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手術時に薬剤を入れた容器を取り違え、誤って高濃度のアドレナリンを局所注射してしまう事故が散発―医療機能評価機構

2022.10.19.(水)

手術時に薬剤を入れた容器を取り違え、誤って高濃度のアドレナリンを局所注射してしまい、患者の循環動態に影響を及ぼしてしまった—。

日本医療機能評価機構が10月17日に公表した「医療安全情報 No.191」から、こうした事例(医療事故)が2019年1月1日から今年(2022年)8月末までの間に3件報告されていることが分かりました(機構のサイトはこちら)。

手術時に薬剤を入れた容器を取り違え、誤って高濃度のアドレナリンを局所注射してしまい、患者の循環動態に影響を及ぼしてしまう事例が散発(医療安全情報191 221017)

「初めて経験する処置」「手技を十分理解していない処置」は、指導者の教育下で実施を

日本医療機能評価機は、全国の医療機関から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故には至らなかったものの担当医療スタッフ等が「ヒヤリ」とした、「ハッ」とした事例)の報告を受け、背景等を詳しく分析して「事故等の再発防止に向けた提言」等を定期的に行っています【医療事故情報収集等事業】(国立病院や特定機能病院などでは事故等の報告が義務付けられている、本年(2022)年4―6月を対象とした第70回報告書に関する記事はこちら、昨年(2021年)1年間を対象とした2021年報に関する記事はこちら)。

さらに事故事例などの中から「特段の注意が必要と考えられる事例」(繰り返し発生している医療事故など)を毎月、ピックアップ。その内容を簡潔に整理し「医療安全情報」として公表しています。医療現場に「こうした事故が頻発しているので最大限の注意を払ってほしい」と強く呼びかけるものです。

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電子カルテの誤入力
ガーゼの体内残存2
ガーゼの体内残存1



10月17日に公表された「医療安全情報No.191」では、「容器を取り違えてしまい、高濃度アドレナリンの局所注射をしてしまった」事例がテーマとなりました。

ある病院で看護師が、清潔野において▼「1%Eキシロ+生食」のラベルを貼った薬杯に局所麻酔剤のキシロカイン調製液(アドレナリン20万倍)▼「外用ボスミン」のラベルを貼った薬杯に手術時の局所出血の予防・治療などに用いるボスミン外用液0.1%(アドレナリン1000倍)—を準備しました。医師は、まずキシロカイン調製液で局所麻酔を実施。看護師が「次はボスミンに浸したガーゼを使う」ものと思い、「外用ボスミン」の薬杯を手前に置きました。医師からは「再度、局所麻酔剤の指示」がありましたが、看護師は薬杯の側面ラベルを確認せず、手前に置いていた薬杯から薬液を注射器に吸って医師に渡しました。医師が合計 4mLを注射後、患者の血圧が230/130mmHg、心拍数が130回/分まで上昇し、モニタでPVC散発、 ST低下が認められました。そこで看護師は「誤ってボスミン外用液0.1%を渡し、医師が注射してしまった」ことに気付きました。



また別の病院では、看護師が▼キシロカイン調製液(アドレナリン30万倍)▼ボスミン外用液0.1%(アドレナリン1000倍)—を同じ形状のシャーレに入れ、器械台に準備しました。2つのシャーレは離して置かれ、キシロカイン調製液のシャーレの蓋に薬剤名が表示されていました。手術開始後、医師から「ボスミン綿球」の指示があり、看護師はボスミン外用液0.1%のシャーレをキシロカイン調製液のシャーレの「隣」に置きました。その後、医師から局所麻酔剤の指示があり、看護師はシャーレの薬液を吸って医師に渡しました。医師が4mLを注射した後、患者の血圧が270mmHgまで上昇したことから、看護師は「誤ってボスミン外用液0.1%を渡してしまった」ことに気付きました。



本事例に限らず「薬剤の取り違え」事例は、全国の医療機関で少なからず生じており、場合によっては致命的な事態を引き起こしてしまうため、再発防止策をしっかりととることが重要です。

事故防止のために、機構では、例えば▼清潔野に局所麻酔剤とアドレナリン製剤を準備する際は、容器の形状を変え、見やすいところに薬剤名を表示する▼容器の形状や色を変えることを検討し、院内でルールを決める—ことなどを推奨しています。これらを参考に「自院にマッチしたルール(手順)を構築していく」ことが重要です。



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