病理検査報告書を放置、がん早期治療の機会逃す事例が頻発―医療機能評価機構
2019.5.16.(木)
病理診断報告書に「がん」である旨が記載されていたにも関わらず、院内の「確認」等手順が定められていなかったことなどから、その結果を放置し、長期間経過後に「がんが発見されていた」ことに気づいた―。
こうした事例が、2012年9月から今年(2019年)3月末までに35件報告されていることが、日本医療機能評価機構が5月15日に公表した「医療安全情報 No.150」から明らかになりました(機構のサイトはこちら)。
院内で病理診断報告書の確認・説明の手順を決めて実施せよ
日本医療機能評価機構は、全国の医療機関(国立病院や特定機能病院等では義務)から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故に至る前に防いだもののヒヤリとした、ハッとした事例)の報告を受け付け、その内容や背景を詳しく分析したうえで、事故等の再発防止に向けた提言等を行っています(医療事故情報収集等事業、医療事故情報収集等事業、関連記事はこちらとこちら)。
さらに事故事例などの中から、とくに留意すべき事例を毎月ピックアップ。内容を簡潔に整理して「医療安全情報」として公表し、医療現場に特段の注意喚起を促しています(最近の情報はこちらとこちらとこちら)。5月15日に公表された「No.150」では上部消化管内視鏡検査の病理診断報告書の確認忘れがテーマとなりました。
ある病院では、大腸がんの術前検査のために「消化器内科」医師が上部消化管内視鏡検査を施行し、生検を行いました。患者が「外科」に転科した後に病理診断報告書が作成されましたが、「消化器内科」医師は結果を確認しませんでした。一方で「外科」医師は、生検が行われていたことを把握しておらず、また両診療科間では病理診断報告書の▼確認▼患者への説明―について取り決めがなく、検査結果は放置されてしまいました。大腸がん手術から4年後、患者の貧血を精査するため、上部消化管内視鏡検査が実施。その際、「4年前の病理診断報告書に『胃がん』と記載されている」ことに気付いたといいます。
また、別の病院では、喉頭がん患者に「重複がんの検査」目的で上部消化管内視鏡検査を施行し、生検を行いました。同院では「病理診断報告書が作成されると、病理検査を依頼した内視鏡検査担当医に通知が出される」仕組みとなっていましたが、内視鏡検査を依頼した主治医には通知されず、主治医は病理診断報告書を確認していませんでした。4年後に患者から「物が飲み込みにくい」という訴えがあり、上部消化管内視鏡検査を行い、検査結果を確認した際に「4年前の病理診断報告書に『食道がん』と記載されている」ことに気付きました。
同様の事例が頻発しており、これらは「患者の早期治療の機会を奪ってしまう」重大な医療事故と言えるでしょう。
機構では「病理診断報告書の確認と説明の手順を決めて実施する」(例えば、▼病理診断報告書を「誰が見て」「誰が患者に説明するか」を明確にする▼患者に「病理検査を行ったこと」「後日、結果を説明すること」を伝えておく―など)よう強く求めています。
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