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260226ミニセミナー診療報酬改定セミナー2026

クリニカルパスを適用すべき患者かどうかの確認を、パニック値放置が生じないようチーム医療体制構築を―医療機能評価機構

2026.1.2.(金)

昨年(2025年)4-6月に報告された医療事故は1389件、ヒヤリ・ハット事例は2894件であった。医療事故のうち6.1%では患者が死亡しており、11.7%では死亡にこそ至らないまでも「障害残存」の可能性が高い—。

こういった状況が、日本医療機能評価機構が12月25日に公表した「医療事故情報収集等事業」の第83回報告書(昨年(2025年)7-9月が対象)から明らかになりました(機構のサイトはこちら)(前四半期(2025年4-6月)を対象にした第82回報告書に関する記事はこちら)。

また報告書では、「クリニカルパス/クリティカルパスに関連した事例」や「医師に血液検査のパニック値の連絡をしたが未対応となった事例」を詳細に分析し、改善策を提示しています。クリニカルパスには「標準化による医療事故防止」という大きなメリットもありますが、個々の患者の状態等を十分に勘案せずに安易に適用し「禁忌、アレルギー薬を投与してしまう」ケースも発生しています。また、ベテラン医師が「検査部から報告されたパニック値」を放置してしまうケースも報告されています。「電子カルテ情報を十分に確認し、チームで患者に対応する」ことが重要と機構は提言しており、各医療機関で「自院にマッチした再発防止策」を構築・周知する必要があります。

多くの医療行為で重大な医療事故(死亡など)も発生している点に留意を

日本医療機能評価機構は、全国の医療機関から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故には至らなかったものの担当医療スタッフ等が「ヒヤリ」とした、「ハッ」とした事例)の報告を受け、背景等を詳しく分析して「事故等の再発防止に向けた提言」等を定期的に行っています【医療事故情報収集等事業】(国立病院や特定機能病院などでは事故等の報告が義務付けられている)。

昨年(2025年)7-9月に報告された医療事故は1389件でした。

事故の程度別に見ると、▼死亡:85件・事故事例の6.1%(前四半期に比べて0.3ポイント増)▼障害残存の可能性が高い:163件・同11.7%(同2.2ポイント減)▼障害残存の可能性が低い:445件・同32.0%(同1.7ポイント減)▼障害残存の可能性なし:337件・同24.3%(同1.8ポイント減)―などとなりました。中長期的に眺めていく必要があります。

医療事故の概要を見ると、最も多いのは「治療・処置」の500件・36.0%(前四半期に比べて1.3ポイント増)。次いで、「療養上の世話」の474件・34.1%(同0.9ポイント増)、「薬剤」の112件・同8.1%(同1.0ポイント減)、「検査」の81件・同5.8%(同0.7ポイント増)、「ドレーン・チューブ」の71件・同5.1%(同1.6ポイント減)などと続きます。多くの医療行為で「事故」が生じており、確認手順などを常に検証・改善することが重要です。

医療事故の状況(医療事故情報収集等事業第83回報告書1 251225)

ヒヤリ・ハット事例、依然として「様々な場面で発生」しており、最大限の留意を

ヒヤリ・ハット事例(事故には至らなかったものの、ヒヤリとした、ハッとした事例)に目を移すと、昨年(2025年)7-9月の報告件数は2894件。内訳を見ると、依然として「薬剤」関連の事例が最も多く997件・ヒヤリ・ハット事例全体の34.5%(前四半期と比べて5.0ポイント減)を占めています。次いで「療養上の世話」788件・同27.2%(同4.5ポイント増)、「ドレーン・チューブ」312件・同10.8%(同0.8ポイント減)などと続いています。

ヒヤリ・ハット事例を「仮に実施してしまっていた場合の患者への影響度」を見ると、「軽微な処置・治療が必要、もしくは処置・治療が不要と考えられる」事例が91.4%(前四半期から2.1ポイント減)と、大部分を占めている状況にも変化はありません。

しかし、「濃厚な処置・治療が必要と考えられる」ケースも7.8%(同2.2ポイント増)、さらに「死亡・重篤な状況に至ったと考えられる」ケースも0.8%(同増減なし)あります。一部にとどまってはいますが、「一歩間違えば重大な影響が出ていた」事例が生じている点を重く見て、「すべての医療機関において院内のチェック体制を早急に点検しなおす」必要があります。

ヒヤリ・ハット事例の状況(医療事故情報収集等事業第83回報告書2 251225)



なお、その際には、Gem Medで繰り返しお伝えしているように「個人の注意だけで医療事故やヒヤリ・ハット事例を防止することはできない」点に留意しなければなりません。どれだけ注意深く業務を行っても、人は必ずミスを犯します。とりわけ、極めて多忙な業務環境にある医療従事者はミスが生じやすい状況に置かれており、こうした中では、「ペナルティの導入」などには意味がなく(効果がない)、かえって弊害のほうが大きくなると危機管理の専門家は指摘します。

「人は必ずミスを犯す」という前提に立ち、「必ず複数人でチェックする」「ミスが生じる前に、あるいは生じた場合には、すぐに気付ける仕組みを構築する」「また包み隠さず報告できるような、院内のルールを遵守し、医療安全を確保し、医療の質を向上させようという、風土を作り上げる」など、医療機関全体で対策を講じることが必要です。

もっとも「複数人でのチェック」には大きな落とし穴がある点にも留意が必要です。A・Bの2人でチェックをする際に、Aさんは「Bさんがチェックをするので『だいたい』で良かろう」と、Bさんは「Aさんがチェックをしているので『だいたい』で良かろう」と考えてしまうことが少なからずあります。この場合には「1人でのチェック」よりも甘くなってしまいます。こうした点も十分に認識したうえで、慎重に「複数チェック」を導入する必要があるでしょう(関連記事はこちらこちらこちら)。

クリニカルパスに沿った投薬が「禁忌・アレルギー薬の投与」であったケースも

報告書では毎回テーマを絞り、医療事故の再発防止に向けた詳細な分析を行っています。今回は▼クリニカルパス/クリティカルパスに関連した事例▼医師に血液検査のパニック値の連絡をしたが未対応となった事例—を詳細に分析し、改善策を提示しています。

前者のクリニカルパス/クリティカルパス(以下、クリニカルパス)は「治療や検査の標準的な経過について、入院中の予定をスケジュール表のようにまとめた計画書」と言えます。「入院〇日目に●●を行い、入院◇日目に◆◆を行う」という具合にスケジュールが明確化されているため、患者にとって「今日はどのような治療が行われるのか」を確認でき、安心感につながるというメリットがあるほか、医療者が「業務が明確化される→多職種が共通の治療計画を共有できる」ため、医療事故の防止にも極めて有用です。

しかし、「クリニカルパスの適用中に『個別の患者の状態に適していない薬剤』を投与してしまった」「クリニカルパスに組み込まれていなかったため、適切なケアが提供されなかった」といった事例も2024年1月から2025年9月の間に44件も報告されていることが分かりました。

具体的な事例をいくつか見てみると、▼クリニカルパスに記載された薬剤が当該患者に不適切であったが、確認不足等で投与してしまった(アレルギー・禁忌の薬剤を投与、腎機能障害がある患者に適さない薬剤の投与など)▼必要な薬剤投与がクリニカルパスに記載されていなかったために、投与がなされなかった―事例などが目立ちます。

このうち「アレルギー・禁忌の薬剤の投与」としては、疼痛時指示の薬剤や抗菌薬などが多く、「アレルギー・禁忌の情報が電子カルテに登録されていた」ものの、投与を防ぐことができなかったことが分かりました。機構では、電子カルテシステムにおいて、クリニカルパスの指示に関して「アレルギー・禁忌のアラート」の仕組みがない場合には、医師がクリニカルパスを適用する際や看護師が薬剤を投与する「前」にアレルギー・禁忌の情報を確認することが必要と提案しています。

また、「腎機能障害がある患者に適さない薬剤の投与」について機構では、▼クリニカルパスを適用する時点で患者の状態を確認し、クリニカルパスを適用すべきか否かを判断する▼クリニカルパスを作成する際や見直す際には、薬剤師が関わって薬剤に関する除外基準について検討しておく―ことなどを提言しています。

クリニカルパスには、上記のような大きなメリットがあるものの、「安易な運用、適用」は個々の患者の状態に照らして「不適切なもの」となってしまうケースもあることに留意し、▼医療安全部門とクリニカルパスの担当部門が連携し、より安全なクリニカルパスの作成・運用に向けて取り組む▼クリニカルパスを適用すべき患者か否かを適切に判断する(治療中の状態変化にも留意し、適宜、適用すべきか否かをチェックする)—といった取り組みが重要でしょう。「クリニカルパス関連」事例の分析は、次回報告書(2025年10-12月を対象とする第83回報告書、2026年6月下旬公表見込み)でも行われます。

ベテラン医師が「報告されたパニック値」を放置してしまうケースも

後者の「医師に血液検査のパニック値(緊急異常値、緊急報告値などの呼び方もある)の連絡をしたが未対応となった事例」は、2019年1月から2025年9月までに7件報告されています。

グルコース(血糖値)に関する事例が多くなっていますが、ほかにもカリウム(K)、カルシウム(Ca)、クレアチニン、PT-INRに関する事例も報告されています。

また、少々驚くのが、未対応であった医師の経験年数が「10-14年目」3件、「15-19年目」1件、「20年以上」 3件と、ベテランが多い点です。

事例の背景を眺めると、▼検査をオーダした病棟チーフ医師がパニック値の連絡を受けたが、「多忙な外来主治医への連絡は申し訳ない」と思い、また「外来受診時に検査結果を見て気付くだろう」と考え、パニック値の連絡があったことを外来主治医に伝えなかった▼院内でパニック値に対応する診療体制があったが、医師がそれを知らず、対応もしていなかった▼検査をオーダした医師が多忙で、臨床検査技師から報告を受けた記憶がなかった▼臨床検査技師は「異常値」として伝えたが、医師に危機感が共有されなかった▼連絡を受けた医師はグルコース値を意識しておらず、診療記録に検査結果を記載する際もグルコース値を記載していなかった―など様々です。

機構では、次のような再発防止策を提言しています。各医療機関で、提言内容を参考に「自院にマッチした事故防止策」を構築することが重要です(関連記事はこちら(医療安全調査機構の提言)こちら(報告し忘れた事例))。

【パニック値の項目の検討】
▽臨床検査技師が「パニック値として報告する項目」をスリム化し、検査をオーダした医師に緊急アラートが届きやすくする

【医師への連絡方法】
▽「パニック値の連絡をしても伝わらない」可能性を想定して、医師への連絡内容の記録を残しておく
▽パニック値を連絡した際、臨床検査技師は検査をオーダした医師へ「必ず復唱」を求め、検査をオーダした医師はパニック値の項目とその数値を「必ず復唱」する

【パニック値の連絡を受けた際の対応】
▽主治医「以外」の検査をオーダした医師がパニック値の連絡を受けた場合は、その医師は主治医へ確実に情報を伝達する
▽医師は、パニック値の連絡を受けた際に「医療者複数人で共有」し、治療方針を確認する
▽医師は、パニック値に対して対応したことを診療録へ記録する

【パニック値に対応する診療体制】
▽パニック値が報告された場合の院内の診療体制についてあらためて周知する(失念していた事例が複数報告されている)
▽医師だけでなく、「患者に関わる看護師や薬剤師なども検査値や病歴を確認する」など、チームで対応できるような体制を作る

【報告に対応したかを確認する仕組みの構築】
▽臨床検査技師はパニック値を報告した後、「検査をオーダした医師に情報が伝わったか」「患者に然るべき対応が行われたのか」を電子カルテの経過記録で確認し、「当日夕方までに対応を行った」経過記録がない場合は、再度、同医師に「電話で」連絡する(メール等では見落とす可能性がある)
▽検査部は、診療情報管理室に「パニック値の報告・対応一覧」の抽出を依頼し、検査部で管理している「検査結果報告リスト」と照合し、対応の有無を確認する
▽検査部で「パニック値であることを報告した患者」の診療録を確認し、対応がなされたかどうかを確認する
▽ある病院の消化器内科では、「パニック値の報告・対応のテンプレート」を作成して記録を残し、臨床検査技師が報告したパニック値に対して患者に何らかの対応または経過観察との判断がされたか否かを追って確認することにした。テンプレートの内容や記載状況も含めて評価し、将来的には「院内共通のルール」にできないかを検討する

【検査結果画面の改善】
▽電子カルテの検査結果の画面で、「一目でパニック値であることがわかる」(目立つ色にするなど)ようにする

【その他】
▽外来診察時、外来主治医は「全ての検査結果が出揃ってから診察する」ことを徹底する
▽糖尿病の既往がある患者に化学療法を行う場合は、治療前に糖尿病科にコンサルトを行い、入院時採血のデータ確認やパニック値の連絡時に適切に対応する



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2018年に報告された医療事故は4565件、うち7%弱で患者が死亡、PFM導入などの防止策を―日本医療機能評価機構
予定術式と異なる手術を実施し再手術不能のケースも、患者を含めた関係者間での情報共有徹底を―医療機能評価機構
抗がん剤の副作用抑えるG-CSF製剤、投与日数や投与量の確認を徹底せよ―医療機能評価機構
小児への薬剤投与量誤り防止など、現時点では「医療現場の慎重対応」に頼らざるを得ない―医療機能評価機構

2017年に報告された医療事故は4095件、うち8%弱の318件で患者が死亡―日本医療機能評価機構
2017年10-12月、医療事故での患者死亡は71件、療養上の世話で事故多し―医療機能評価機構
誤った人工関節を用いた手術事例が発生、チームでの相互確認を―医療機能評価機構
2016年に報告された医療事故は3882件、うち338件で患者が死亡―日本医療機能評価機構
手術室などの器械台に置かれた消毒剤を、麻酔剤などと誤認して使用する事例に留意―医療機能評価機構
抗がん剤投与の速度誤り、輸液ポンプ設定のダブルチェックで防止を―医療機能評価機構
2016年7-9月、医療事故が866件報告され、うち7%超で患者が死亡―医療機能評価機構
2015年に報告された医療事故は3654件、うち1割弱の352件で患者が死亡―日本医療機能評価機構
2016年1-3月、医療事故が865件報告され、うち13%超は患者側にも起因要素―医療機能評価機構
15年4-6月の医療事故は771件、うち9.1%で患者が死亡―医療機能評価機構
14年10-12月の医療事故は755件、うち8.6%で患者死亡―医療事故情報収集等事業