改訂され、「12歳未満の小児には投与しない」こととなっています(一昨年(2017年)7月に【重要な基本的な注意】にその旨が記載され(関連記事はこちら)、今年(2019年)7月に【禁忌】となった(関連記事はこちら))。

この点について薬局内で周知されていましたが、「配合剤」については十分な注意喚起がなされず、調剤者・鑑査者ともに医師への疑義照会を行いませんでした。ただし、別の薬剤師がこの点に気付き、医師に疑義照会。同様の効能を持つ「アスベリン錠20」(一般名:チペピジンヒベンズ酸塩)に処方変更となっています。

 機構では、▼薬剤に関する情報をスタッフ間で情報共有することはもちろん、該当する 薬剤が処方された患者の薬剤服用歴に注意喚起が出るように設定したり、薬剤棚に注意表示するなど、具体的な対策をとる▼薬剤の最新情報に常に注意し、対応を行う―ことを求めています。

 
 
 3つ目は、薬剤師が、薬剤の添加物(エタノール)までも十分に把握した上で、患者のアレルギー情報を確認し、薬剤アレルギー発現を防止した事例です。

 ある患者に、気管支喘息・慢性気管支炎・肺気腫の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解に用いる「メプチンエアー10μg吸入100回」(一般名:プロカテロール塩酸塩水和物)が処方されました。当該患者に初めて交付する薬剤であったため、薬剤師が「アルコール過敏症」について確認したところ、患者はアルコール過敏症で、注射時のアルコール消毒も控えていることがわかりました。薬剤師が処方医に連絡し、エタノールを含有していない同効の「メプチンスイングヘラー10μg吸入100回」(一般名:プロカテロール塩酸塩水和物)への変更を提案。処方医もこれに賛同し、処方変更となりました。

この事例の背景には、「患者が、自身がアルコール過敏症について処方医に伝えていなかった」ことがあります。

機構では、▼薬剤アレルギーは、主成分以外の「添加物」に起因するものもあり、処方薬剤の添加物に関しても把握し注意する必要がある▼「患者がアンケートにすべて記載するとは限らず、特に外用薬に関する情報が洩れることも多く、状況が変わることもある」点に留意し、最新の情報を聴取する▼薬剤に含まれる具体的な添加物の成分を患者に伝えて、アレルギー歴の有無を確認することは、有効である―と指摘。

少なからぬ患者が、医師に「遠慮」してしまい、自身のアレルギー情報などを伝えそびれることがあります。薬剤師が患者と十分にコミュニケーションをとることは、こうした状況を「補完」するために非常に重要です。機構では、本事例について「外用薬の添加物に対するアレルギー歴を聴取し、代替薬を選定して処方医に処方提案まで行ったことは称賛で きる」と強調しています。

 
 
 2015年10月にまとめられた「患者のための薬局ビジョン」では、かかりつけ薬局が(1)服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導(2)24時間対応・在宅対応(3)かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化—を持つべきと提言されています(関連記事はこちら)。
 
また2018年度の前回調剤報酬改定では、▼薬剤師から処方医に減薬を提案し、実際に減薬が行われた場合に算定できる【服用薬剤調整支援料】(125点)を新設する▼【重複投薬・相互作用等防止加算】について、残薬調整以外の場合を40点に引き上げる(残薬調整は従前どおり30点)—など、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経済的に支援する基盤が整備されてきています(関連記事はこちらこちらこちら)。
 
 「疑義照会がすなわち、点数算定に直ちに結びつく」わけではありません(要件・基準をクリアする必要がある)が、事例のような薬剤師の取り組みが積み重ねられることで、「かかりつけ薬局・薬剤師」の評価がさらに高まり、それが報酬の引き上げ論議などに結びつきます。薬剤師の専門家の立場、患者に比較的身近な立場を活用した、積極的な疑義照会に期待が集まります。

   
 
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