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薬剤師が患者の訴えから「抗がん剤の副作用」を疑い、医療機関の受診を勧奨した好事例—医療機能評価機構

2023.1.4.(水)

薬剤師が患者の訴えに十分に耳を傾けて「抗がん剤の副作用」を疑い、医療機関の受診を勧奨した—。

日本医療機能評価機構が12月28日に公表した、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の「共有すべき事例」から、こういった重要知見が明らかになっています(機構のサイトはこちら)。

お薬手帳へのシール貼り間違え、不適切な処方変更に留意を

日本医療機能評価機構は、保険薬局(調剤薬局)における医療安全の確保・向上を目指した「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」も展開しています。全国の保険薬局を対象に「患者の健康被害等につながる恐れのあったヒヤリ・ハット事例」(ヒヤリとした、ハッとした事例)の報告を求め、事例の集積・解析により「再発防止策」の策定を目指すものです。

その一環として、ヒヤリ・ハット事例の中から、医療安全確保のために有益な情報を「共有すべき事例」として定期的にピックアップ・公表しています(最近の事例に関する記事はこちらこちら)。今般、新たに3つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。

1つ目は、医薬品の供給不安が続く中、処方医に疑義照会せずに「徐放OD錠から普通錠に変更」してしまった事例です。

ある患者に、気管支炎や気管支喘息などの治療に用いる「アンブロキソール塩酸塩徐放口腔内崩壊錠45mg」1回1錠・1日1回・14日分が処方(一般名処方)されましたが、薬局には「アンブロキソール塩酸塩徐放OD錠45mg『ZE』」の在庫が7錠しかなかったため、7日分を先に渡し、残り7日分は薬剤を取り寄せて渡すことにしました。しかし、卸業者に薬剤を発注した際に「製薬企業による出荷調整等により、先発医薬品・後発医薬品いずれも入荷困難で納入できない」との答えが返ってきました。薬剤師Aは、不足分は在庫がある「アンブロキソール塩酸塩錠15mg『タイヨー』」に変更しようと考え直し、処方医に連絡せず、患者に▼初めの7日間は「アンブロキソール塩酸塩徐放OD錠45mg『ZE』」を服用▼その後の7日間は「アンブロキソール塩酸塩錠15mg『タイヨー』」を服用—するよう説明し、薬剤を交付しました。その後、薬剤師Aは、今回の対応について、在宅訪問から戻ってきた薬剤師Bに報告。対応の間違いに気付いた薬剤師Bが医師に連絡したところ、▼「アンブロキソール塩酸塩徐放OD錠45mg『ZE』」を1回1錠・1日1回で7日間服用▼その後「アンブロキソール塩酸塩錠15mg『タイヨー』」を1回1錠・1日3回で7日間服用—するよう処方変更になりました。

薬剤師Aは、徐放OD錠と普通錠の違いは知っていたものの、「必要な薬剤が納入されない」と聞いて焦りが生じ、対応を誤ってしまったということです。

機構では、再発防止に向けて▼塩徐放OD錠と普通錠とは製剤特性が異なり、疑義照会を行わずに薬剤師の判断のみで変更して調剤してはいけない▼現在、一部の医療用医薬品について供給不足が相次いでおり、当該薬剤に限らず、 同様の事例が発生する可能性がある。医薬品が入手できない場合、他剤への変更を検討する必要がある▼そうした状況でも焦らず切に調剤できるように、業務手順書を作成し全体の流れを把握しておくほか、具体的な対応手順について薬局内で研修を行うことが有用である—などのアドヴァイスを行っています。



2つ目は、薬剤師の確認不足により、お薬手帳へのシール貼り間違いが生じてしまった事例です。

ある薬局で、薬剤師が患者Xにお薬手帳を渡そうとしたところ「手帳は持ってきていない」と言われました。お薬手帳を確認すると、別の患者Yのもので、それに患者Xのシールが貼られていました。すでに薬剤交付済みであった患者Yに電話確認すると、「薬局はシールのみ渡していた」ことがわかりました。薬局は患者Yに謝罪し、お薬手帳にシールを貼り直して返却しました。

本事例の背景には、▼疑義照会により患者の順番がずれた▼薬局内で「処方箋とお薬手帳は一緒に管理する」とのルールがあったが、慣れによる手順の不遵守があった▼お薬手帳を持ってきていない患者の処方箋には「手帳なし」の札を添付していたが、シールの氏名の照合や記載内容の確認をしなかった—ことがあるようです。

お薬手帳へのシール貼り間違いは、その情報を基に「誤った治療」につながってしまう恐れがあります。機構では、▼薬局内の各業務工程において、お薬手帳とシールの氏名を処方箋と照合する▼各薬局において、お薬手帳の取り扱いや処方箋・薬剤服用歴との照合などについて具体的な手順を定め、遵守する▼本人以外に間違って渡した場合、お薬手帳およびそのシールは個人情報の漏えいに該当するため、薬局内で「お薬手帳とシールを取り扱う際の業務工程のどこにリスクがあるか」を洗い出し、スタッフ全員がルールの遵守を徹底する意識を持つ—必要があるとアドヴァイスしています。



3つ目は、患者の訴えを踏まえて「医療機関の受診」を勧奨した好事例です。

胃がんや大腸がんなどの治療に用いる「テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合口腔内崩壊錠」を服用中の70歳代患者の家族から「患者本人が『涙がたくさん出て見えづらい』と訴えるので市販の点眼薬を購入したい」と相談を受けました。聴取した患者の状況から「抗がん剤による流涙」の可能性が考えられたため、薬剤師が「防腐剤無添加の人工涙液を販売し経過観察するという選択肢もあるが、総合的に判断して速やかに医療機関を受診するべき」と勧めました。

同剤に関しては、▼流涙の副作用がある▼涙道閉塞により外科的処置に至った例も報告されていることから、流涙等の症状があらわれた場合には、眼科的検査を実施するなど適切な処置を行う—ことが示されています。本事例は、この副作用に関する知識を薬剤師が把握しており、医療機関の受診を勧奨した好事例と言えます。

機構では、▼一般用医薬品の販売は、使用者の症状や病歴、薬剤服用歴などを把握したうえで、適切に対応することが重要である▼近年、通院でがん化学療法を受ける患者が増えており、薬局薬剤師にはプロトコールに基づく薬物療法の管理が求められている。日頃から知識を深め、一般用医薬品の販売時にもその知識を活用することが重要である—とアドヴァイスしています。





薬局・薬剤師には「対物業務」から「対人業務」への移行が求められ、いわゆる「かかりつけ薬局・薬剤師」が▼服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導▼24時間対応・在宅対応▼かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化—の機能を持つべきことが重要です(関連記事はこちら)。

あわせて、今年(2022年)7月には「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」が、▼「対物業務のみ・対人業務に力を入れない」薬局経営が成り立たないような調剤報酬へ移管する必要がある▼「対物業務の効率化」のため、まず「一包化業務の他薬局」への外部委託認可を検討する▼「ICT化・DX対応」を進めるとともに、薬局薬剤師は「地域の多職種や、病院薬剤師と顔の見える関係」構築に努める必要がある—との考えをまとめています(関連記事はこちら)。

とりわけ高齢者においては多剤投与が健康被害を引き起こす可能性が高く(ポリファーマシー)、厚生労働省は「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」および「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))」を取りまとめ、注意を呼び掛けています。とくに外来医療等では、患者のそばに常に医療従事者がいるわけではないことから、保険薬局(調剤薬局)のかかりつけ機能が極めて重要となります(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。



こうした考え方を先取りし、2018年度の調剤報酬改定では、▼薬剤師から処方医に減薬を提案し、実際に減薬が行われた場合に算定できる【服用薬剤調整支援料】(125点)の新設▼【重複投薬・相互作用等防止加算】について、残薬調整以外の場合を40点に引き上げる(残薬調整は従前どおり30点)—など、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経済的にサポートする基盤が整備され、前回の2020年度改定での充実(例えば【服用薬剤調整支援料2】の新設など)、今回の2022年度改定での充実(例えば「調剤料の処方日数に応じた評価の見直し」や「調剤管理料の新設」など)も図られています。

「疑義照会=点数算定」という単純構造ではないものの(要件・基準をクリアする必要がある)、今回の事例のような薬剤師の素晴らしい取り組みが積み重ねられることで、「かかりつけ薬局・薬剤師」の評価(評判)が高まり、診療報酬での評価にも結び付くでしょう。

さらに、患者から「あの薬局、あの薬剤師さんは親身になってくれ、お医者さんに問合せまでしてくれる」との良い評判が立つことが、薬局経営の安定化に非常に効果的です。



なお、厚労省は昨年(2021年)3月31日に通知「『病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方』について」を示しており、病院はもちろん、地域のクリニックや薬局と連携して「ポリファーマシー対策」を進めることの重要性を指摘しています。医療安全確保のためにも「地域連携」が極めて重要です。



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