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病床機能報告 病床ユニット

薬剤師が専門知識をもとに「抗がん剤の副作用軽減のための併用薬」投与の適正性を確保できた好事例—医療機能評価機構

2024.5.13.(月)

患者の抗がん剤が変更された際、前の抗がん剤の副作用を軽減するために処方されていた併用薬について、継続投与の必要性を薬剤師が疑義紹介し、適切な対応が行えた—。

日本医療機能評価機構が5月10日に公表した、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の「共有すべき事例」から、こういった重要知見が明らかになりました(機構のサイトはこちら)。

「空腹時に服用する薬剤」の適時服用を実現にも薬剤師が関与せよ

日本医療機能評価機構では、保険薬局(調剤薬局)における医療安全の確保・向上を目指した「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」も展開しています。全国の保険薬局から「患者の健康被害等につながる恐れのあったヒヤリ・ハット事例」(ヒヤリとした、ハッとした事例)の報告を求め、重要な事例の集積・解析・公表を踏まえて「再発防止」を目指すものです。

再発防止の一環として、ヒヤリ・ハット事例の中から、医療安全確保のために有益な情報を「共有すべき事例」として定期的にピックアップ・公表しています(最近の事例に関する記事はこちら)。今般、新たに2つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。

1つ目は「空腹時に服用する薬剤」の服用時点を適正化できた事例です。

患者にアレルギー性鼻炎等治療薬の「ビラノア錠20mg」1日1回・1錠・夕食前が処方されました。ビラノア錠は「空腹時」に服用する薬剤であるため、処方医に疑義照会を行った結果、用法が「寝る前」に変更となりました。薬剤師は、患者に薬剤を交付する際「ビラノア錠は1日1回、『寝る前』に服用すること、夕食から2時間以上空ける」ことを説明しています。

機構では、処方医が「食前30分の服用であれば食事の影響を受けない」と考えた可能性があると推測し、▼空腹時に服用する薬剤が処方された際、「薬剤の特性」「患者の生活状況」を確認して「服薬時点の妥当性」を検討し、適切な服用時点を処方医に提案する▼一般的に、「空腹時服用」は「食事の1時間前から2時間後までを避ける」ことを差すが、異なるものもあるので、「食事の影響を受ける薬剤」をリストアップし、特性を薬局内で共有する▼空腹時に服用する薬剤を交付する際は、患者に「食事の影響を受けるため空腹時に服用する必要がある」という理由も説明し、患者説明用資材などを提供する—ことが重要とアドヴァイスしています。



2つ目は「抗がん剤が変更」された場合に、抗がん剤の副作用発現を抑えるために処方されていた医薬品の「継続」について薬剤師が疑義解釈し、適切な対応が行えた好事例です。

前立腺がんと診断された患者に、前立腺がん治療薬「ザイティガ錠」と、副腎皮質ホルモン剤で前立腺がんへの効能効果も認められている「プレドニゾロン錠『タケダ』5mg」が処方されていました。プレドニゾロン錠は、ザイティガ錠の副作用の発現率と重症度を軽減するために処方されていました。しかし、症状が悪化したため「ザイティガ錠」→「ニュベクオ錠300mg」に変更されました。患者に残薬の有無を確認したところ、ザイティガ錠と一緒に処方されていたプレドニゾロン錠が10日分残っていることがわかった。薬剤師がプレドニゾロン錠の服用継続に ついて処方医に疑義照会を行った結果、服用を中止するよう指示を受けました。

機構では、処方医が「プレドニゾロン錠の残薬について考慮しなかった」可能性があると推測し、▼患者が継続服用している薬剤が変更になる際、「服用している薬剤の内容」「残薬数」を確認し、安全な切り替えることができるよう支援を行う▼プレドニゾロンの投与を中止する際は漸減法を行うことがあり、患者の状態に応じ、処方医の判断により減量幅、期間などの調整を行うことに留意する—ことが重要とアドヴァイスしています。





薬局・薬剤師には「対物業務」から「対人業務」への移行が求められ、いわゆる「かかりつけ薬局・薬剤師」が▼服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導▼24時間対応・在宅対応▼かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化—の機能を持つべきことが重要です(関連記事はこちら)。

あわせて、昨年(2022年)7月には「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」が、▼「対物業務のみ・対人業務に力を入れない」薬局経営が成り立たないような調剤報酬へ移管する必要がある▼「対物業務の効率化」のため、まず「一包化業務の他薬局」への外部委託認可を検討する▼「ICT化・DX対応」を進めるとともに、薬局薬剤師は「地域の多職種や、病院薬剤師と顔の見える関係」構築に努める必要がある—との考えをまとめています(関連記事はこちら)。

とりわけ高齢者においては多剤投与が健康被害を引き起こす可能性が高く(ポリファーマシー)、厚生労働省は「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」および「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))」を取りまとめ、注意を呼び掛けています。とくに外来医療等では、患者のそばに常に医療従事者がいるわけではないことから、保険薬局(調剤薬局)のかかりつけ機能が極めて重要となります(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。3つ目の事例は、薬局薬剤師によるポリファーマシー対策実践の重要事例と言えます。



こうした考え方を先取りし、2018年度の調剤報酬改定では、▼薬剤師から処方医に減薬を提案し、実際に減薬が行われた場合に算定できる【服用薬剤調整支援料】(125点)の新設▼【重複投薬・相互作用等防止加算】について、残薬調整以外の場合を40点に引き上げる(残薬調整は従前どおり30点)—など、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経済的にサポートする基盤が整備され、前回の2020年度改定での充実(例えば【服用薬剤調整支援料2】の新設など)、今回の2022年度改定での充実(例えば「調剤料の処方日数に応じた評価の見直し」や「調剤管理料の新設」など)も図られています。

「疑義照会=点数算定」という単純構造ではないものの(要件・基準をクリアする必要がある)、今回の事例のような薬剤師の素晴らしい取り組みが積み重ねられることで、「かかりつけ薬局・薬剤師」の評価(評判)が高まり、診療報酬での評価にも結び付くでしょう。

さらに、患者から「あの薬局、あの薬剤師さんは親身になってくれ、お医者さんに問合せまでしてくれる」との良い評判が立つことが、薬局経営の安定化に非常に効果的です。



なお、厚労省は2021年3月31日に通知「『病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方』について」を示しており、病院はもちろん、地域のクリニックや薬局と連携して「ポリファーマシー対策」を進めることの重要性を指摘しています。医療安全確保のためにも「地域連携」が極めて重要です。



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