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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

統合失調症等の治療薬「セレネース」と、麻酔薬「サイレース」とを取り違える医療事故が散発―医療機能評価機構

2022.1.17.(月)

統合失調症やそう病の治療に用いる「セレネース注」と、全身麻酔の導入・局所麻酔時の鎮静に用いる「サイレース静注」を取り違え、患者に投与してしまった―。

日本医療機能評価機構が1月17日に公表した「医療安全情報 No.182」から、こうした事例(医療事故)が2016年1月1日から昨年(2021年)11月末までの間に6件報告されていることが分かりました(機構のサイトはこちらこちら)。

定数配置薬から「サイレース静注」を除くことも選択肢の1つ

日本医療機能評価機では、全国の医療機関から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故には至らなかったものの担当医療スタッフ等が「ヒヤリ」とした、「ハッ」とした事例)の報告を受け、背景等を詳しく分析して「事故等の再発防止に向けた提言」等を定期的に行っています【医療事故情報収集等事業】(国立病院や特定機能病院などでは事故等の報告が義務付けられている、2021年度の第1四半期(2021年4―6月)の報告書に関する記事はこちら)。

また事故事例などの中から「特段の注意が必要と考えられる事例」(繰り返し発生している医療事故など)をピックアップ。その内容を簡潔に整理し「医療安全情報」として毎月公表しています。医療現場に「こうした事故が頻発しているので最大限の注意を払ってほしい」と強く呼びかけるものです。

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電子カルテの誤入力
ガーゼの体内残存2
ガーゼの体内残存1



1月17日に公表された「医療安全情報No.182」では「セレネース注とサイレース静注の取り違え」事例がテーマとなりました。

ある病院で、ICU当直医が、統合失調症やそう病の治療に用いる「セレネース注」を患者に投与するよう看護師に口頭で指示を出しました。しかし、看護師は指示された「セレネース注」を、麻酔薬の「サイレース静注」と思い込み、鍵のかかった薬品庫から取り出しました。ICU当直医は電子カルテの注射指示に「セレネース注1A+生理食塩液9mLのうち5mL IV」と入力しましたが、看護師はそれを見ていませんでした。看護師は取り出したサイレース静注1A+生理食塩液9mLを 調製し、静脈注射しました。その後、患者はSpO2が74%まで低下したため、BiPAPマスクを装着しました。勤務交代後、リーダー看護師が薬品庫の薬剤を確認したところ「サイレース静注」の数が減っており「誤って『サイレース静注』を投与した」ことに気付いたといいます。

統合失調症等治療薬の「セレネース注」と麻酔薬の「サイレース静注」を取り違える事故が散発(医療安全情報182 220117)



別の病院では、看護師Aが電子カルテで「セレネース注投与の頓用指示」を確認。看護師Bに「セレネース注はどこにあるか」聞いたところ、看護師Bが「セレネース注」と「サイレース静注」とを勘違いし「鍵のかかった薬品庫にある」と答えました。看護師Aも「セレネース注」を「サイレース静注」と思い込み、薬品庫から取り出し、サイレース静注1A+生理食塩液100mLを調製。輸液ボトルに「患者氏名」および「サイレース 静注1A」と記載し患者に投与しました。その後、患者のSpO2低下のアラームが鳴ったため訪室すると、チアノーゼ、顔面蒼白が認められたため当直医に報告。当直医が輸液ボトルを見た際に「サイレース静注が投与されている」ことに気づきました。



名称が類似していることに起因する事故と言え、従前から同様の事故が数多く報告されています。

機構では、▼定数配置薬から薬剤を準備する際は「指示」と「アンプルのラベル」で薬剤名を確実に照合する▼「サイレース静注」は定数配置薬から除くことを検討する―などの取り組みを行うようアドヴァイスしています。

なお、事例では「セレネース注」と「サイレース静注」と勘違いしてしまっており、「指示」と「ラベル」との確認を行っても「誤っていない」と判断してしまう可能性もあります。この場合、後者の「サイレース静注を定数配置薬から除外する」という選択肢も一考に値すると思われます。もちろん「自院にマッチした取り組み」が重要であり(無理な取り組みは通常診療に支障を来し、別の事故を誘発する危険もある)、院内の複数の部署・部門で「取り違え防止のためにどういった対策が有用か」を現場目線で考えることが重要でしょう。



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