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新型コロナ対策 症例Scope

「徐放性製剤の粉砕投与」リスクなどを薬剤師が主治医に説き、適切な処方内容への変更を実現―医療機能評価機構

2021.7.8.(木)

薬剤師が専門性を発揮して、適切な処方内容への変更を実現することができた。例えば、胃瘻造設患者に対し、医師から「徐放性製剤を粉砕して投与」との処方指示があったところ、「粉砕投与のリスク」を薬剤師が説き、別の簡易懸濁法が可能な薬剤への変更を提案し、実現することができた―。

日本医療機能評価機構が7月1日に公表した、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の「共有すべき事例」から、こういった重要事例が報告されていることが分かりました(機構のサイトはこちら)。

名称や形状などが類似した医薬品の「取り違え」防止策を各薬局で実施せよ

日本医療機能評価機構では、保険薬局(調剤薬局)における医療安全の確保・向上を目指し、全国の薬局を対象に「患者の健康被害等につながる恐れのあったヒヤリ・ハット事例」(ヒヤリとした、ハッとした事例)を収集する「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」も展開しています。

その一環として、ヒヤリ・ハット事例の中から、医療安全確保のためにとりわけ有益な情報を「共有すべき事例」として定期的にピックアップ・公表しています(最近の事例に関する記事はこちらこちら)。7月1日には、新たに3つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。

1つ目は、名称や形状、効能・効果が類似した薬剤を誤って交付し、患者が投与前に「名称が違う」ことに気づいた事例です。

患者に、▼緑内障▼高眼圧症―治療薬の「アイラミド配合懸濁性点眼液」が処方されました。しかし調製者は誤って、▼緑内障▼高眼圧症―治療薬の「アイファガン点眼液0.1%」をピッキング。交付者も間違いに気付かず薬剤を交付してしまいました。点眼の際に患者が「薬剤名が違う」ことに気付き、薬局に連絡。薬剤師がすぐに患者宅に出向き、薬剤を交換しました。

事例の背景には、▼この患者には以前から「アイファガン」が処方されていましたが、前回から「アイラミド」に変更になった▼両剤は名称が似ており、容器の形状・ラベルの文字の色や配列も同じであり、調剤者等に思い込みが生じた―ことがあると思われます。

機構では、▼配置場所の工夫▼有効成分の表示、識別を促す目印・ラベル等の活用―を提案。さらに誤った薬剤の交付を防ぐために、「患者に薬剤を交付する際、患者と共に薬剤の名称、規格・剤形、 数量などを確認する」「薬剤情報提供書・薬袋に記載された画像と照合する」ことが有用とアドヴァイスしています。



2つ目は、薬剤師が専門知識を発揮して薬剤情報を処方医に提供し、適切な処方内容へ変更がなされた好事例です。

70歳代の高齢患者に、2型糖尿病治療薬の「リベルサス錠7mg」1日1回1錠朝食後が処方されました。リベルサス錠は「1日1回3mgから開始する」薬剤であるため、薬剤師が服用歴を確認したところ、「自薬局の薬剤服用歴」と「患者のお薬手帳」にはリベルサス錠の記載がありませんでした。そこで薬剤師が処方医に連絡し、同錠は「1日1回3mgから開始し、4週間以上投与した後に7mgに増量する」薬剤であることを伝えました。結果、同錠の処方は初めて(従前から使用していた「ジャヌビア錠」からの変更)であることが分かり、「リベルサス錠3mg」1日1回1錠へ変更になりました。あわせて「リベルサス錠は1日の最初の食事・飲水の前に、空腹の状態で服用する」薬剤であるため、「朝食前30分の服用」へと変更になっています。

「処方医の薬剤に関する知識不足」について、薬剤の専門家である薬剤師が補完することも重要です。機構では、▼新薬が処方された際は、添付文書やインタビューフォーム、製薬企業からの情報などを収集し、薬剤の特徴や使用上の注意を把握したうえで調剤する▼「服薬するタイミングに注意が必要な薬剤」を交付する際は、患者に丁寧な説明を行う必要があり、 製薬企業が提供している患者向け指導箋などを活用する▼薬剤交付後、患者の服薬状況を確認し、指示された方法で服薬することが難しい場合は「患者に合わせた飲み方を指導する」などのフォローを行う(改善が見られない場合は、処方医へ用法変更や薬剤変更の提案を行う)—ことなどをアドヴァイスしています。



3つ目も、薬剤師が専門性を発揮して「適切な処方内容」への変更が実現できた好事例です。

70歳代の高齢患者に、▼疼痛を伴う各種がん▼慢性疼痛—の鎮痛薬「ワントラム錠100mg」が処方されました。患者は嚥下機能が低下し、胃瘻が造設されていたため「薬剤を粉砕する」よう指示がありました。しかし同剤は▼即放性を持つ周辺部分▼徐放性を持つ中心部分—の二重構造による「徐放性製剤」であるため、添付文書には「割ったり、砕いたりまたはかみ砕いたりしない」ように記載されています。薬剤師は処方医に電話し、「簡易懸濁法」によって投与が可能な▼疼痛を伴う各種がん▼慢性疼痛—の鎮痛薬「トラマールOD錠50mg」への変更を提案し、処方変更となりました。

徐放性製剤は、「粉砕して投与すると急激な血中濃度の上昇により重篤な副作用が発現する」可能性があります。医師が、個々の薬剤について詳細な知識を有しているわけではないことから、薬剤師は▼指示された投与方法▼患者の身体状況・服薬状況—を把握し、必要に応じて代替薬を提案する必要があります。「薬剤の専門家」である薬剤師の重要性を再確認できる事例です。





2015年10月にまとめられた「患者のための薬局ビジョン」では、「かかりつけ薬局・薬剤師が▼服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導▼24時間対応・在宅対応▼かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化—の機能を持つべき」旨が強調されています。薬局・薬剤師のかかりつけ機能を強化し、「適正な薬学管理の実現」「重複投薬の是正」など医療の質を向上していくことが求められています(関連記事はこちら)。

高齢者においては多剤投与が健康被害を引き起こす可能性が高く(ポリファーマシー)、厚生労働省は「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」および「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))」を取りまとめ、注意を呼び掛けています。とくに外来医療等では、患者のそばに常に医療従事者がいるわけではないことから、保険薬局(調剤薬局)のかかりつけ機能が極めて重要となります(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。



こうした考え方を先取りし、2018年度の調剤報酬改定では、▼薬剤師から処方医に減薬を提案し、実際に減薬が行われた場合に算定できる【服用薬剤調整支援料】(125点)の新設▼【重複投薬・相互作用等防止加算】について、残薬調整以外の場合を40点に引き上げる(残薬調整は従前どおり30点)—など、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経済的にサポートする基盤が整備され、2020年度改定でその充実(例えば【服用薬剤調整支援料2】の新設など)が図られています。

「疑義照会=点数算定」という単純構造ではありません(要件・基準をクリアする必要がある)が、今回の3事例のような薬剤師の素晴らしい取り組みが積み重ねられることで、「かかりつけ薬局・薬剤師」の評価(評判)が高まり、診療報酬での評価にも結び付くでしょう。

さらに、患者から「あの薬局、あの薬剤師さんは親身になってくれ、お医者さんに問合せまでしてくれる」との良い評判が立つことが、薬局経営の安定化に非常に効果的です。



なお、厚労省は3月31日に通知「『病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方』について」を示しており、病院はもちろん、地域のクリニックや薬局と連携して「ポリファーマシー対策」を進めることの重要性を指摘しています。医療安全確保のためにも「地域連携」が極めて重要です。



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