Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

薬剤師が患者とのコミュニケーションをとり「処方されるはずのない乳がん治療薬」投与をストップできた好事例—医療機能評価機構

2024.2.28.(水)

薬剤師が、患者とのコミュニケーションをとり「処方されるはずのない乳がん治療薬が処方されており、誤りの可能性あり」と判断して、疑義照会し、誤投薬をストップできた—。

日本医療機能評価機構が2月26日に公表した、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の「共有すべき事例」から、こういった重要知見が明らかになりました(機構のサイトはこちら)。

兄弟姉妹が同一医療機関を受診した際には「処方の誤り」が生じやすい点に留意を

日本医療機能評価機構では、保険薬局(調剤薬局)における医療安全の確保・向上を目指した「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」も展開しています。全国の保険薬局から「患者の健康被害等につながる恐れのあったヒヤリ・ハット事例」(ヒヤリとした、ハッとした事例)の報告を求め、重要な事例の集積・解析・公表を踏まえて「再発防止」を目指すものです。

再発防止の一環として、ヒヤリ・ハット事例の中から、医療安全確保のために有益な情報を「共有すべき事例」として定期的にピックアップ・公表しています(最近の事例に関する記事はこちら)。今般、新たに3つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。

1つ目は「薬袋への薬剤の入れ間違い」事例です。

ある患者に抗菌剤の「セフジトレンピボキシル錠100mg『トーワ』」1回1錠・1日3回と、アレルギー性鼻炎治療薬の「プソフェキ配合錠『サワイ』」1回2錠・1日2回が処方され、薬剤を交付しました。翌日、医療機関より、患者から「薬局で2種類の薬剤を受け取り、薬袋に記載された用法・用量に従って服用した後、一時的に具合が悪くなった。それぞれの薬剤が逆の薬袋に入っていた」との連絡があったと伝えられました。投薬カウンターに設置したカメラの記録映像を確認したところ、薬剤を交付する際に「薬袋への入れ間違い」があったことがわかりました。

「薬袋への薬剤の入れ間違い」は服用間違いに繋がり、患者に不利益を与える可能性があるため、機構では▼薬袋に薬剤を入れる際は、薬袋に記載された用法や薬剤名などを確認することが必須である▼薬袋への薬剤の入れ間違いを防止するために、調剤に関する手順を具体的に定め、遵守する必要がある—とアドヴァイスしています。



2つ目は「兄弟が同時に受診した際の処方間違い」に薬剤師が気付いた好事例です。

ある薬局で「初めて利用する小児(兄6歳、弟2歳)の兄弟2名」の処方箋を応需しました。6歳の兄には、抗菌剤の「アモキシシリン細粒10%『TCK』」1日3.6g・1日3回毎食後が処方されました。一方、2歳の弟には、同じく抗菌剤の「アモキシシリン細粒10%『TCK』1日6g・1日3回毎食後が処方されました。

薬剤師が、家族から兄弟の体重を聴取したところ、兄は21kg、弟は12kgでした。薬剤師は「それぞれの患者の処方量が誤っている」と考え、処方医に疑義照会。その結果、処方医が用量を逆に入力したことがわかり、兄の用量は1日6g、弟の用量は1日3.6gに変更となりました。

事例は「小児の兄弟2名が一緒に同一医療機関を受診した際、医師が処方内容を誤って入力してしまった」ために生じました。機構では、▼小児の処方箋を応需した際は、患者の年齢、体重、症状などを確認し、処方された薬剤の用量について妥当性を検討する▼兄弟姉妹は名字が同じで名前が類似している場合があるこ、同じ医療機関を一緒に受診することがあるために「処方時の間違い」が生じる可能性があることを認識する▼これまでに兄弟姉妹の処方箋を同時に応需した際、レセコンへの入力やお薬手帳へのシール貼付を「兄弟姉妹間で間違えた」事例も報告されており、注意する必要がある—とアドヴァイスしています。



3つ目は、「薬剤師が患者とコミュニケーションをとり、誤った薬剤の処方を是正できた」好事例です。

40歳代の女性患者に、▼抗菌剤の「セフジトレンピボキシル錠100mg」▼去痰などに用いる「ムコダイン錠」▼解熱・鎮痛に用いる「ロキソプロフェン錠60mg」▼閉経後乳がん治療に用いる「フェアストン錠40」—が処方され、それぞれの用法・用量が1回1錠・1日3回毎食後と記載されていました。来局時の問診票から、患者は「風邪様症状で医療機関を受診した」ことがわかりました。薬剤師は、患者の年齢や問診票、お薬手帳の情報から「閉経後乳がんの治療薬であるフェアストン錠40が処方されている」ことに疑問を感じ、患者に既往歴、現病歴を聴取したところ、乳がんと診断されてはいなかった。処方医へ疑義照会を行った結果、フェアストン錠40は、鎮咳に用いる「アストミン錠10mg」に変更となりました。

本事例は、医療機関の処方オーダリングシステム(設定が部分一致検索)において、処方医がアストミン錠を処方するため「アスト」と入力し検索した際、薬剤名の「アスト」の部分が一致するフェアストン錠40が候補に挙がり、誤って選択したものと推測されます。

機構では、▼医療機関の処方オーダリングシステムの設定などにより、事例のような事象が発生する可能性があることを把握しておく必要がある(類似事例がこれまでにも報告されている)●処方監査を行う際、「処方された薬剤の用法・用量が適切であるか確認し、患者から症状や現病歴・既往歴などの情報を収集して処方の妥当性を検討する」ことは、処方間違いに気付く契機となる—とアドヴァイスしています。





薬局・薬剤師には「対物業務」から「対人業務」への移行が求められ、いわゆる「かかりつけ薬局・薬剤師」が▼服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導▼24時間対応・在宅対応▼かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化—の機能を持つべきことが重要です(関連記事はこちら)。

あわせて、昨年(2022年)7月には「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」が、▼「対物業務のみ・対人業務に力を入れない」薬局経営が成り立たないような調剤報酬へ移管する必要がある▼「対物業務の効率化」のため、まず「一包化業務の他薬局」への外部委託認可を検討する▼「ICT化・DX対応」を進めるとともに、薬局薬剤師は「地域の多職種や、病院薬剤師と顔の見える関係」構築に努める必要がある—との考えをまとめています(関連記事はこちら)。

とりわけ高齢者においては多剤投与が健康被害を引き起こす可能性が高く(ポリファーマシー)、厚生労働省は「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」および「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))」を取りまとめ、注意を呼び掛けています。とくに外来医療等では、患者のそばに常に医療従事者がいるわけではないことから、保険薬局(調剤薬局)のかかりつけ機能が極めて重要となります(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。3つ目の事例は、薬局薬剤師によるポリファーマシー対策実践の重要事例と言えます。



こうした考え方を先取りし、2018年度の調剤報酬改定では、▼薬剤師から処方医に減薬を提案し、実際に減薬が行われた場合に算定できる【服用薬剤調整支援料】(125点)の新設▼【重複投薬・相互作用等防止加算】について、残薬調整以外の場合を40点に引き上げる(残薬調整は従前どおり30点)—など、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経済的にサポートする基盤が整備され、前回の2020年度改定での充実(例えば【服用薬剤調整支援料2】の新設など)、今回の2022年度改定での充実(例えば「調剤料の処方日数に応じた評価の見直し」や「調剤管理料の新設」など)も図られています。

「疑義照会=点数算定」という単純構造ではないものの(要件・基準をクリアする必要がある)、今回の事例のような薬剤師の素晴らしい取り組みが積み重ねられることで、「かかりつけ薬局・薬剤師」の評価(評判)が高まり、診療報酬での評価にも結び付くでしょう。

さらに、患者から「あの薬局、あの薬剤師さんは親身になってくれ、お医者さんに問合せまでしてくれる」との良い評判が立つことが、薬局経営の安定化に非常に効果的です。



なお、厚労省は2021年3月31日に通知「『病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方』について」を示しており、病院はもちろん、地域のクリニックや薬局と連携して「ポリファーマシー対策」を進めることの重要性を指摘しています。医療安全確保のためにも「地域連携」が極めて重要です。



病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

【関連記事】

薬剤師が患者とのコミュニケーションをとり「漫然とした薬剤投与継続のストップ」などが実現できた好事例—医療機能評価機構
薬剤師が患者とのコミュニケーションの中で「処方間違い」に気づき、疑義照会を経て適切な処方内容へ変更できた好事例—医療機能評価機構
薬剤師が専門知識を活かして薬剤の副作用を疑い、専門医へ受診勧奨した結果、適切な処方内容へ変更できた好事例—医療機能評価機構
薬剤師が「患者の生活情報」を把握し、また専門知識を活かして、適切な処方内容へ変更できた好事例—医療機能評価機構
一般用医薬品購入希望者の症状から薬剤師が「医療機関受診」を促し、適切な診断・治療につなげられた好事例—医療機能評価機構
単剤→配合剤へと変更になった際は配合成分の含量や添付文書等の確認徹底を、妊娠可能性ある女性へはゾコーバ錠は禁忌—医療機能評価機構
薬剤師が診療ガイドラインにまで遡り「処方内容の適正性」を確認した好事例—医療機能評価機構
薬剤師が専門知識を活かし、患者の検査値を確認、情報を聴取し「正しい処方内容への変更」がかなった好事例—医療機能評価機構
薬剤師が製薬メーカーに「正しい情報」の問い合わせまでし、併用禁忌を回避できた好事例—医療機能評価機構
薬剤師・薬局は「薬学的疑義を解消しないままの薬剤交付」をしてはならず、適切に疑義照会をせよ!—医療機能評価機構
薬剤師・薬局は添付文書確認など徹底し、患者とコミュニケーションをとり「適切な服薬指導」を行うことが重要—医療機能評価機構
薬剤師・薬局は「患者が気軽に薬剤療法などについて相談できる」環境を日頃から整備することが重要—医療機能評価機構
薬剤師が専門知識を十分に発揮し「同時併用が適切でない薬剤の処方」を是正できた好事例—医療機能評価機構
薬剤師が患者と対面・電話でコミュニケーションをとり、適切な処方内容への変更を実現できた好事例—医療機能評価機構
薬剤師が患者の訴えから「抗がん剤の副作用」を疑い、医療機関の受診を勧奨した好事例—医療機能評価機構
薬剤師が「紹介先医療機関」だけでなく、「紹介元医療機関」にも確認し、適切な処方内容とできた好事例—医療機能評価機構
薬剤師が患者の過去の情報を活用し、医療機関にも積極的に働きかけ、「禁忌薬剤の処方」を回避できた好事例—医療機能評価機構
薬剤を調整する際、「レセコンへの誤入力」の可能性を考慮し、必ず「処方箋」に照らすことが重要—医療機能評価機構
薬剤師は「最新の専門知識」に加え、「患者とのコミュニケーション」をとって「適切な処方内容か」の確認徹底を—医療機能評価機構

「対物業務のみ・対人業務に力を入れない」薬局は経営が成り立たない—ような調剤報酬へ移管せよ

薬剤師は、最新の専門知識と患者・家族からの情報を踏まえ「適切な処方内容か」の確認を—医療機能評価機構
薬剤師が患者とコミュニケーションとり、専門知識も活かして「適切な処方内容」へ変更できた好事例—医療機能評価機構
複数薬効のある「デュロキセチン製剤」、「先発品と後発品」などの重複投薬に留意を—医療機能評価機構
薬局薬剤師が多忙で処方監査がおろそかになり「10倍量の過量投与」を見逃してしまった—医療機能評価機構
薬局薬剤師が患者・付き添い人とコミュニケーションとり、専門知識を発揮し「併用禁忌」など回避—医療機能評価機構
薬局薬剤師が患者とコミュニケーションとり、代替薬をエビデンス添えて提案して禁忌薬剤を回避—医療機能評価機構
薬局薬剤師が疑問を放置せず、処方医に加え病院薬剤部にまで疑義照会し「適切な処方内容への変更」を実現—医療機能評価機構
薬剤師が患者とコミュニケーションとり、専門知識を発揮して「適切な処方内容への変更」を実現—医療機能評価機構
薬剤師が患者とコミュニケーションとり処方内容改善や重複投薬阻止を実現できた好事例—医療機能評価機構
患者の薬剤服用歴を確認し「禁忌薬剤の処方」を食い止めることができた好事例—医療機能評価機構
「名称類似するが異なる薬剤」の処方を患者とのコミュニケーションで把握し、処方変更できた好事例—医療機能評価機構
併用禁忌等の不適切な処方内容を、薬剤師が専門知識・患者からの情報で見抜き、適正内容に変更した好事例—医療機能評価機構
「徐放性製剤の粉砕投与」リスクなどを薬剤師が主治医に説き、適切な処方内容への変更を実現―医療機能評価機構
患者とのコミュニケーションや薬剤服用歴を通じて「骨粗鬆症治療薬」の適正使用(重複回避など)に努めよ―医療機能評価機構
お薬手帳や患者とのコミュニケーション通じて「医薬品の併用禁忌」発見などに努めよ―医療機能評価機構
一般用医薬品販売においても、薬剤師は患者・主治医から情報収集し不適切な薬剤使用防止に努めよ―医療機能評価機構
薬剤師が、患者とのコミュニケーションで副作用発現を察知し、処方変更に結び付けた好事例―医療機能評価機構
薬剤師が、医師の誤処方(薬剤名誤入力、禁忌薬処方)に気づき、適正な処方に結び付けた好事例―医療機能評価機構
医師が気づかなかった「危険な処方変更」を、薬剤師が専門性を発揮して回避し、副作用発生を防止できた好事例―医療機能評価機構
薬剤師が「かかりつけ」機能発揮する好事例、専門知識に加え、患者の状態にも配慮―医療機能評価機構
薬剤師が添付文書を確認し「不適切な薬剤」「併用禁忌の薬剤」処方を阻止した好事例―医療機能評価機構
薬剤師は、患者の検査値など多角的な情報から「副作用の兆候」確認を―医療機能評価機構
お薬手帳は医療従事者が処方内容確認のために使うこともあり、「毎回記録」が重要―医療機能評価機構
メトトレキサート、「休薬期間」「患者の腎機能」などを確認し、適切量等の処方・調剤を―医療機能評価機構
患者からの収集情報に加え、「検査値」を積極的に入手し、それに基づく処方監査を―医療機能評価機構
定期処方薬剤についても患者とコミュニケーションとり、「副作用発現の有無」を確認せよ―医療機能評価機構
薬剤師は添付文書等から「正しい服用方法」など確認し、当該情報を処方医にも共有せよ―医療機能評価機構
薬剤師は診療ガイドライン等通じて「薬物療法の広い知識」身につけ、患者にも丁寧な情報提供を―医療機能評価機構
薬剤師は「薬剤添付文書の確認」「患者の服用歴確認」「医師への既往歴確認」などを―医療機能評価機構
骨粗鬆症治療、外来での注射薬情報なども「お薬手帳」への一元化・集約化を―医療機能評価機構
薬剤師が患者の服用状況、添付文書内容を把握し、医療事故を防止した好事例―医療機能評価機構
薬剤師が患者とコミュニケーションをとり、薬剤の専門的知識を発揮して医療事故を防止した好事例―医療機能評価機構
薬剤師が「患者の処方歴やアレルギー情報」を十分に把握し、医療事故を防止できた好事例―医療機能評価機構
薬剤師が「薬剤の用法用量や特性に関する知見」を活用し、医療事故を防止した好事例―医療機能評価機構
薬剤師が患者とコミュニケーションとり、既往歴や入院予定を把握して医療事故防止―医療機能評価機構
薬剤師が薬剤の添加物を把握し、患者とコミュニケーションをとってアレルギー発現を防止―医療機能評価機構
薬剤の専門家である薬剤師、患者の検査値・添付文書など踏まえ積極的な疑義照会を―医療機能評価機構
高齢患者がPTPシートのまま薬剤を服用した事例が発生、服用歴から「一包化」等の必要性確認を―医療機能評価機構
薬剤師の疑義照会により、薬剤の過量投与、類似薬の重複投与を回避できた好事例―医療機能評価機構
薬剤師が多職種と連携し、薬剤の過少・過量投与を回避できた好事例―医療機能評価機構
薬剤師が患者の訴え放置せず、メーカーや主治医に連絡し不整脈など発見できた好事例―医療機能評価機構
薬剤師が併用禁忌情報等に気づき、処方医に疑義照会した好事例―医療機能評価機構
薬剤師が患者の腎機能低下に気づき、処方医に薬剤の減量を提案した好事例―医療機能評価機構
薬剤師が「検査値から患者の状態を把握」し、重大な副作用発生を防止した好事例―医療機能評価機構
薬剤師も患者の状態を把握し、処方薬剤の妥当性などを判断せよ―医療機能評価機構
複数薬剤の処方日数を一括して変更する際には注意が必要―医療機能評価機構



どの医療機関を受診しても、かかりつけ薬局で調剤する体制を整備―厚労省「患者のための薬局ビジョン」



病院入院前の薬剤状況確認、入院中の処方変更、退院後のフォローなど各段階で「ポリファーマシー対策」を―厚労省
外来や在宅、慢性期性期入院医療など療養環境の特性踏まえ、高齢者への医薬品適正使用を―厚労省
外来・在宅、慢性期医療、介護保険施設の各特性に応じた「高齢者の医薬品適正性」確保を―高齢者医薬品適正使用検討会
医師と薬剤師が連携し、高齢者における薬剤の種類・量の適正化進めよ―高齢者医薬品適正使用検討会

徐放性製剤の粉砕投与で患者に悪影響、薬剤師に「粉砕して良いか」確認を―医療機能評価機構