Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

病理検査報告書を放置、がん早期治療の機会逃す事例が頻発―医療機能評価機構

2019.5.16.(木)

 病理診断報告書に「がん」である旨が記載されていたにも関わらず、院内の「確認」等手順が定められていなかったことなどから、その結果を放置し、長期間経過後に「がんが発見されていた」ことに気づいた―。

 こうした事例が、2012年9月から今年(2019年)3月末までに35件報告されていることが、日本医療機能評価機構が5月15日に公表した「医療安全情報 No.150」から明らかになりました(機構のサイトはこちら)。

院内で病理診断報告書の確認・説明の手順を決めて実施せよ

 日本医療機能評価機構は、全国の医療機関(国立病院や特定機能病院等では義務)から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故に至る前に防いだもののヒヤリとした、ハッとした事例)の報告を受け付け、その内容や背景を詳しく分析したうえで、事故等の再発防止に向けた提言等を行っています(医療事故情報収集等事業、医療事故情報収集等事業、関連記事はこちらこちら)。

さらに事故事例などの中から、とくに留意すべき事例を毎月ピックアップ。内容を簡潔に整理して「医療安全情報」として公表し、医療現場に特段の注意喚起を促しています(最近の情報はこちらこちらこちら)。5月15日に公表された「No.150」では上部消化管内視鏡検査の病理診断報告書の確認忘れがテーマとなりました。

 ある病院では、大腸がんの術前検査のために「消化器内科」医師が上部消化管内視鏡検査を施行し、生検を行いました。患者が「外科」に転科した後に病理診断報告書が作成されましたが、「消化器内科」医師は結果を確認しませんでした。一方で「外科」医師は、生検が行われていたことを把握しておらず、また両診療科間では病理診断報告書の▼確認▼患者への説明―について取り決めがなく、検査結果は放置されてしまいました。大腸がん手術から4年後、患者の貧血を精査するため、上部消化管内視鏡検査が実施。その際、「4年前の病理診断報告書に『胃がん』と記載されている」ことに気付いたといいます。
医療安全情報150 190515の図表
 
 また、別の病院では、喉頭がん患者に「重複がんの検査」目的で上部消化管内視鏡検査を施行し、生検を行いました。同院では「病理診断報告書が作成されると、病理検査を依頼した内視鏡検査担当医に通知が出される」仕組みとなっていましたが、内視鏡検査を依頼した主治医には通知されず、主治医は病理診断報告書を確認していませんでした。4年後に患者から「物が飲み込みにくい」という訴えがあり、上部消化管内視鏡検査を行い、検査結果を確認した際に「4年前の病理診断報告書に『食道がん』と記載されている」ことに気付きました。

 
 同様の事例が頻発しており、これらは「患者の早期治療の機会を奪ってしまう」重大な医療事故と言えるでしょう。

 機構では「病理診断報告書の確認と説明の手順を決めて実施する」(例えば、▼病理診断報告書を「誰が見て」「誰が患者に説明するか」を明確にする▼患者に「病理検査を行ったこと」「後日、結果を説明すること」を伝えておく―など)よう強く求めています。

 
 
診療報酬改定セミナー2024MW_GHC_logo

 

【関連記事】

手術前に中止すべき薬剤の「中止指示」を行わず、手術が延期となる事例が頻発―医療機能評価機構
患者を車椅子へ移乗させる際、フットレストで外傷を負う事故が頻発―医療機能評価機構
酸素ボンベ使用中に「残量ゼロ」となり、患者に悪影響が出てしまう事例が頻発―医療機能評価機構
腎機能が低下した患者に通常量の薬剤を投与してしまう事例が頻発―医療機能評価機構
検体を紛失等してしまい、「病理検査に提出されない」事例が頻発―医療機能評価機構
薬剤師からの疑義照会をカルテに反映させず、再度、誤った薬剤処方を行った事例が発生―医療機能評価機構
膀胱留置カテーテルによる尿道損傷、2013年以降に49件も発生―医療機能評価機構
検査台から患者が転落し、骨折やクモ膜下出血した事例が発生―医療機能評価機構
総投与量上限を超えた抗がん剤投与で、心筋障害が生じた事例が発生―医療機能評価機構
画像診断報告書を確認せず、悪性腫瘍等の治療が遅れた事例が37件も発生―医療機能評価機構
温罨法等において、ホットパックの不適切使用による熱傷に留意を―医療機能評価機構
人工呼吸器、換気できているか装着後に確認徹底せよ-医療機能評価機構
手術場では、清潔野を確保後すぐに消毒剤を片付け、誤投与を予防せよ―医療機能評価機構
複数薬剤の処方日数を一括して変更する際には注意が必要―医療機能評価機構
胸腔ドレーン使用に当たり、手順・仕組みの教育徹底を―医療機能評価機構
入院患者がオーバーテーブルを支えに立ち上がろうとし、転倒する事例が多発―医療機能評価機構
インスリン1単位を「1mL」と誤解、100倍量の過剰投与する事故が後を絶たず―医療機能評価機構
中心静脈カテーテルが大気開放され、脳梗塞などに陥る事故が多発―医療機能評価機構
併用禁忌の薬剤誤投与が後を絶たず、最新情報の院内周知を―医療機能評価機構
脳手術での左右取り違えが、2010年から11件発生―医療機能評価機構
経口避妊剤は「手術前4週以内」は内服『禁忌』、術前に内服薬チェックの徹底を―医療機能評価機構
永久気管孔をフィルムドレッシング材で覆ったため、呼吸困難になる事例が発生―医療機能評価機構
適切に体重に基づかない透析で、過除水や除水不足が発生―医療機能評価機構
経鼻栄養チューブを誤って気道に挿入し、患者が呼吸困難となる事例が発生―医療機能評価機構
薬剤名が表示されていない注射器による「薬剤の誤投与」事例が発生―医療機能評価機構
シリンジポンプに入力した薬剤量や溶液量、薬剤投与開始直前に再確認を―医療機能評価機構
アンプルや包装の色で判断せず、必ず「薬剤名」の確認を―医療機能評価機構
転院患者に不適切な食事を提供する事例が発生、診療情報提供書などの確認不足で―医療機能評価機構
患者の氏名確認が不十分なため、誤った薬を投与してしまう事例が後を絶たず―医療機能評価機構
手術などで中止していた「抗凝固剤などの投与」、再開忘れによる脳梗塞発症に注意―医療機能評価機構
中心静脈カテーテルは「仰臥位」などで抜去を、座位では空気塞栓症の危険―医療機能評価機構
胃管の気管支への誤挿入で死亡事故、X線検査や内容物吸引などの複数方法で確認を―日本医療機能評価機構
パニック値の報告漏れが3件発生、院内での報告手順周知を―医療機能評価機構
患者と輸血製剤の認証システムの適切な使用などで、誤輸血の防止徹底を―医療機能評価機構
手術中のボスミン指示、濃度と用法の確認徹底を―日本医療機能評価機構

小児への薬剤投与量誤り防止など、現時点では「医療現場の慎重対応」に頼らざるを得ない―医療機能評価機構
車椅子への移乗時等にフットレストで下肢に外傷を負う事故が頻発、介助方法の確認等を―医療機能評価機構
メトホルミン休薬せずヨード造影剤用いた検査を実施、緊急透析に至った事故発生―医療機能評価機構

 
抗がん剤の副作用抑えるG-CSF製剤、投与日数や投与量の確認を徹底せよ―医療機能評価機構
小児への薬剤投与量誤り防止など、現時点では「医療現場の慎重対応」に頼らざるを得ない―医療機能評価機構

2017年10-12月、医療事故での患者死亡は71件、療養上の世話で事故多し―医療機能評価機構
誤った人工関節を用いた手術事例が発生、チームでの相互確認を―医療機能評価機構
2016年に報告された医療事故は3882件、うち338件で患者が死亡―日本医療機能評価機構
手術室などの器械台に置かれた消毒剤を、麻酔剤などと誤認して使用する事例に留意―医療機能評価機構
抗がん剤投与の速度誤り、輸液ポンプ設定のダブルチェックで防止を―医療機能評価機構
2016年7-9月、医療事故が866件報告され、うち7%超で患者が死亡―医療機能評価機構
2015年に報告された医療事故は3654件、うち1割弱の352件で患者が死亡―日本医療機能評価機構
2016年1-3月、医療事故が865件報告され、うち13%超は患者側にも起因要素―医療機能評価機構
15年4-6月の医療事故は771件、うち9.1%で患者が死亡―医療機能評価機構
14年10-12月の医療事故は755件、うち8.6%で患者死亡―医療事故情報収集等事業