Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
新型コロナ対策 症例Scope

患者とのコミュニケーションや薬剤服用歴を通じて「骨粗鬆症治療薬」の適正使用(重複回避など)に努めよ―医療機能評価機構

2021.6.3.(木)

薬剤師が、骨粗鬆症治療薬の「テリボン皮下注28.2μgオートインジェクター」について、患者とのコミュニケーションや薬剤服用歴を確認し、医師に情報提供・疑義照会を行い、適正使用を推進する(重複投薬などを回避する)ことができた―。

日本医療機能評価機構が6月2日に公表した、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の「共有すべき事例」から、こういった重要事例が報告されていることが分かりました(機構のサイトはこちら)(テリボン皮下注の関連記事はこちらこちら)。

人口の高齢化に伴い「骨粗鬆症治療薬」を使用する患者が増え、また様々な薬剤が登場していることから「重複投与」のリスクが増加しています。本事例も参考に、自薬局にマッチした適正使用体制を構築する必要があります。

過去も含めて、患者が使用するすべての骨粗鬆症治療薬を把握せよ

日本医療機能評価機構は、保険薬局(調剤薬局)における医療安全の確保・向上を目指し、全国の薬局を対象に「患者の健康被害等につながる恐れのあったヒヤリ・ハット事例」(ヒヤリとした、ハッとした事例)を収集する「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」を展開しています。その一環として、事例の中から、医療安全確保のためにとりわけ有益な情報を、「共有すべき事例」として定期的に整理・公表しています(最近の事例に関する記事はこちらこちら)。5月6日には、新たに3つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。いずれも骨粗鬆症治療薬の「テリボン皮下注28.2μgオートインジェクター」に関連する事例です。

1つ目は、薬剤師が患者とコミュニケーションをとって「従前の薬剤」情報などを聞き出し、疑義照会の結果、誤った処方内容を修正できた好事例です。

久しぶりに来局した患者には、骨折の危険性の高い骨粗鬆症の治療薬である「テリボン皮下注28.2μgオートインジェクター」1本・1日1回・週1回が処方されていました。薬剤師が患者に確認したところ「今までは、同じく骨粗鬆症治療薬の『テリボン皮下注用56.5μg』が医療機関で週に1回投与されていた」ことが分かりました。テリボン皮下注28.2μgオートインジェクターは「週に2回、皮下注射する」薬剤であり、次回の医療機関受診は1週間後であったことから、薬剤師は疑問に思い、処方医に疑義照会。その結果、同剤が「2本」へ変更になりました。

「テリボン皮下注28.2μgオートインジェクター」は自己注射を前提としていることから、 安全性に配慮して「テリボン皮下注用56.5μg」の半量を1回量として「週に2回投与」することとなっています。処方医をこの点を失念し、数量を間違えたものと推測されます。

本事例では、薬剤師が患者とコミュニケーションをとると同時に、専門家として「上記の点」に気づき、疑義照会を行った好事例です。機構では「『テリボン皮下注用56.5μg』を自己注射用に処方してしまった」事例も報告されていることを紹介し、「処方監査の際には製剤の▼規格▼剤形▼用法-に注意する必要がある」とアドヴァイスしています。



2つ目は、薬剤師が専門知識を発揮して「薬剤の併用」に関する情報を処方医に提供し、適切な処方内容へ変更がなされた好事例です。

骨粗鬆症治療薬の「ベネット錠75mg」を継続服用している患者に、新たに、やはり骨粗鬆症治療薬の「テリボン皮下注28.2μgオートインジェクター」が処方されました。薬剤師が骨粗鬆症の治療ガイドライン(骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版)を確認したところ、「テリパラチド(テリボン皮下注)とビスホスホネート(ベネット錠)の併用効果はみられていない」との記載があるため、処方医に情報提供。その結果、「ベネット錠75mg」が削除されました。

機構では、骨粗鬆症の治療が内科や整形外科など「複数の診療科」で行われること、近年、作用機序や剤形の異なる様々な薬剤の投与が可能になったことを確認し、「成分や薬効が重複する薬剤が処方され疑義照会を行った事例が継続して報告されている」とし、注意を呼び掛けています。



3つ目は、薬剤師が過去の服用歴を確認し「重複投薬」を回避できた好事例です。

骨粗鬆症治療薬の「ボンビバ静注1mgシリンジ」が投与されている患者に、別の医療機関から、同じく骨粗鬆症治療薬の「テリボン皮下注28.2μgオートインジェクター」が処方されました。薬剤師は患者から「かなり前に骨粗鬆症治療のため注射薬が処方され、使用していた」旨を聴取した。薬局で管理している薬剤服用歴を確認したところ「8年前に別の医療機関から、骨粗鬆症治療薬の『フォルテオ皮下注キット600μg』が処方され、この患者が24か月間使用していた」ことが分かりました。薬剤師がこうした情報を処方医に情報提供した結果、「テリボン皮下注28.2μgオートインジェクター」が削除されました。

「テリボン皮下注28.2μgオートインジェクター」も「フォルテオ皮下注キット600μg」も、「テリパラチド製剤」であり、使用期間が設定されています(24か月まで、24か月の投与終了後、再度24か月の投与を繰り返さない旨が添付文書にも明示されている)。

本事例では、処方医は「患者が以前にテリパラチド製剤(フォルテオ皮下注)を使用していた」ことを把握しておらず、テリパラチド製剤(テリボン皮下注)を新たに処方してしまったものです。薬剤師は、こうした点を患者とのコミュニケーションおよび薬剤服用歴を通じて確認したうえで、安全性確保のために「処方内容の再考を促した」好事例です。

機構では、▼テリパラチド(遺伝子組換え)製剤やテリパラチド酢酸塩製剤は、使用期間が設定されており、使用期間中のみならず、使用終了後も『使用歴が把握できるようなシステム』作りが重要である▼骨粗鬆症の薬物療法は、内服薬だけではなく注射薬の投与も増加しており、重複処方回避のためには、保険薬局で調剤する薬剤だけでなく、医療機関で投与される注射薬なども含め、患者が服用・使用しているすべての薬剤の一元的・継続的な管理が重要である―とアドヴァイスしています。





2015年10月にまとめられた「患者のための薬局ビジョン」では、「かかりつけ薬局・薬剤師が▼服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導▼24時間対応・在宅対応▼かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化—の機能を持つべき」旨が強調されています。薬局・薬剤師のかかりつけ機能を強化し、「適正な薬学管理の実現」「重複投薬の是正」など医療の質を向上していくことが求められています(関連記事はこちら)。

高齢者においては多剤投与が健康被害を引き起こす可能性が高く(ポリファーマシー)、厚生労働省は「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」および「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))」を取りまとめ、注意を呼び掛けています。とくに外来医療等では、患者のそばに常に医療従事者がいるわけではないことから、保険薬局(調剤薬局)のかかりつけ機能が極めて重要となります(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。



こうした考え方を先取りし、2018年度の調剤報酬改定では、▼薬剤師から処方医に減薬を提案し、実際に減薬が行われた場合に算定できる【服用薬剤調整支援料】(125点)の新設▼【重複投薬・相互作用等防止加算】について、残薬調整以外の場合を40点に引き上げる(残薬調整は従前どおり30点)—など、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経済的にサポートする基盤が整備され、2020年度改定でその充実(例えば【服用薬剤調整支援料2】の新設など)が図られています。

「疑義照会=点数算定」という単純構造ではありません(要件・基準をクリアする必要がある)が、今回の3事例のような薬剤師の素晴らしい取り組みが積み重ねられることで、「かかりつけ薬局・薬剤師」の評価(評判)が高まり、診療報酬での評価にも結び付くでしょう。

さらに、患者から「あの薬局、あの薬剤師さんは親身になってくれ、お医者さんに問合せまでしてくれる」との良い評判が立つことが、経営の安定化に何よりの効果があると考えられます。

なお、厚労省は3月31日に通知「『病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方』について」を示しており、病院はもちろん、地域のクリニックや薬局と連携して「ポリファーマシー対策」を進めることの重要性を指摘しています。医療安全確保のためにも「地域連携」が極めて重要です。



ぽんすけ2020MW_GHC_logo

【関連記事】

骨粗鬆症治療剤テリボンの投与期間を2年に延長、ザーコリをROS1遺伝子陽性肺がんにも拡大―厚労省
エビリファイなど抗精神病薬「アリピプラゾール」に病的賭博などの副作用—厚労省

お薬手帳や患者とのコミュニケーション通じて「医薬品の併用禁忌」発見などに努めよ―医療機能評価機構
一般用医薬品販売においても、薬剤師は患者・主治医から情報収集し不適切な薬剤使用防止に努めよ―医療機能評価機構
薬剤師が、患者とのコミュニケーションで副作用発現を察知し、処方変更に結び付けた好事例―医療機能評価機構
薬剤師が、医師の誤処方(薬剤名誤入力、禁忌薬処方)に気づき、適正な処方に結び付けた好事例―医療機能評価機構
医師が気づかなかった「危険な処方変更」を、薬剤師が専門性を発揮して回避し、副作用発生を防止できた好事例―医療機能評価機構
薬剤師が「かかりつけ」機能発揮する好事例、専門知識に加え、患者の状態にも配慮―医療機能評価機構
薬剤師が添付文書を確認し「不適切な薬剤」「併用禁忌の薬剤」処方を阻止した好事例―医療機能評価機構
薬剤師は、患者の検査値など多角的な情報から「副作用の兆候」確認を―医療機能評価機構
お薬手帳は医療従事者が処方内容確認のために使うこともあり、「毎回記録」が重要―医療機能評価機構
メトトレキサート、「休薬期間」「患者の腎機能」などを確認し、適切量等の処方・調剤を―医療機能評価機構
患者からの収集情報に加え、「検査値」を積極的に入手し、それに基づく処方監査を―医療機能評価機構
定期処方薬剤についても患者とコミュニケーションとり、「副作用発現の有無」を確認せよ―医療機能評価機構
薬剤師は添付文書等から「正しい服用方法」など確認し、当該情報を処方医にも共有せよ―医療機能評価機構
薬剤師は診療ガイドライン等通じて「薬物療法の広い知識」身につけ、患者にも丁寧な情報提供を―医療機能評価機構
薬剤師は「薬剤添付文書の確認」「患者の服用歴確認」「医師への既往歴確認」などを―医療機能評価機構
骨粗鬆症治療、外来での注射薬情報なども「お薬手帳」への一元化・集約化を―医療機能評価機構
薬剤師が患者の服用状況、添付文書内容を把握し、医療事故を防止した好事例―医療機能評価機構
薬剤師が患者とコミュニケーションをとり、薬剤の専門的知識を発揮して医療事故を防止した好事例―医療機能評価機構
薬剤師が「患者の処方歴やアレルギー情報」を十分に把握し、医療事故を防止できた好事例―医療機能評価機構
薬剤師が「薬剤の用法用量や特性に関する知見」を活用し、医療事故を防止した好事例―医療機能評価機構
薬剤師が患者とコミュニケーションとり、既往歴や入院予定を把握して医療事故防止―医療機能評価機構
薬剤師が薬剤の添加物を把握し、患者とコミュニケーションをとってアレルギー発現を防止―医療機能評価機構
薬剤の専門家である薬剤師、患者の検査値・添付文書など踏まえ積極的な疑義照会を―医療機能評価機構
高齢患者がPTPシートのまま薬剤を服用した事例が発生、服用歴から「一包化」等の必要性確認を―医療機能評価機構
薬剤師の疑義照会により、薬剤の過量投与、類似薬の重複投与を回避できた好事例―医療機能評価機構
薬剤師が多職種と連携し、薬剤の過少・過量投与を回避できた好事例―医療機能評価機構
薬剤師が患者の訴え放置せず、メーカーや主治医に連絡し不整脈など発見できた好事例―医療機能評価機構
薬剤師が併用禁忌情報等に気づき、処方医に疑義照会した好事例―医療機能評価機構
薬剤師が患者の腎機能低下に気づき、処方医に薬剤の減量を提案した好事例―医療機能評価機構
薬剤師が「検査値から患者の状態を把握」し、重大な副作用発生を防止した好事例―医療機能評価機構
薬剤師も患者の状態を把握し、処方薬剤の妥当性などを判断せよ―医療機能評価機構
複数薬剤の処方日数を一括して変更する際には注意が必要―医療機能評価機構



どの医療機関を受診しても、かかりつけ薬局で調剤する体制を整備―厚労省「患者のための薬局ビジョン」



病院入院前の薬剤状況確認、入院中の処方変更、退院後のフォローなど各段階で「ポリファーマシー対策」を―厚労省
外来や在宅、慢性期性期入院医療など療養環境の特性踏まえ、高齢者への医薬品適正使用を―厚労省
外来・在宅、慢性期医療、介護保険施設の各特性に応じた「高齢者の医薬品適正性」確保を―高齢者医薬品適正使用検討会
医師と薬剤師が連携し、高齢者における薬剤の種類・量の適正化進めよ―高齢者医薬品適正使用検討会