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GemMed塾 看護モニタリング

薬剤師が患者とのコミュニケーションの中で「処方間違い」に気づき、疑義照会を経て適切な処方内容へ変更できた好事例—医療機能評価機構

2023.12.29.(金)

薬剤師が、患者とのコミュニケーションの中で「処方が誤っているのではないか」と気づき、疑義照会を経て適切な処方内容へ変更できた—。

日本医療機能評価機構が12月25日に公表した、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の「共有すべき事例」から、こういった重要知見が明らかになりました(機構のサイトはこちら)。

PTPシートを取り扱う際は、外観でなく「シートに記載されている薬剤名」確認を

日本医療機能評価機構では、保険薬局(調剤薬局)における医療安全の確保・向上を目指した「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」も展開しています。全国の保険薬局から「患者の健康被害等につながる恐れのあったヒヤリ・ハット事例」(ヒヤリとした、ハッとした事例)の報告を求め、重要な事例の集積・解析・公表を踏まえて「再発防止」を目指すものです。

再発防止の一環として、ヒヤリ・ハット事例の中から、医療安全確保のために有益な情報を「共有すべき事例」として定期的にピックアップ・公表しています(最近の事例に関する記事はこちら)。今般、新たに3つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。

1つ目は「外観が類似した薬剤の戻し間違い」事例です。

患者に、解熱鎮痛剤の「カロナール錠500」1日3錠・1日3回・毎食後5日分が処方されました。薬剤師はカロナール錠500の箱から15錠を取り出し、調剤監査支援システムを使用して照合したところエラーが表示されました。薬剤のうち端数の5錠が糖尿病等治療薬の「メトホルミン塩酸塩錠500mgMT『ニプロ』」でした。背景には「事例の前に、別の患者にカロナール錠500とメトホルミン塩酸塩錠500mgを調製した際、残ったメトホルミン塩酸塩錠500mgを『包装のイメージが似ていた』カロナール錠500の箱に誤って戻してしまっていた」ことがあります。

機構では、▼PTPシートを取り扱う際は、外観イメージにとらわれず「シートに記載されている薬剤名」の確認が重要である▼取り違えた薬剤の交付を防ぐには、目視確認だけでなく「調剤監査支援システムなどの機器を用いる」ことも有用である▼薬剤棚や箱への戻し 間違いを防ぐには「薬剤を戻す際に複数人で確認する」「調剤時以外の時間帯に作業する」などの対策を講じる必要がある—とアドヴァイスしています。



2つ目は、医薬品の供給不安がある中で「薬剤師が処方医に確認」し、不適切な薬剤への変更を防止できた事例です。

患者に、高血圧症、動脈硬化症、慢性腎臓病、神経衰弱症、神経性心悸亢進症、てんかん、ヒステリー、小児夜啼症、陰萎などの症状緩和に用いる「ツムラ柴胡加竜骨牡蛎湯エキス顆粒(医療用)」1日5g・1日2回・朝夕食前が処方されました。しかし出荷制限により当該薬剤が入荷しないため、薬剤師は「クラシエ柴胡加竜骨牡蛎湯エキス細粒」に変更できないか処方医に提案しようと考えましたが、土曜日の午後で、医療機関が診療時間外であったために連絡がつきませんでした。薬剤師は患者に残薬があることを確認し、調剤を保留。週明け月曜日に改めて処方医に連絡したところ、処方医から「患者は胃腸が弱く、お腹を下しやすいことを考慮してダイオウを含有しないツムラの漢方製剤を選んでおり、変更しないように」との返答がありました。同薬局ではツムラ製剤の入荷を待って、交付することとしました。

名称が同じ漢方製剤でもメーカーにより組成に違いがあることを薬剤師は把握していませんでしたが、処方医への確認により、不適切な薬剤への変更を防止することができました。

機構では「処方された漢方製剤が出荷制限等により入手できず、薬剤師から薬剤の変更を提案する場合は、製剤の組成や患者の状況などを確認したうえで、処方医に対して適切な情報提供や処方提案を行う」ことが重要とアドヴァイスしています。



3つ目は、「薬剤師が患者とコミュニケーションをとり、正しい処方内容へと変更できた」好事例です。

30歳代の患者に、総合感冒剤の「PL配合顆粒」と不整脈治療剤の「アスペノンカプセル20」が処方されました。薬剤師が患者に症状聴き取りを行ったところ「咳症状で受診したが、不整脈の症状はない」ことがわかりました。薬剤師が処方医に疑義照会を行った結果、不整脈治療剤「アスペノンカプセル」は鎮静剤「アスベリン錠」の処方間違いであったことが判明しました。名称の頭部分が同一なため、院内システムで薬剤を選択する際に誤ってしまったと考えられます。

機構では、処方間違いや薬剤の取り違えが起きやすい薬剤について「定期的にスタッフに注意喚起する」「処方マスタの薬剤名に薬効分類名を追記する」「薬品棚などに『名称類似注意』の札を取り付ける」など具体的な対策を講じることが重要であるとアドヴァイスしています。





薬局・薬剤師には「対物業務」から「対人業務」への移行が求められ、いわゆる「かかりつけ薬局・薬剤師」が▼服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導▼24時間対応・在宅対応▼かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化—の機能を持つべきことが重要です(関連記事はこちら)。

あわせて、昨年(2022年)7月には「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」が、▼「対物業務のみ・対人業務に力を入れない」薬局経営が成り立たないような調剤報酬へ移管する必要がある▼「対物業務の効率化」のため、まず「一包化業務の他薬局」への外部委託認可を検討する▼「ICT化・DX対応」を進めるとともに、薬局薬剤師は「地域の多職種や、病院薬剤師と顔の見える関係」構築に努める必要がある—との考えをまとめています(関連記事はこちら)。

とりわけ高齢者においては多剤投与が健康被害を引き起こす可能性が高く(ポリファーマシー)、厚生労働省は「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」および「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))」を取りまとめ、注意を呼び掛けています。とくに外来医療等では、患者のそばに常に医療従事者がいるわけではないことから、保険薬局(調剤薬局)のかかりつけ機能が極めて重要となります(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。



こうした考え方を先取りし、2018年度の調剤報酬改定では、▼薬剤師から処方医に減薬を提案し、実際に減薬が行われた場合に算定できる【服用薬剤調整支援料】(125点)の新設▼【重複投薬・相互作用等防止加算】について、残薬調整以外の場合を40点に引き上げる(残薬調整は従前どおり30点)—など、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経済的にサポートする基盤が整備され、前回の2020年度改定での充実(例えば【服用薬剤調整支援料2】の新設など)、今回の2022年度改定での充実(例えば「調剤料の処方日数に応じた評価の見直し」や「調剤管理料の新設」など)も図られています。

「疑義照会=点数算定」という単純構造ではないものの(要件・基準をクリアする必要がある)、今回の事例のような薬剤師の素晴らしい取り組みが積み重ねられることで、「かかりつけ薬局・薬剤師」の評価(評判)が高まり、診療報酬での評価にも結び付くでしょう。

さらに、患者から「あの薬局、あの薬剤師さんは親身になってくれ、お医者さんに問合せまでしてくれる」との良い評判が立つことが、薬局経営の安定化に非常に効果的です。



なお、厚労省は2021年3月31日に通知「『病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方』について」を示しており、病院はもちろん、地域のクリニックや薬局と連携して「ポリファーマシー対策」を進めることの重要性を指摘しています。医療安全確保のためにも「地域連携」が極めて重要です。



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