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薬局薬剤師が患者・付き添い人とコミュニケーションとり、専門知識を発揮し「併用禁忌」など回避—医療機能評価機構

2022.4.8.(金)

薬局薬剤師が、患者とコミュニケーションをとって「疾患」を的確に把握したうえで「処方内容の問題点」を見つけ出し、適切な処方内容への変更を実現できた―。

また、薬局薬剤師が専門知識を活かすと同時に、積極的な情報収集を行い、それを処方医に伝達して適切な処方内容への変更を実現できた―。

日本医療機能評価機構が4月6日に公表した、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の「共有すべき事例」から、こういった重要事例が報告されていることが分かりました(機構のサイトはこちら)。

同姓の患者の取り違えも発生、プライバシーに配慮したうえでの「患者確認」が重要

日本医療機能評価機構は、保険薬局(調剤薬局)における医療安全の確保・向上も重要事業の1つに据え、全国の保険薬局を対象に「患者の健康被害等につながる恐れのあったヒヤリ・ハット事例」(ヒヤリとした、ハッとした事例)を収集する「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」も展開しています。

その一環として、ヒヤリ・ハット事例の中から、医療安全確保のためにとりわけ有益な情報を「共有すべき事例」として定期的にピックアップ・公表しています(最近の事例に関する記事はこちらこちら)。今般、新たに3つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。

1つ目は、同姓の患者を取り違えてしまった事例です。

ある薬局の待合室に、同じ名字の患者が2人いました(患者A・患者B)。薬剤師は患者Aの「フルネーム」を呼び、カウンターに来た患者(実は患者B)にフルネームで再度呼びかけましたが、患者の反応はありませんでした。薬剤師は患者B(薬剤師は患者Aと勘違い)に排尿困難の改善等に用いる「ウブレチド錠5mg」と高コレステロール血症治療に用いる「リピトール錠5mg」を見せながら説明を行い、「患者Aのお薬手帳」と一緒に薬剤を交付しました。その後、本当の患者Aから「待ち時間が長い」との訴えがあり、確認したところ「患者Bに患者Aの薬剤を交付していた」ことが判明しました。患者Bに電話をしたがつながらなかったため、薬剤師が患者B宅を訪問して事情を説明し、患者Aの薬剤を回収して患者Bの薬剤を渡しました。患者Bは「薬局で受け取った薬剤が自分のものではない」ことに気付いていませんでした。

こうした「患者誤りに起因する事故」は様々な場面で生じえます(関連記事はこちら)。機構では、事故防止(患者誤り防止)のために▼。受付番号や引換券などを活用する▼カウンターに来た患者自身に名乗ってもらい処方箋の氏名と照合する▼薬袋やお薬手帳に記載された氏名を指して患者に確認してもらう▼氏名の他に生年月日を言ってもらい、2つの情報で照合する―などの具体例を示しています。各薬局で「プライバシーにも配慮した」防止方法を検討する必要があります。



2つ目は、薬剤師が患者(付き添い者を含む)とコミュニケーションをとり、また専門性を発揮して「適切な処方内容への変更」を実現できた好事例です。

患者に糖尿病や慢性心不全、慢性腎臓病の治療に用いる「フォシーガ錠5mg」1回1錠・1日1回が処方されました。薬剤師は投与量から「糖尿病の治療目的」と推測しましたが、患者に糖尿病治療薬が処方されたのは初めてのことでした。そこで、付き添いの高齢者施設看護師に確認したところ「心不全の治療薬として追加」されたことが分かりました。慢性心不全の治療目的でフォシーガ錠を使用する場合は「10mgを1日1回投与」するため、処方医 に問い合わせた結果、「フォシーガ錠10mg」1回1錠・1日1回に変更となりました。

薬剤の効能・効果追加により「用法・用量や注意事項」などが変更になることは少なくありません(フォシーガ錠も効能・効果が順次追加され、それぞれに用法用量が設定されてきている)。機構では、効能・効果追加などの都度に「添付文書やインタビューフォーム、医薬品リスク管理計画(RMP)に基づく資材である医療従事者向けガイドなどの最新情報の収集に努める必要がある」「効能・効果追加などで添付文書に重要な変更があった際や、新薬が販売開始された際は、薬局で薬剤に関する研修会を開催したり、メーカーの製品説明会に参加する」などのアドヴァイスを行っています。

なお、本事例では、薬剤師が「患者・付き添い人に確認を行った」点も注目できます。専門性を発揮することと同時に、患者等とのコミュニケーションが非常に重要である点を確認できます。



3つ目は、薬剤師が専門性知識を活かし、またメーカーへの確認などを積極的に行い「適正な処方内容への変更」を実現できた好事例です。

関節リウマチ治療のために「プログラフカプセル」「プレドニン錠」「メトトレキサート」が処方されている患者に、新たに「リンヴォック錠7.5mg」1回1錠・1日1回が初めて処方されました。電子薬歴システム入力時に「併用禁忌」のアラートが出たため、リンヴォック錠の添付文書を確認すると「タクロリムス(プログラフ)との併用はしないこと」と記載されていました。薬剤師が、さらに詳しい情報を入手するためメーカーに問い合わせたところ、リンヴォック錠について▼プレドニン錠やメトトレキサートとの併用の実績はある▼プログラフカプセルとの併用の実績はない―ことが分かりました。薬剤師がこれらの情報を処方医へ伝えたところ「プログラフカプセルが削除」となりました。

本事例では、▼併用に関するアラートが電子薬歴システムで出された▼薬剤師が添付文書を確認した▼メーカーへの問い合わせを行った▼処方医へ疑義照会を行った―という積極的な姿勢に注目できます。

機構では、▼電子薬歴システムのアラートを見落とさない対応、アラートが出た場合の具体的な対応方法の確認と周知▼添付文書の「全文を確認」することの重要性▼併用注意・禁忌において該当する薬剤のリスト化—などの取り組みも重要であるとアドヴァイスしています。



薬局・薬剤師には「対物業務」から「対人業務」への移行が求められ、いわゆる「かかりつけ薬局・薬剤師」が▼服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導▼24時間対応・在宅対応▼かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化—の機能を持つべきことが重要です(関連記事はこちら)。

とりわけ高齢者においては多剤投与が健康被害を引き起こす可能性が高く(ポリファーマシー)、厚生労働省は「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」および「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))」を取りまとめ、注意を呼び掛けています。とくに外来医療等では、患者のそばに常に医療従事者がいるわけではないことから、保険薬局(調剤薬局)のかかりつけ機能が極めて重要となります(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。



こうした考え方を先取りし、2018年度の調剤報酬改定では、▼薬剤師から処方医に減薬を提案し、実際に減薬が行われた場合に算定できる【服用薬剤調整支援料】(125点)の新設▼【重複投薬・相互作用等防止加算】について、残薬調整以外の場合を40点に引き上げる(残薬調整は従前どおり30点)—など、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経済的にサポートする基盤が整備され、前回の2020年度改定での充実(例えば【服用薬剤調整支援料2】の新設など)、今回の2022年度改定での充実(例えば「調剤料の処方日数に応じた評価の見直し」や「調剤管理料の新設」など)も図られています。

「疑義照会=点数算定」という単純構造ではないものの(要件・基準をクリアする必要がある)、今回の事例のような薬剤師の素晴らしい取り組みが積み重ねられることで、「かかりつけ薬局・薬剤師」の評価(評判)が高まり、診療報酬での評価にも結び付くでしょう。

さらに、患者から「あの薬局、あの薬剤師さんは親身になってくれ、お医者さんに問合せまでしてくれる」との良い評判が立つことが、薬局経営の安定化に非常に効果的です。



なお、厚労省は昨年(2021年)3月31日に通知「『病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方』について」を示しており、病院はもちろん、地域のクリニックや薬局と連携して「ポリファーマシー対策」を進めることの重要性を指摘しています。医療安全確保のためにも「地域連携」が極めて重要です。



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