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「名称類似するが異なる薬剤」の処方を患者とのコミュニケーションで把握し、処方変更できた好事例—医療機能評価機構

2021.9.7.(火)

薬剤師が患者とのコミュニケーションを通じて「医師の処方内容が不適切である」(名称の類似した全く異なる医薬品が処方されている)ことを察知し是正できた―。

また薬局間の情報連携によって、医師が把握できていなかった「患者が一般用医薬品を継続服用している」状況をつかみ、処方内容の適正化を実現できた―。

日本医療機能評価機構が9月1日に公表した、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の「共有すべき事例」から、こういった重要事例が報告されていることが分かりました(機構のサイトはこちら)。

薬剤師が患者から情報収集し、専門知識を活かすことで、処方内容の適正性を確保できた好事例

日本医療機能評価機構は、保険薬局(調剤薬局)における医療安全の確保・向上も重要テーマと考え、全国の薬局を対象に「患者の健康被害等につながる恐れのあったヒヤリ・ハット事例」(ヒヤリとした、ハッとした事例)を収集する「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」も展開しています。

その一環として、ヒヤリ・ハット事例の中から、医療安全確保のためにとりわけ有益な情報を「共有すべき事例」として定期的にピックアップ・公表しています(最近の事例に関する記事はこちらこちら)。9月1日には、新たに3つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。

1つ目は、患者からのヒアリングで「処方内容に誤りがある」可能性を疑い、疑義照会の結果、正しい処方内容へと変更できた好事例です。

60歳代の糖尿病患者に、定期処方の糖尿病治療薬とともに、2型糖尿病治療薬の「テネリア錠20mg」1回1錠・1日3回が処方されました。同錠の用法・用量は「1回20mg・1日1回」であることから、医療機関の薬剤部を通して疑義照会を行ったところ、「テネリア錠20mgを1錠1日1回、朝食後」へ処方内容を変更するとの回答がありました。薬剤を交付する際、患者から「肩こりがあるため薬剤の処方を希望していた」ことを危機、薬剤師は「処方薬は糖尿病治療薬の『テネリア錠』ではなく、筋緊張状態改善等に用いる『テルネリン錠』ではないか?」と考え、再度、疑義照会。結果、「テルネリン錠1mgを1回1錠・1日3回」へと処方変更になりました。

医師が処方する際に、名称を間違えてオーダーしたものと推測されます。

名称が類似した医薬品の取り違えは従来より少なくなく、機構では「処方された薬剤の用法・用量の確認だけではなく、患者の薬剤服用歴や現病歴・既往歴、その他必要に応じて聴取した情報等をもとに『処方の妥当性を検討する』ことが重要である」とアドヴァイスしています。



2つ目は、規格により添付文書の記載事項が異なる薬剤について十分な確認をしなかった事例です。

喘息等治療薬である「レルベア200エリプタ30吸入用」を使用中の70歳代女性患者に夜間頻尿治療薬「ミニリンメルトOD錠25μg」gが処方され、薬剤を交付しました。しかし、交付後に薬剤師がニリンメルトの添付文書を見ると、「男性における夜間多尿による夜間頻尿」が効能・効果であり、しかも「レルベアを含む副腎皮質ホルモン剤との併用が【禁忌】である」ことに気づきました。

ミニリンメルトOD錠には、規格がいくつかあり、それぞれで【効能・効果】【併用禁忌】が異なるという特徴があります。事例は、こうした点の確認が十分になされなかったために生じました。

ミニリンメルトOD錠は、規格により効能効果、併用禁忌などが異なるという特殊性を持つ薬剤である



機構では「規格により添付文書の記載事項が異なる薬剤を採用する際は、薬剤に関する情報を薬局内で周知し、薬剤の一覧表の作成や薬品棚に相違点などを表示して注意喚起するなどの工夫が必要」とアドヴァイスしています。なお、「処方誤りに気づいた後の対応」について報告がなく、機構では「後の対応についても報告してほしい」と要望しています。



3つ目は、薬局間の情報連携により「患者が一般用医薬品も継続服用している」ことが分かり、処方内容を適正化できた好事例です。

60歳代の患者に、継続して鎮痛・抗炎症・解熱剤である「ロキソプロフェン錠60mg」1回1錠・1日2回が処方され、 調剤・交付していました(X薬局とする)。一方、患者は、自宅近くの別のA薬局で一般用医薬品の「ロキソニンS」を頻繁に購入していた。A薬局では、購入頻度が高いことから患者にお薬手帳の提示を求めたところ、医療用医薬品のロキソプロフェン錠を服用していることを把握したため、患者の承諾を得て調剤・交付したX薬局に情報提供を行いました。その後、X薬局から処方医に情報提供が行われ、「ロキソプロフェン錠60mg」が1回1錠・1日3回へ増量になりました。患者へは「投与量の変更を説明し、同成分である一般用医薬品のロキソニンSは服用しない」よう伝え、A薬局へ投与量が変更になったことが報告されています。

本事例では、患者が主治医に「A医薬品で別にロキソニンSを購入し、服用している」ことを伝えなかったものと思われます。患者には、どうしても「医師には、なんとなく伝えにくい(「別の薬を飲んでいると言ったら、叱られるのではないか」などの思い)、敷居が高い」という心理的要素があります。

本事例は、薬局同士の情報連携で「医師に伝えていない事実」が明らかとなったものです。

機構では、▼患者から、使用している一般用医薬品や摂取している健康食品・サプリメントなどの情報も定期的に収集する必要がある▼患者は複数の薬局を利用することがあるため、お薬手帳の活用は薬剤の重複や相互作用を防ぐために有用であり、調剤時だけではなく一般用医薬品などの販売時にも活用することが重要である▼患者に対しては、「医療機関での治療中に一般用医薬品等を使用する際は薬剤の重複や相互作用などに注意する必要があることから、一般用医薬品や健康食品・サプリメントの使用の可否について主治医や薬剤師に相談する」よう説明しておく―などをアドヴァイスしています。





2015年10月にまとめられた「患者のための薬局ビジョン」では、「かかりつけ薬局・薬剤師が▼服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導▼24時間対応・在宅対応▼かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化—の機能を持つべき」旨が強調されています。薬局・薬剤師のかかりつけ機能を強化し、「適正な薬学管理の実現」「重複投薬の是正」など医療の質を向上していくことが求められています(関連記事はこちら)。

高齢者においては多剤投与が健康被害を引き起こす可能性が高く(ポリファーマシー)、厚生労働省は「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」および「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))」を取りまとめ、注意を呼び掛けています。とくに外来医療等では、患者のそばに常に医療従事者がいるわけではないことから、保険薬局(調剤薬局)のかかりつけ機能が極めて重要となります(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。



こうした考え方を先取りし、2018年度の調剤報酬改定では、▼薬剤師から処方医に減薬を提案し、実際に減薬が行われた場合に算定できる【服用薬剤調整支援料】(125点)の新設▼【重複投薬・相互作用等防止加算】について、残薬調整以外の場合を40点に引き上げる(残薬調整は従前どおり30点)—など、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経済的にサポートする基盤が整備され、2020年度改定でその充実(例えば【服用薬剤調整支援料2】の新設など)が図られています。

「疑義照会=点数算定」という単純構造ではありません(要件・基準をクリアする必要がある)が、今回の3事例のような薬剤師の素晴らしい取り組みが積み重ねられることで、「かかりつけ薬局・薬剤師」の評価(評判)が高まり、診療報酬での評価にも結び付くでしょう。

さらに、患者から「あの薬局、あの薬剤師さんは親身になってくれ、お医者さんに問合せまでしてくれる」との良い評判が立つことが、薬局経営の安定化に非常に効果的です。



なお、厚労省は3月31日に通知「『病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方』について」を示しており、病院はもちろん、地域のクリニックや薬局と連携して「ポリファーマシー対策」を進めることの重要性を指摘しています。医療安全確保のためにも「地域連携」が極めて重要です。



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