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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

一般用医薬品購入希望者の症状から薬剤師が「医療機関受診」を促し、適切な診断・治療につなげられた好事例—医療機能評価機構

2023.10.10.(火)

一般用医薬品購入希望者から薬剤師が症状を把握し、「医療機関受診」を促したことから、適切な診断・治療につなげられた—。

日本医療機能評価機構が9月29日に公表した、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の「共有すべき事例」から、こういった重要知見が明らかになりました(機構のサイトはこちら)。

後発品のメーカー変更、患者は「違う薬」と受け止めることもあり、丁寧な説明を

日本医療機能評価機構では、保険薬局(調剤薬局)における医療安全の確保・向上を目指した「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」も展開しています。全国の保険薬局から「患者の健康被害等につながる恐れのあったヒヤリ・ハット事例」(ヒヤリとした、ハッとした事例)の報告を求め、重要な事例の集積・解析・公表を踏まえて「再発防止」を目指すものです。

再発防止の一環として、ヒヤリ・ハット事例の中から、医療安全確保のために有益な情報を「共有すべき事例」として定期的にピックアップ・公表しています(最近の事例に関する記事はこちら)。今般、新たに3つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。

1つ目は「後発医薬品を変更した際に説明不足があった」事例です。

ある薬局をいつも利用する患者が、高血圧症治療に用いる「【般】フロセミド錠20mg」と記載された処方箋を持参しました。これまで当該患者に交付していたフロセミド錠20mg「NIG」が入手困難になったため、今回はフロセミド錠20mg「NP」を交付しましたが、薬剤師は変更について患者に説明しませんでした。患者は、交付された薬剤の外観がこれまでと大きく異なっていたため不審に思い、服用しませんでした。2週間後に医師が「患者が薬剤を服用していない」ことに気付き、薬局に連絡したといいます。

薬剤の専門家である薬剤師にとっては「有効成分は変わらない、いわば同じ薬である」ことが自明ですが、専門知識を持たない患者の多くには「いつもと違う薬」と感じられる場合があります。機構では、▼薬剤師は、処方監査や鑑査、交付の際に薬剤服用歴などを見て前回処方との比較を行うことが基本で、その際には「薬剤の製造販売業者」も確認する必要がある▼必要な情報を患者に漏れなく提供するには、情報共有の重要性を理解し、薬局内のチームワークを高めて業務を行うことが有用である—とアドヴァイスしています。



2つ目は「電話でのやり取りによる規格間違い」事例です。

ある薬局に、医療機関の看護師から「患者に、がんの鎮痛に用いる『オプソ内服液2.5ミリ』を処方したいが、在庫はあるか」と電話で問い合わせがありました。薬剤師は「2.5ミリ」を「2.5mg」と考え、「オプソ内服液の規格は5mgと10mgであり、薬局の在庫は5mgのみである」と伝えたところ、看護師から「5ミリを処方するよう医師に伝える」との返答がありました。その後、薬局で応需した処方箋に「オプソ内服液10mg(5mL/包)」が記載されていたことから、薬剤師は、問い合わせ時の看護師の言葉(ミリ)が、「ミリグラム(mg)ではなく、mL(ミリリットル)」であることに気付きました。医療機関に確認したところ「オプソ内服液5mg(2.5mL/包)」に変更となりました。

機構では、▼電話でのやり取りの際は「解釈に齟齬が生じる可能性がある」ことを認識しておく▼電話で問い合わせを受けた場合、解釈の齟齬を防ぐために「薬剤の名称、規格・単位」まで丁寧に確認する▼事例では、「2.5ミリとは2.5ミリグラムのことですか?」のように具体的に確認することや、FAXやメールなどの文字情報を用いて確認することが有用である▼医療用麻薬の内服液には、オプソ内服液の他にオキシコドン内服液があり、2.5mg(2.5mL/包)、5mg(2.5mL/包)、10mg(5mL/包)、20mg(5mL/包)の規格が存在し、「1包あたりの有効成分の含量(mg)と容量(mL)の表記があることに留意し、他の医療従事者と医療用麻薬の内服液についてやり取りする際は、製剤の含量や容量の認識に齟齬 が生じないよう慎重に確認する—とアドヴァイスしています。



3つ目は、「来局者の症状から医療機関受診を勧奨した」好事例です。

ある薬局に「腹部に発疹があるので、ステロイド成分が配合された一般用医薬品『フルコートf』を購入したい」と希望する患者が来局しました。薬剤師が患者の症状を確認すると、▼腹部の発疹は赤みが強い▼片側性で痛みもある—ことから、「皮膚科医の診察が必要ではないか」と判断。フルコートfは販売せず、近隣の皮膚科医院を紹介し、すぐに受診するよう来局者に伝えました。来局者が皮膚科医院を受診したところ「帯状疱疹」と診断され、治療薬「アメナリーフ錠200mg」「ビダラビン軟膏3%」が処方されました。

フルコートfの注意事項には「ウイルスや真菌(カビ)などによる皮膚感染症には原則用いない。とくに、単純疱疹(口唇・顔面ヘルペス、カポジ水痘様発疹症、性器ヘルペス)、水痘(水ぼうそう)、帯状疱疹などは禁忌とされる」旨が規定されており、薬剤師が適切な判断をしたことが確認できます。

機構では、▼ステロイド外用薬の購入希望者に帯状疱疹が疑われる場合は、「重症化や後遺症が心配されるウイルス感染症の症状である可能性がある」「ステロイド外用薬の使用は不適切である可能性がある」ことなどを説明し、早期に医療機関を受診するよう勧める▼一般用医薬品の不適切な販売を回避するために、薬剤師が症状の確認を行うことが有用である▼一般用医薬品の購入および既に購入した薬剤の使用の適否について、日頃から地域住民が薬局で気軽に尋ねることができる関係性を構築することが、セルフメディケーションの推進に有用である—とアドヴァイスしています。



Gem Medでも繰り返し報じているとおり、ゾコーバ錠は妊婦・妊娠可能性のある女性には「禁忌」とされています(動物実験で催奇形性の可能性がみられている)。

機構では、▼女性患者にゾコーバ錠を交付する際は「妊娠中に服用することで胎児奇形を起こす可能性がある」ことを説明し、妊娠している可能性(前回の月経後に性交渉を行った場合は妊娠している可能性があることなど)について確実に確認を行うことが重要である▼ゾコーバ錠が処方された場合は、各種資材を活用して患者から必要な情報を収集し、服薬に関する注意事項を説明する必要がある—とアドヴァイスしています(関連記事はこちら)。





薬局・薬剤師には「対物業務」から「対人業務」への移行が求められ、いわゆる「かかりつけ薬局・薬剤師」が▼服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導▼24時間対応・在宅対応▼かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化—の機能を持つべきことが重要です(関連記事はこちら)。

あわせて、昨年(2022年)7月には「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」が、▼「対物業務のみ・対人業務に力を入れない」薬局経営が成り立たないような調剤報酬へ移管する必要がある▼「対物業務の効率化」のため、まず「一包化業務の他薬局」への外部委託認可を検討する▼「ICT化・DX対応」を進めるとともに、薬局薬剤師は「地域の多職種や、病院薬剤師と顔の見える関係」構築に努める必要がある—との考えをまとめています(関連記事はこちら)。

とりわけ高齢者においては多剤投与が健康被害を引き起こす可能性が高く(ポリファーマシー)、厚生労働省は「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」および「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))」を取りまとめ、注意を呼び掛けています。とくに外来医療等では、患者のそばに常に医療従事者がいるわけではないことから、保険薬局(調剤薬局)のかかりつけ機能が極めて重要となります(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。



こうした考え方を先取りし、2018年度の調剤報酬改定では、▼薬剤師から処方医に減薬を提案し、実際に減薬が行われた場合に算定できる【服用薬剤調整支援料】(125点)の新設▼【重複投薬・相互作用等防止加算】について、残薬調整以外の場合を40点に引き上げる(残薬調整は従前どおり30点)—など、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経済的にサポートする基盤が整備され、前回の2020年度改定での充実(例えば【服用薬剤調整支援料2】の新設など)、今回の2022年度改定での充実(例えば「調剤料の処方日数に応じた評価の見直し」や「調剤管理料の新設」など)も図られています。

「疑義照会=点数算定」という単純構造ではないものの(要件・基準をクリアする必要がある)、今回の事例のような薬剤師の素晴らしい取り組みが積み重ねられることで、「かかりつけ薬局・薬剤師」の評価(評判)が高まり、診療報酬での評価にも結び付くでしょう。

さらに、患者から「あの薬局、あの薬剤師さんは親身になってくれ、お医者さんに問合せまでしてくれる」との良い評判が立つことが、薬局経営の安定化に非常に効果的です。



なお、厚労省は昨年(2021年)3月31日に通知「『病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方』について」を示しており、病院はもちろん、地域のクリニックや薬局と連携して「ポリファーマシー対策」を進めることの重要性を指摘しています。医療安全確保のためにも「地域連携」が極めて重要です。



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