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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

一般用医薬品販売においても、薬剤師は患者・主治医から情報収集し不適切な薬剤使用防止に努めよ―医療機能評価機構

2021.4.8.(木)

薬剤師が、一般用医薬品の販売においても患者とコミュニケーションをとり、さらに「主治医に確認」まで行った結果、「不適切な一般用医薬品の使用→副作用の発生」を防止できた―。

日本医療機能評価機構が4月5日に公表した、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の「共有すべき事例」から、こういった重要事例が報告されていることが分かりました(機構のサイトはこちら)。

患者の服用状況を確認・記録することも、処方内容の是正等につながる

日本医療機能評価機構は、保険薬局(調剤薬局)における医療安全の確保・向上を目指し、全国の薬局を対象に「患者の健康被害等につながる恐れのあったヒヤリ・ハット事例」(ヒヤリとした、ハッとした事例)を収集する「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」を展開しています。その一環として、事例の中から、医療安全確保のためにとりわけ有益な情報を「共有すべき事例」として整理・公表しています(最近の事例に関する記事はこちらこちら)。4月5日には、新たに3つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。

1つ目は、業務手順を遵守せず「薬剤の入っていないシートケース」を交付してしまった事例です。

ある患者に、月経困難症治療薬の「ルナベル配合錠ULD」が処方されました。薬剤師は、輪ゴムで束ねてあった同錠のシートケースを3つ交付しましたが、その後、患者から「3つのシートケースのうち2つに薬剤がセットされていない」との電話連絡がありました。同日、別の患者からも「薬剤が入っていないシートケースが1つある」との連絡がありました。

この薬局では、同剤について「シートケースに薬剤をセットし曜日シールとともに輪ゴムで束ねる」という運用をしていました(同剤は「21日間服用後7日間休薬する」薬剤であり、患者の飲み間違えがないように製品に服薬スケジュールを示したシートケースが用意されている)。このため薬剤師は、シートケースが輪ゴムで束ねられていたことから「薬剤がセットされている」と思い込み、業務手順の1つである「薬剤がシートケースに入っていることを確認する」旨を行わなかったものです。在庫はあっており、他薬との取り違えもないことから「箱を開封した際、シートケースと曜日シールのみを輪ゴムで束ね、薬剤をセットせずに廃棄してしまった」可能性があります。

機構では、▼「誰がどのタイミングで薬剤をシートケースにセットするのか」を業務手順書に定め、すべての職員に周知・徹底を図る●「薬剤を調剤する際は、処方内容と薬剤そのものを照合することが基本である」旨を再確認する―ことをアドヴァイスしています。

また製薬メーカーに対し、「あらかじめ薬剤をシートケースにセットするなど、薬剤の調製漏れを防ぐ工夫も望まれる」と提言しています。



2つ目は、患者の服薬状況を薬局で聴取・記録していたことから「残薬数の誤り」に気づけた好事例です。

ある患者は、胃がん・大腸がん・非小細胞肺がん・再発乳がんなどの化学療法に用いる「エヌケーエスワン配合OD錠T20」を、1クール「4週間服用後2週間休薬」として継続的に服用していました。入院中は服用が中止されており、退院後に初めて外来を受診した際、処方医から「本日より残薬を2週間服用し、その後2週間休薬する」よう指示を受けました。

薬局にFAXで送付された処方箋には当該薬剤は記載されておらず、患者家族から「同剤が1週間分しか残っていない」との電話連絡があったことから、薬剤師は▼薬剤服用歴▼患者の服薬状況—を照合し、「残薬数が7日分で間違いない」ことを確認。処方医へ疑義照会を行ったところ、「同剤を7日分が追加処方」され、「今後は2週間服用後2週間休薬する」スケジュールで継続していくことも確認されました。

事例の背景には、家族が処方医に「残薬が2週間分ある」と誤って伝えてしまったことがあります。薬局で「服用スケジュール」「服薬開始日」を聞き取り、記録していたため、「残薬数の誤り」に気づくことができました。

機構では、薬局・薬剤師に対して▼処方医から指示された服薬日、服薬期間、休薬期間を把握する●がん薬物療法では副作用発現により服薬が中断されることがあるため、実際に服用した期間、中断や飲み忘れによる残薬数も把握する●服薬状況や副作用発現状況等を記録するツールを活用し、患者と医療従事者で実際の服薬状況等を共有する―ことなどをアドヴァイスしています。



3つ目は、薬剤師が一般用医薬品の販売にあたり、患者の治療内容を医師に確認したうえで販売を中止できた好事例です。

薬局で、一般用医薬品である「イソジンうがい薬」の購入を検討していた来局者に、薬剤師が声をかけられました。来局者と話しをする中で「医療機関から処方された薬剤を服用しているが、疾患名や薬剤名を覚えていない」ことが判明。本人の了承を得て薬剤師が医療機関に問い合わせたところ、「甲状腺機能亢進症の治療を行っており、ポビドンヨードを含むうがい薬の使用は控える」旨が処方医から指示されました。これを踏まえ販売を中止しています。

「イソジンうがい薬」は「甲状腺機能障害」の診断を受けた患者等では、使用前に医師・薬剤師等に相談することが求められています。しかし、患者サイドがこうした点を十分に理解していないケースもあります。機構では「一般用医薬品等を販売する際は、規制区分により定められた情報の確認・提供方法にとらわれず、確認が必要な事項は使用者に確認するなどの適切な対応が必要である」旨をアドヴァイスしています。本事例では、来局者への確認にとどまらず、薬剤師が「主治医への確認」を行うことで、「不適切な一般用医薬品の使用→副作用の発生」を防止できた、きわめて重要な事例と評価することができます。





2015年10月にまとめられた「患者のための薬局ビジョン」では、「かかりつけ薬局・薬剤師が▼服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導▼24時間対応・在宅対応▼かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化—の機能を持つべき」旨が強調されています。薬局・薬剤師のかかりつけ機能を強化し、「適正な薬学管理の実現」「重複投薬の是正」など医療の質を向上していくことが求められています(関連記事はこちら)。

とりわけ高齢者においては多剤投与が健康被害を引き起こす可能性が高く、厚生労働省は「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」および「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))」を取りまとめ、注意を呼び掛けています。とくに外来医療等では、患者のそばに常に医療従事者がいるわけではないことから、保険薬局(調剤薬局)のかかりつけ機能が極めて重要となります(関連記事はこちらこちらこちら)。



こうした考え方を先取りし、2018年度の調剤報酬改定では、▼薬剤師から処方医に減薬を提案し、実際に減薬が行われた場合に算定できる【服用薬剤調整支援料】(125点)の新設▼【重複投薬・相互作用等防止加算】について、残薬調整以外の場合を40点に引き上げる(残薬調整は従前どおり30点)—など、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経済的にサポートする基盤が整備され、2020年度改定でその充実(例えば【服用薬剤調整支援料2】の新設など)が図られています。

「疑義照会=点数算定」という単純構造ではありません(要件・基準をクリアする必要がある)が、今回の3事例のような薬剤師の素晴らしい取り組みが積み重ねられることで、「かかりつけ薬局・薬剤師」の評価(評判)が高まり、診療報酬での評価にも結び付くでしょう。

さらに、患者から「あの薬局、あの薬剤師さんは親身になってくれ、お医者さんに問合せまでしてくれる」との良い評判が立つことが、経営の安定化に何よりの効果があると考えられます。

なお、厚労省は3月31日に通知「『病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方』について」を示しており、病院はもちろん、地域のクリニックや薬局と連携して「ポリファーマシー対策」を進めることの重要性を指摘しています。医療安全確保のためにも「地域連携」が極めて重要です。



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