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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

単剤→配合剤へと変更になった際は配合成分の含量や添付文書等の確認徹底を、妊娠可能性ある女性へはゾコーバ錠は禁忌—医療機能評価機構

2023.8.29.(火)

単剤から配合剤へと変更になった際、配合成分の含量や添付文書等の確認を十分に行って「適正な処方」内容に変更できた—。

20歳代女性に新型コロナウイルス感染症治療薬「ゾコーバ錠」が処方されたが、薬剤師が患者と十分にコミュニケーションをとって「妊娠可能性」に気づき、削除を行えた—。

日本医療機能評価機構が8月28日に公表した、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の「共有すべき事例」から、こういった重要知見が明らかになりました(機構のサイトはこちら)。

薬剤の保存方法を添付文書等で確認し、薬局内で適切な管理徹底を

日本医療機能評価機構では、保険薬局(調剤薬局)における医療安全の確保・向上を目指した「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」も展開しています。全国の保険薬局から「患者の健康被害等につながる恐れのあったヒヤリ・ハット事例」(ヒヤリとした、ハッとした事例)の報告を求め、重要な事例の集積・解析・公表を踏まえて「再発防止」を目指すものです。

再発防止の一環として、ヒヤリ・ハット事例の中から、医療安全確保のために有益な情報を「共有すべき事例」として定期的にピックアップ・公表しています(最近の事例に関する記事はこちら)。今般、新たに3つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。

1つ目は「薬局においてエピペンの保存方法に誤りがあった」事例です。

ある薬局で、患者の家族から「蜂毒、食物、薬物等に起因するアナフィラキシー反応に対する補助治療薬『エピペン注射液0.15mg』が記載された処方箋」と「期限切れのエピペン注射液0.15mg」を受け取りました。薬剤師は保冷庫に保存していた薬剤を調製し、交付。その後、事務職員が患者家族から回収した薬剤に「冷蔵庫での保存禁止」のメモが貼ってあることに気付き、薬剤師に報告しました。薬局では「注射薬は保冷庫で保存する必要がある」と思い込み、エピペン注射液を保冷庫で保存していたことから製薬企業に確認したところ、「薬剤への影響はないが保冷庫保存により注射器のゴムの部分が変形し正常に注射できない可能性がある」との回答があった。添付文書等には「摂氏15-30度で保存する」旨が記載されています。薬局から患者家族に連絡し、新しい薬剤と交換することができました。

機構では、▼注射薬でも「保存方法は薬剤ごとに異なる」ことを認識し、保存方法を添付文書等で確認し、薬局内で適切に管理できるよう手順書を作成し、それを運用することが重要▼エピペン使用者は使用・保存方法について正しく理解しておく必要がある▼薬剤師は、薬剤を交付する際に、患者・家族が「使用・保存方法を正しく理解しているか」を確認する必要があり、薬剤師自身も正しい使用・保存方法を利課すルことが重要▼エピペンについて、「冷所」や「30度を超えた状態で保存しない」よう、外箱・携帯用ケース・本来の表記について工夫が望まれる—とアドヴァイスしています。



2つ目は、「配合剤の有効成分の含量や添付文書を確認し、薬剤服用歴や検査結果と照らし合わせ、薬剤変更の適否について検討を行った」好事例です。

ある薬局に、▼高コレステロール血症治療薬の「リバロ錠1mg」1日1回1錠▼高コレステロール血症治療薬の「ゼチーア錠10mg」1日1回1錠—を服用していた患者が処方箋を持参しました。今回は高コレステロール血症治療薬の「リバゼブ配合錠LD」1日1回1錠が処方されており、患者は処方医から「薬剤を変更する」と説明されていました。リバゼブ配合錠LDは、1錠の中に「ピタバスタチンカルシウム(リバロ錠の一般名)として2mg」、「エゼチミブ(ゼチーア錠の一般名)として10mg」を含有する配合剤です。このため、今回の変更では「ピタバスタチンカルシウムが1mgから2mgに増量された」ことになります。しかし薬剤師が検査値を確認したところ前回と変わりありませんでした。薬剤師は「ピタバスタチンカルシウム増量の理由が見当たらない」こと、「リバゼブ配合錠の添付文書の用法用量に関連する注意に該当しない」ことから、処方医に疑義照会。結果、リバゼブ配合錠LDは削除となり、元の「リバロ錠1mg・1日1回1錠、ゼチーア錠10mg・1日1回1錠」へ処方変更となりました。

機構では、▼単剤から配合剤へ処方が切り替わった際は、配合されている成分・含量を確認し、単剤からの切り替えを行う際の注意点を踏まえたうえで処方監査を行うことが基本である▼患者の薬剤服用歴やお薬手帳などから処方の推移を把握し、薬剤選択の妥当性について検討することが重要である▼事例は、配合剤の有効成分の含量や添付文書を確認し、薬剤服用歴や検査結果と照らし合わせ、薬剤変更の適否について検討を行った好事例である—とコメントしています。



3つ目も、「妊娠可能性のある患者に、新型コロナウイルス感染症治療薬『ゾコーバ錠』の投与を防止できた」好事例です。

新型コロナウイルス感染症に罹患した20歳代女性患者にゾコーバ錠125mgが処方されました。薬剤師が患者に「妊娠または妊娠の可能性」を確認したところ、「月経が予定日より遅れており、妊娠の可能性がある」ことを聴取できました。薬剤師から処方医に疑義照会を行った結果、薬剤が削除になっています。

Gem Medでも繰り返し報じているとおり、ゾコーバ錠は妊婦・妊娠可能性のある女性には「禁忌」とされています(動物実験で催奇形性の可能性がみられている)。

機構では、▼女性患者にゾコーバ錠を交付する際は「妊娠中に服用することで胎児奇形を起こす可能性がある」ことを説明し、妊娠している可能性(前回の月経後に性交渉を行った場合は妊娠している可能性があることなど)について確実に確認を行うことが重要である▼ゾコーバ錠が処方された場合は、各種資材を活用して患者から必要な情報を収集し、服薬に関する注意事項を説明する必要がある—とアドヴァイスしています(関連記事はこちら)。





薬局・薬剤師には「対物業務」から「対人業務」への移行が求められ、いわゆる「かかりつけ薬局・薬剤師」が▼服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導▼24時間対応・在宅対応▼かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化—の機能を持つべきことが重要です(関連記事はこちら)。

あわせて、昨年(2022年)7月には「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」が、▼「対物業務のみ・対人業務に力を入れない」薬局経営が成り立たないような調剤報酬へ移管する必要がある▼「対物業務の効率化」のため、まず「一包化業務の他薬局」への外部委託認可を検討する▼「ICT化・DX対応」を進めるとともに、薬局薬剤師は「地域の多職種や、病院薬剤師と顔の見える関係」構築に努める必要がある—との考えをまとめています(関連記事はこちら)。

とりわけ高齢者においては多剤投与が健康被害を引き起こす可能性が高く(ポリファーマシー)、厚生労働省は「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」および「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))」を取りまとめ、注意を呼び掛けています。とくに外来医療等では、患者のそばに常に医療従事者がいるわけではないことから、保険薬局(調剤薬局)のかかりつけ機能が極めて重要となります(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。



こうした考え方を先取りし、2018年度の調剤報酬改定では、▼薬剤師から処方医に減薬を提案し、実際に減薬が行われた場合に算定できる【服用薬剤調整支援料】(125点)の新設▼【重複投薬・相互作用等防止加算】について、残薬調整以外の場合を40点に引き上げる(残薬調整は従前どおり30点)—など、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経済的にサポートする基盤が整備され、前回の2020年度改定での充実(例えば【服用薬剤調整支援料2】の新設など)、今回の2022年度改定での充実(例えば「調剤料の処方日数に応じた評価の見直し」や「調剤管理料の新設」など)も図られています。

「疑義照会=点数算定」という単純構造ではないものの(要件・基準をクリアする必要がある)、今回の事例のような薬剤師の素晴らしい取り組みが積み重ねられることで、「かかりつけ薬局・薬剤師」の評価(評判)が高まり、診療報酬での評価にも結び付くでしょう。

さらに、患者から「あの薬局、あの薬剤師さんは親身になってくれ、お医者さんに問合せまでしてくれる」との良い評判が立つことが、薬局経営の安定化に非常に効果的です。



なお、厚労省は昨年(2021年)3月31日に通知「『病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方』について」を示しており、病院はもちろん、地域のクリニックや薬局と連携して「ポリファーマシー対策」を進めることの重要性を指摘しています。医療安全確保のためにも「地域連携」が極めて重要です。



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