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GemMed塾 看護モニタリング

薬剤師・薬局は添付文書確認など徹底し、患者とコミュニケーションをとり「適切な服薬指導」を行うことが重要—医療機能評価機構

2023.4.3.(月)

薬剤師が添付文書などを十分に確認せず「誤った薬剤(形状)を交付してしまう」「誤った説明をしてしまう」「不十分な説明をしてしまう」事例が散発している—。

日本医療機能評価機構が3月30日に公表した、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の「共有すべき事例」から、こういった重要知見が明らかになっています(機構のサイトはこちら)。

「不適切な使用方法」説明等も行い、患者が「正しく薬剤を服用等できる」環境を整えよ

日本医療機能評価機構では、保険薬局(調剤薬局)における医療安全の確保・向上を目指した「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」も展開しています。全国の保険薬局を対象に「患者の健康被害等につながる恐れのあったヒヤリ・ハット事例」(ヒヤリとした、ハッとした事例)の報告を求め、重要な事例の集積・解析・公表を踏まえて「再発防止」を目指すものです。

再発防止の一環として、ヒヤリ・ハット事例の中から、医療安全確保のために有益な情報を「共有すべき事例」として定期的にピックアップ・公表しています(最近の事例に関する記事はこちらこちら)。今般、新たに3つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。

1つ目は、「注射薬のデバイスを間違えてしまった」事例です。

ある患者に重度のアトピー性皮膚炎や気管支喘息などの治療に用いる「デュピクセント皮下注300mgペン」が初めて処方されました。しかし、薬局には「別の患者のために取り寄せていたデュピクセント皮下注300mgシリンジ」の在庫しかありませんでした。薬剤師は「ペン型製剤」の存在を知らず、思い込みで「シリンジ型製剤」を調製。患者に、シリンジ型製剤の使用方法や注意事項を詳しく説明したうえで2本交付しました。翌日、薬剤を間違えたことに薬剤師が気付き、患者に連絡しましたが、すでに1本を使用していたため、使用していない1本をペン型製剤と交換。処方医に経緯を報告しています。

事例の背景には、▼調製・鑑査を行った薬剤師がデュピクセント皮下注に「ペン型製剤」と「シリンジ型製剤」があることを知らなかった▼処方された注射薬のデバイスを確認しなかった▼患者は、医師から「ペン型製剤」の使用方法について説明を受けていたため、薬剤師が「シリンジ型製剤」を説明した際に「話がかみ合わない。何かおかしい」と感じたが、疑問を解決しなかった—という「知識不足」と「確認不足」の重層的存在があります。

機構では、こうした事故の再発防止に向けて、▼薬剤師は、処方箋に記載された薬剤の「規格」「剤形」「デバイス」などのすべての文字を確認する▼処方箋に記載された薬剤名と、調製された薬剤の名称を「一文字ずつ区切りながら指差し確認する」手法が有用である▼処方箋に印刷された二次元バーコードや電子処方箋などの「処方データを活用する」こと、レセコンに入力された処方データと薬剤を突合する「調剤監査支援システムを活用する」ことも有効である●「注射薬に異なるデバイスが新たに販売された」際には、製薬企業から情報が得られるように 環境を整備し、その情報を薬局内で共有する▼患者と話がかみ合わないと感じた時には、薬剤師から一方的に情報提供するのではなく、「病院ではどのような説明を受けたのか」「薬剤の使用に疑問や不安はないか」などの情報を患者から得たうえで、改めて処方箋と薬剤を確認する—ことをアドヴァイスしています。



2つ目は、薬剤師が「薬剤交付時の説明を誤ってしまった」事例です。

80歳代の患者に、高カリウム血症治療薬の「ロケルマ懸濁用散分包5g」が処方されていました。患者から「同剤を服用したところ口腔内に広がって不快に感じたため、懸濁せず服用している」ことを聴き取った薬剤師Aは、「オブラートに包んで服用し、その後に水で流し込んでみてはどうか」と提案しました。次に患者が来局した際に対応した薬剤師Bは、前回の薬剤服用歴から「患者がオブラートを使って同剤を服用している」ことを確認し、「そのまま継続する」よう指導しました。薬剤交付後、薬剤師Bが薬剤服用歴を入力する際に同剤の添付文書を確認したところ「オブラートの使用は不適切であり、水に懸濁して服用する必要がある」ことに気付きました。

事例の背景には、▼同剤は薬局で取り扱う機会の少ない薬剤であり、薬剤師の知識が不足していた▼「水を服用すれば懸濁しなくても問題ないだろう」との思い違いがあった▼添付文書の確認を怠った—という点があります。

機構では、▼知識が不足している薬剤が処方された際は、患者に交付する前に「添付文書などを確認」した上で、処方監査や服薬指導を行う▼患者から薬剤の服用に関して相談を受けた場合に、「薬剤師のみの判断で対応できるか」否かを検討する▼薬物動態や薬理作用の観点から適切な服用方法を指導しても患者が指示通りに服用できない場合は、疑義照会やトレーシングレポート等で「医師に情報提供」し、医療機関と連携して対応する―ことなどをアドヴァイスしています。



3つ目は、「吸入剤の説明が不足していた」事例です。

80歳代の患者に、慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬の「ビレーズトリエアロスフィア56吸入」が処方されました。薬剤師は、薬剤に同封されている指導箋をもとに「吸入の方法」を説明しました。しかし翌日、患者から「吸入剤を使用したところ薬剤が噴霧されず、何回も繰り返しプッシュしたら何も出なくなった」と薬局に電話がありました。薬剤師が患者宅を訪問して状況を確認すると、患者は「本来とは逆向きに握り、吸入口が上になる」状態で使用していました。薬剤師が製薬企業に問い合 わせたところ「吸入口を上にして使用するとガスのみが噴射され、薬剤は噴霧されない」ことが分かりました。

本事例の背景には、▼薬剤師が「患者が指導箋の図の通りに使用するだろう」と思い込み、吸入剤の向きについて指導しなかった▼薬剤に同封されている指導箋には「吸入口を上にしての使用は不可である」旨の記載がなかった—ことがあります。

機構では、▼患者が吸入剤を正しく使用できるように「不適切な使用方法」も含めて説明し、患者の理解を深める▼吸入剤の指導箋が分かりやすく図解されたものであっても、「練習用の器具等を活用して実際に薬局で使用」してもらい、患者が吸入剤を問題なく使用できるかどうか確認する▼交付後に患者へ連絡して正しく使用できているかフォローアップを行う—ことなどをアドヴァイスしています。





薬局・薬剤師には「対物業務」から「対人業務」への移行が求められ、いわゆる「かかりつけ薬局・薬剤師」が▼服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導▼24時間対応・在宅対応▼かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化—の機能を持つべきことが重要です(関連記事はこちら)。

あわせて、今年(2022年)7月には「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」が、▼「対物業務のみ・対人業務に力を入れない」薬局経営が成り立たないような調剤報酬へ移管する必要がある▼「対物業務の効率化」のため、まず「一包化業務の他薬局」への外部委託認可を検討する▼「ICT化・DX対応」を進めるとともに、薬局薬剤師は「地域の多職種や、病院薬剤師と顔の見える関係」構築に努める必要がある—との考えをまとめています(関連記事はこちら)。

とりわけ高齢者においては多剤投与が健康被害を引き起こす可能性が高く(ポリファーマシー)、厚生労働省は「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」および「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))」を取りまとめ、注意を呼び掛けています。とくに外来医療等では、患者のそばに常に医療従事者がいるわけではないことから、保険薬局(調剤薬局)のかかりつけ機能が極めて重要となります(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。



こうした考え方を先取りし、2018年度の調剤報酬改定では、▼薬剤師から処方医に減薬を提案し、実際に減薬が行われた場合に算定できる【服用薬剤調整支援料】(125点)の新設▼【重複投薬・相互作用等防止加算】について、残薬調整以外の場合を40点に引き上げる(残薬調整は従前どおり30点)—など、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経済的にサポートする基盤が整備され、前回の2020年度改定での充実(例えば【服用薬剤調整支援料2】の新設など)、今回の2022年度改定での充実(例えば「調剤料の処方日数に応じた評価の見直し」や「調剤管理料の新設」など)も図られています。

「疑義照会=点数算定」という単純構造ではないものの(要件・基準をクリアする必要がある)、今回の事例のような薬剤師の素晴らしい取り組みが積み重ねられることで、「かかりつけ薬局・薬剤師」の評価(評判)が高まり、診療報酬での評価にも結び付くでしょう。

さらに、患者から「あの薬局、あの薬剤師さんは親身になってくれ、お医者さんに問合せまでしてくれる」との良い評判が立つことが、薬局経営の安定化に非常に効果的です。



なお、厚労省は昨年(2021年)3月31日に通知「『病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方』について」を示しており、病院はもちろん、地域のクリニックや薬局と連携して「ポリファーマシー対策」を進めることの重要性を指摘しています。医療安全確保のためにも「地域連携」が極めて重要です。



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