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薬剤師が「紹介先医療機関」だけでなく、「紹介元医療機関」にも確認し、適切な処方内容とできた好事例—医療機能評価機構

2022.11.25.(金)

患者が、B医療機関→A医療機関に移った際に、抗てんかん薬の情報が十分に共有されていなかったため、過剰投与・過少投与の被害を防ぐために、薬剤師が紹介元医療機関に確認し「従前と同じ処方内容」とすることができた—。

日本医療機能評価機構が11月22日に公表した、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の「共有すべき事例」から、こういった重要知見が明らかになっています(機構のサイトはこちら)。

自動分包機に誤った薬剤が充填されてしまう事例に留意を

日本医療機能評価機構は、保険薬局(調剤薬局)における医療安全の確保・向上を目指した「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」も展開しています。全国の保険薬局を対象に「患者の健康被害等につながる恐れのあったヒヤリ・ハット事例」(ヒヤリとした、ハッとした事例)の報告を求め、事例の集積・解析により「再発防止策」の策定を目指すものです。

その一環として、ヒヤリ・ハット事例の中から、医療安全確保のためにとりわけ有益な情報を「共有すべき事例」として定期的にピックアップ・公表しています(最近の事例に関する記事はこちらこちら)。今般、新たに3つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。

1つ目は、一方化調剤における薬剤取り違えの事例です。

ある患者に、高血圧症や慢性心不全などの治療に用いるカルベジロール錠10mg「サワイ」を含む11種類の薬剤が42日分処方され、自動錠剤分包機で 一包化調剤が行われました。分包された薬剤を鑑査した際、42包中5包にカルベジロール錠でなく、10mg「サワイ」で はなく男性型脱毛症治療に用いるデュタステリド錠0.5mgAV「DSEP」が混入していることに気付きました。

本事例の背景には、過去に「自動錠剤分包機にデュタステリド錠を再充填する際、誤って、錠剤の色が類似しているカルベジロール錠の錠剤カセットにセットしてしまった」ことがあります。本来は複数名で誤りがないかを確認すべきところ、1名の実のチェックで済ませたという手順の不遵守というミスもあります。

機構では、▼一度分包した薬剤を分包紙から取り出し自動錠剤分包機へ再充填する場合は、薬剤の刻印・印字から薬剤名を特定したうえで、錠剤カセットの表示と充填する薬剤名が一致するか複数人で確認する▼自動錠剤分包機へ薬剤を充填する際は、錠剤のPTPシートやバラ錠包装に表示された薬剤名と錠剤カセットの表示を複数人で確認する▼業務手順を 取り決めるだけではなく、遵守することをスタッフに周知する—ことの重要性を強調しています。



2つ目は、薬剤師が患者から状態を聴取し「禁忌薬の処方」を回避できた好事例です。

ある患者に入眠剤であるゾルピデム酒石酸塩錠10mg「テバ」が処方されました。薬剤師は患者から「肝障害がある」と聴取していたため、処方医に肝障害の重症度を確認したところ「肝硬変」であることが分かりました。ゾルピデム酒石酸塩は「重篤な肝障害のある患者に禁忌である」ことを薬剤師が処方医へ伝達し、薬剤がトリアゾラム錠0.25mg「日医工」に変更になりました。

機構では、▼肝障害のある患者にゾルピデム酒石酸塩が処方された場合は、「重篤な肝障害のある患者に禁忌である」ことを処方医に情報提供し、肝障害の重症度を確認する必要がある▼薬剤師は、処方された薬剤の病態禁忌に患者が該当するか否かを検討するために、日頃から患者の既往歴・現病歴や検査値などを把握しておくことが重要である—とアドヴァイスしています。



3つ目は、患者がB医療機関→A医療機関へ紹介された際、薬剤師が「紹介元のB医療機関にまで確認し、連続した処方内容を実現できた」好事例です。

紹介状を持って医療機関Aを受診した患者にてんかんの痙攣発作を抑える作用のあるヒダントールF配合錠が処方されました。患者は当薬局を利用するのは初めてで、お薬手帳も持参しておらず「薬剤服用歴」を確認することができませんでした。

販売名に「ヒダントール」を含む薬剤には配合剤も含めると複数の種類が存在します。有効成分がフェニトインのみのヒダントール錠 、フェニトインのほかにフェノバルビタール、安息香酸ナトリウムカフェインを含有するヒダントールF配合錠などです。抗てんかん薬の処方間違いは、「過量投与による重篤な副作用の発現」や「過少投与による発作の出現」などの問題を引き起こしかねません。

この点を踏まえて薬剤師が、念のため処方医に確認したところ「紹介状には規格等の記載はなかった」との回答があった。薬剤師が、紹介元であるBクリニックに問い合わせたところ「これまで、フェニトインのみのヒダントール錠100mgを処方していた」ことがわかったため、処方医に情報提供を行った結果、「フェニトインのみのヒダントール錠100mg」に変更となりました。

機構では、▼患者の治療を別の医療機関で継続する際は、服用中の薬剤の情報を医療機関間で正しく引き継ぐ必要があり、薬局でも「患者の薬剤服用歴を把握したうえで処方監査」を行い、処方内容に疑義がある場合は処方医に確認する▼別の医療機関から治療を引き継いだ医療機関の処方箋に疑義が生じた場合、処方した医療機関に疑義照会を行うだけでは疑義が解消されないことがあり、紹介元への確認が重要なケースもある—旨のアドヴァイスをしています。





薬局・薬剤師には「対物業務」から「対人業務」への移行が求められ、いわゆる「かかりつけ薬局・薬剤師」が▼服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導▼24時間対応・在宅対応▼かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化—の機能を持つべきことが重要です(関連記事はこちら)。

あわせて、今年(2022年)7月には「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」が、▼「対物業務のみ・対人業務に力を入れない」薬局経営が成り立たないような調剤報酬へ移管する必要がある▼「対物業務の効率化」のため、まず「一包化業務の他薬局」への外部委託認可を検討する▼「ICT化・DX対応」を進めるとともに、薬局薬剤師は「地域の多職種や、病院薬剤師と顔の見える関係」構築に努める必要がある—との考えをまとめています(関連記事はこちら)。

とりわけ高齢者においては多剤投与が健康被害を引き起こす可能性が高く(ポリファーマシー)、厚生労働省は「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」および「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))」を取りまとめ、注意を呼び掛けています。とくに外来医療等では、患者のそばに常に医療従事者がいるわけではないことから、保険薬局(調剤薬局)のかかりつけ機能が極めて重要となります(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。



こうした考え方を先取りし、2018年度の調剤報酬改定では、▼薬剤師から処方医に減薬を提案し、実際に減薬が行われた場合に算定できる【服用薬剤調整支援料】(125点)の新設▼【重複投薬・相互作用等防止加算】について、残薬調整以外の場合を40点に引き上げる(残薬調整は従前どおり30点)—など、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経済的にサポートする基盤が整備され、前回の2020年度改定での充実(例えば【服用薬剤調整支援料2】の新設など)、今回の2022年度改定での充実(例えば「調剤料の処方日数に応じた評価の見直し」や「調剤管理料の新設」など)も図られています。

「疑義照会=点数算定」という単純構造ではないものの(要件・基準をクリアする必要がある)、今回の事例のような薬剤師の素晴らしい取り組みが積み重ねられることで、「かかりつけ薬局・薬剤師」の評価(評判)が高まり、診療報酬での評価にも結び付くでしょう。

さらに、患者から「あの薬局、あの薬剤師さんは親身になってくれ、お医者さんに問合せまでしてくれる」との良い評判が立つことが、薬局経営の安定化に非常に効果的です。



なお、厚労省は昨年(2021年)3月31日に通知「『病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方』について」を示しており、病院はもちろん、地域のクリニックや薬局と連携して「ポリファーマシー対策」を進めることの重要性を指摘しています。医療安全確保のためにも「地域連携」が極めて重要です。



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