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病床機能報告 看護モニタリング

薬剤師が患者・家族とコミュニケーションをとり「処方薬剤の副作用」の劇的軽減を実現できた好事例—医療機能評価機構

2024.4.1.(月)

薬剤師が、患者・家族とコミュニケーションをとり「処方されている薬剤の副作用」(認知症高齢者の周辺症状(BPSD))を疑い、医師に状況報告・処方変更提案を行い、「薬剤による副作用の劇的な軽減」を実現できた—。

日本医療機能評価機構が3月28日に公表した、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の「共有すべき事例」から、こういった重要知見が明らかになりました(機構のサイトはこちら)。

処方箋の「リフィル可」欄のチェックを業務手順に加えよ

日本医療機能評価機構では、保険薬局(調剤薬局)における医療安全の確保・向上を目指した「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」も展開しています。全国の保険薬局から「患者の健康被害等につながる恐れのあったヒヤリ・ハット事例」(ヒヤリとした、ハッとした事例)の報告を求め、重要な事例の集積・解析・公表を踏まえて「再発防止」を目指すものです。

再発防止の一環として、ヒヤリ・ハット事例の中から、医療安全確保のために有益な情報を「共有すべき事例」として定期的にピックアップ・公表しています(最近の事例に関する記事はこちら)。今般、新たに3つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。

1つ目は「注射薬と内服薬の取り違え」事例です。

高熱が出ている施設入所者の尿からMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)が検出されため、医師が抗菌剤の「バンコマイシン塩酸塩点滴静注用0.5g『明治』」を処方しました。処方箋を応需した薬局の発注担当者は、医薬品卸業者に電話で薬剤を発注。卸業者では在庫が不足しており、当日は一部の薬剤のみが納品されました。薬剤師Aは納品された薬剤を十分に確認しないまま施設へ届けてしまいました。翌日、不足していた薬剤が納品された際に「バンコマイシン塩酸塩点滴静注用0.5g『明治』」ではなく、内服薬の「バンコマイシン塩酸塩散0.5g『明治』」が納品されていたことに薬剤師Bが気付きました。すぐに施設へ連絡「薬剤を誤って交付した」ことを伝達。前日に施設へ届けた「バンコマイシン塩酸塩散0.5g『明治』」はすでに患者に静脈注射されていました。納品された内服薬はバイアル瓶に粉末が入っている製剤で、薬剤師Aと施設の看護師は「注射薬」と思い込んだとのことです。

機構では、▼薬剤を取り扱う際は「薬剤に記載されている注意事項」の確認も重要(経口用のバンコマイシン塩酸塩には、薬瓶ラベルに「経口剤」、赤地に白文字で「禁注射」と表記されている)▼薬剤を電話で発注する場合、改めて発注書を作成してFAXするなど、伝達の間違いが起きないように発注の手順を定めておくことが必要▼薬剤が納品された際には、発注書と納品伝票を照合することが重要—とアドヴァイスしています。

医薬品の供給不安が長引く中では、「一部の薬剤のみが納品される」ケースが多く、留意が必要な事例と言えます。



2つ目は「処方箋の『リフィル可』欄見落とし」事例です。

ある薬局を平素から利用している患者に、高コレステロール血症治療薬の「ロスバスタチン錠2.5mg『DSEP』」が処方されました。患者が持参した処方箋には、「リフィル可」欄にレ点が記入されていました。しかし、薬剤師はリフィル処方箋であることに気付かず、通常の処方箋として調剤し、薬剤を交付しようとしてしまいました。もっとも、薬剤を交付する際の患者との会話から「リフィル処方箋」であることに気付き、対応することができました。これまでの処方箋が「リフィル可」ではなかったために、薬剤師が見落としてしまったようです。

機構では「薬剤師がリフィル処方箋であることに気付かず、患者の薬物療法が中断してしまい病状が悪化した事例も報告されている。処方箋を応需した際に『リフィル可』欄を確認することを手順に定め、遵守することが重要」とアドヴァイスしています。



3つ目は、「薬剤師が患者・家族とコミュニケーションをとり、薬剤の副作用軽減を実現できた」好事例です。

80歳代の認知症患者が、抑うつ・睡眠障害などの軽減に用いる「エチゾラム錠0.5mg『アメル』」を継続して服用していた。薬剤交付の際、家族から「患者の暴言や被害妄想」について相談がありました。薬剤師は家族の了解を得たうえで、服薬情報提供書を用いて、処方医へ「患者の状況報告と薬剤変更の提案」を行い、ケアマネジャーとも情報を共有した。その結果、処方医は「患者の暴言や被害妄想は、エチゾラムによる副作用の可能性がある」と疑い、段階的にエチゾラム錠を減量(診察時には暴言等がなく、医師は副作用に気づかなかった)。最終的にはエチゾラム錠は処方から削除され、神経症・不安症などの軽減に用いる「ツムラ抑肝散エキス顆粒(医療用)」が処方されました。その後、家族から「患者の暴言・被害妄想は劇的に改善し、介護のストレスが軽減した」との報告がありました。

機構では、▼認知症患者の周辺症状(BPSD)について医療・介護従事者や家族などが情報共有し、連携して対応することが重要▼ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、認知症患者の周辺症状(BPSD)の悪化・発現に関与する可能性がある(ただし急激な減量・中止は痙攣発作、せん妄、振戦、不眠、不安、 幻覚、妄想等の離脱症状を招くこともある点に竜)▼認知症患者が来局した際は、薬剤師は、来局時の患者や家族を観察し、「困っていることや、気になることは他にはありませんか。」と声を掛けるなど、積極的に情報を収集し、薬物療法の支援を行うことが必要—とアドヴァイスしています。認知症高齢者が増加を続ける中で、事例のような対応が多くの薬局・薬剤師によってなされることに期待が集まります。





薬局・薬剤師には「対物業務」から「対人業務」への移行が求められ、いわゆる「かかりつけ薬局・薬剤師」が▼服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導▼24時間対応・在宅対応▼かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化—の機能を持つべきことが重要です(関連記事はこちら)。

あわせて、昨年(2022年)7月には「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」が、▼「対物業務のみ・対人業務に力を入れない」薬局経営が成り立たないような調剤報酬へ移管する必要がある▼「対物業務の効率化」のため、まず「一包化業務の他薬局」への外部委託認可を検討する▼「ICT化・DX対応」を進めるとともに、薬局薬剤師は「地域の多職種や、病院薬剤師と顔の見える関係」構築に努める必要がある—との考えをまとめています(関連記事はこちら)。

とりわけ高齢者においては多剤投与が健康被害を引き起こす可能性が高く(ポリファーマシー)、厚生労働省は「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」および「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))」を取りまとめ、注意を呼び掛けています。とくに外来医療等では、患者のそばに常に医療従事者がいるわけではないことから、保険薬局(調剤薬局)のかかりつけ機能が極めて重要となります(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。3つ目の事例は、薬局薬剤師によるポリファーマシー対策実践の重要事例と言えます。



こうした考え方を先取りし、2018年度の調剤報酬改定では、▼薬剤師から処方医に減薬を提案し、実際に減薬が行われた場合に算定できる【服用薬剤調整支援料】(125点)の新設▼【重複投薬・相互作用等防止加算】について、残薬調整以外の場合を40点に引き上げる(残薬調整は従前どおり30点)—など、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経済的にサポートする基盤が整備され、前回の2020年度改定での充実(例えば【服用薬剤調整支援料2】の新設など)、今回の2022年度改定での充実(例えば「調剤料の処方日数に応じた評価の見直し」や「調剤管理料の新設」など)も図られています。

「疑義照会=点数算定」という単純構造ではないものの(要件・基準をクリアする必要がある)、今回の事例のような薬剤師の素晴らしい取り組みが積み重ねられることで、「かかりつけ薬局・薬剤師」の評価(評判)が高まり、診療報酬での評価にも結び付くでしょう。

さらに、患者から「あの薬局、あの薬剤師さんは親身になってくれ、お医者さんに問合せまでしてくれる」との良い評判が立つことが、薬局経営の安定化に非常に効果的です。



なお、厚労省は2021年3月31日に通知「『病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方』について」を示しており、病院はもちろん、地域のクリニックや薬局と連携して「ポリファーマシー対策」を進めることの重要性を指摘しています。医療安全確保のためにも「地域連携」が極めて重要です。



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