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診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

看護師が薬剤をPTPシートのまま渡し、患者がシートのまま誤飲する事例が依然として頻発―医療機能評価機構

2021.8.17.(火)

看護師が薬剤をPTPシートから取り出さずに患者に渡し、患者がシートのまま誤飲してしまった―。

日本医療機能評価機構が8月16日に公表した「医療安全情報 No.177」から、こうした事例(医療事故)が2016年7月1日から今年(2021年)6月末までの間に、実に52件も報告されていることが分かりました(機構のサイトはこちらこちら)。従前から頻発し、注意喚起が呼びかけられていますが、依然として「看護師がPTPシートのまま薬剤を患者に渡し、患者がシートのまま誤飲する」事例が少なくありません(52例中、32例)。改めての注意が必要です。

患者には、PTPシートから取り出して、薬剤を渡すようにすべきである(医療安全情報177.1 210816)

看護師は、「PTPシートから薬剤を取り出して、患者に渡してほしい

日本医療機能評価機は、全国の医療機関から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故には至らなかったものの、担当医療スタッフ等が「ヒヤリ」とした、「ハッ」とした事例)の報告を受け、背景等を詳しく分析した上で、「事故等の再発防止に向けた提言」等を定期的に行っています【医療事故情報収集等事業】(国立病院や特定機能病院などでは事故等の報告が義務付けられている、2020年報に関する記事はこちら)。

あわせて機構では、事故事例などの中から、「特段の注意が必要と考えられる事例」(繰り返し発生している医療事故など)をピックアップ。その内容を簡潔にまとめて「医療安全情報」として、毎月公表しています。医療現場に最大限の注意を払うよう強く呼びかけるものです。

【最近の医療安全情報に関する記事】
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電子カルテの誤入力
ガーゼの体内残存2
ガーゼの体内残存1



8月16日に公表された「医療安全情報No.177」では、従前より問題視されている「患者にPTPシートのまま薬剤を手渡し、患者がシートごと飲んでしまう」事例がテーマとなりました。

ある病院で、看護師が、入院患者に抗てんかん剤の「イーケプラ錠」と制酸剤の「酸化マグネシウム錠」を渡しました。同院では「薬剤をPTPシートから取り出して渡す」ルールがありましたが、患者から「薬はもう少ししてから飲む」と言われたため、看護師はPTPシートのまま容器に入れて渡しました。患者は70歳代でしたが、受け答えには問題がなかったといいます。看護師が10分後に訪室すると、患者が「シートごと飲んでしまった」と言ったため、X線・CT検査。食道にPTPシートが認められ、上部消化管内視鏡で摘出することができました。



別の病院に入院していた患者は70歳代でしたが、認知機能の低下はなく、いつも薬剤をPTPシートから取り出して内服していました。 準夜帯の看護師は、PTPシートの「ブロチゾラム錠」(睡眠導入剤)と、分包から取り出した「ニバジール錠」(高血圧症治療約)を容器に入れてこの患者に渡しました。患者は、「容器にはPTPシートから取り出された薬剤が入っている」と思い込み、服用してしまいました。翌朝、 患者から「喉のあたりがチクチクする」との訴えがあり、X線・CT検査をしたところ、食道にPTPシートが認められ、上部消化管内視鏡で摘出することができました。



類似の事例は、従前から頻繁に生じており、機構でも過去に2度「医療安全情報」で注意喚起を行っていますが、後を絶ちません。しかも、患者の年齢や認知機能に関わらず、こうした誤飲事故が発生しています。

機構では改めて、▼切り離したPTPシートは「誤飲の危険性がある」ことを院内で周知する▼看護師は、薬剤をPTPシートから取り出して患者に渡す―ことを各医療機関で徹底することを強く求めています(もちろん、自施設にマッチした取り組みの実施が重要)。

あわせて、患者向けに「薬を飲むときは包装シートから取り出してください」と注意喚起する資料も公表。何らかの事情でPTPシートのまま患者に薬剤を渡す場合でも、患者が「シートのまま飲んではいけない」と気づけるような工夫を行うことも重要です。

患者にも「PTPシートのまま薬剤を飲んではいけない」ことを注意喚起する必要がある(医療安全情報177.2 210816)



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