シリンジポンプの「単位」設定を誤り、麻酔薬や鎮静剤を過量投与などしてしまう医療事故が散発—医療機能評価機構
2023.8.17.(木)
シリンジポンプの「μg/kg/min」や「mg/kg/h」などの単位選択を間違えたため、意図しない流量で薬剤を投与してしまった—。
日本医療機能評価機構が8月16日に公表した「医療安全情報 No.201」から、こうした事例(医療事故)が依然として発生しており、2017年1月1日から本末(2023年)6月末までの間に8件報告されていることが分かりました(機構のサイトはこちら)。
シリンジポンプ使用の際には数量の「数字」確認はもちろん、「単位」設定の確認を!
日本医療機能評価機は、全国の医療機関から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故には至らなかったものの担当医療スタッフ等が「ヒヤリ」とした、「ハッ」とした事例)の報告を受け、背景等を詳しく分析して「事故等の再発防止に向けた提言」等を定期的に行っています【医療事故情報収集等事業】(国立病院や特定機能病院などでは事故等の報告が義務付けられている、本年(2023)年1―3月を対象とした第73回報告書に関する記事はこちら)。
さらに事故事例などの中から「特段の注意が必要と考えられる事例」(繰り返し発生している医療事故など)を毎月ピックアップ。簡潔に整理し「医療安全情報」として公表しています。医療現場に「こうした事故が頻発しているので最大限の注意を払ってほしい」と強く呼びかけるものです。
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8月16日に公表された「医療安全情報No.201」では、「シリンジポンプの単位選択間違い」事例がテーマに取り上げられました。
ある病院において手術を行う際、麻酔担当医は全身麻酔用鎮痛薬「レミフェンタニル塩酸塩」を「0.05μg/kg/min」(体重1kgあたり、1分間に0.05μg)で投与を開始する予定でした。しかし、シリンジポンプの単位を設定する際、誤って「mg/kg/hr」を選択し、「0.05mg/kg/hr」(体重1kgあたり1時間に0.05mg)で開始してしまいました。シリンジポンプには「31mL/h」(1時間に31mL)との表示もありましたが、麻酔担当医は見ていませんでした。麻酔薬投与開始直後に、患者の眼球が上転し、SpO2が60%台まで低下したことから、「16.7倍の過量投与」となっていたことが分かりました(「0.05mg/kg/hr」は「0.83μg/kg/min」に該当し、投与予定「0.05μg/kg/min」の16.7倍になる)。
また別の病院では、人工呼吸管理中の患者をプロポフォールで鎮静する際、医師の指示は「5.5mL/h」(1時間に5.5mL)でしたが、日勤看護師Aは単位を「mg/kg/h」(1時間に体重1kgあたり●mg)と思い込んでしまいました。このため看護師Aはシリンジポンプの単位が「mg/kg/h」であることを確認した後、「5.5」と入力しました。シリンジポンプには「20mL/h」(1時間の20mL、医師指示の3.6鼻)であることも併せて表示されていたが、看護師Aは誤りに気付かず投与を開始しました。1時間半後、夜勤看護師Bが訪室した際に流量の誤りに気付き、投与を中止して医師に報告。約3.6倍の流量で投与されており、患者の血圧が低下していました。
事例にもあるように、薬剤の投与量誤りは深刻な健康被害につながり、場合によっては生命の危機にも直結します。このため機構では、▼単位を変更できるシリンジポンプを設定する際は、投与量の数値だけでなく「単位」も確認する▼設定後、シリンジポンプに表示されている流量(mL/h)を確認してから開始する—などの対応を徹底するよう呼び掛けています。
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