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新型コロナ対策 症例Scope

患者の持参薬をスタッフが十分把握等せず、「投与継続しなかった」医療事故が発生―日本医療機能評価機構

2021.7.6.(火)

昨年(2020年)1年間に報告された医療事故は4802件あり、うち6.7%の320件では患者が「死亡」している。また、同じく2020年の1年間に報告されたヒヤリ・ハット事例は95万件超で、そのうち1.1%は、仮に誤った行為を実施すれば「死亡」などの重大事故につながった可能性がある―。

このような状況が、日本医療機能評価機構が6月28日に発表した2020年の「医療事故情報収集等事業」の年報から明らかになりました(機構のサイトはこちら)(2019年の状況に関する記事はこちら、2018年の状況に関する記事はこちら、2017年の状況に関する記事はこちら、2016年の状況に関する記事はこちら)。

また年報では、「持参薬」に起因する医療事故事例なども詳しく分析しています。

2020年度は医療事故報告件数が増加、重度事例が若干減少している

日本医療機能評価機構では、医療安全の確保に向け、医療機関で発生した医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故には至らなかったがヒヤリとした、ハッとした事例)を収集・分析する「医療事故情報収集等事業」を実施し、定期的にその内容を公表しています。

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ガーゼの体内残存2
ガーゼの体内残存1



昨年(2020年)に報告された医療事故の状況を見てみると、件数は合計で4802件(うち国立病院など報告義務のある医療機関に限ると4321件で、前年から272件・6.7%増)となりました。

事故全体を程度別に見ると、「死亡」が320件(事故事例の6.7%、前年比べて0.3ポイント減)、「障害残存の可能性が高い」ものが463件(同9.6%、同0.6ポイント減)、「障害残存の可能性が低い」ものが1370件(同28.5%、同1.4ポイント減)、「障害残存の可能性なし」が1213件(同25.3%、同1.5ポイント減)などとなっています。前年に比べて、重度事故が減少しているようですが、中長期的に見ていく必要があるでしょう。

医療事故の概要を見てみると、最も多いのは「療養上の世話」で1578件(事故全体の32.9%、前年から1.9ポイント減)、次いで「治療・処置」1513件(同31.5%、同3.2ポイント増)、「ドレーン・チューブ」393件(同8.2%、同0.2ポイント増)「薬剤」387件(同8.1%、同0.5ポイント増)などと続きます。「治療・処置」に関する事故の増加が目立ちます。

2020年に報告された医療事故事例の概要(医療事故情報収集等事業2020年報1 210628)



事故に関連した診療科(複数回答が可能)を見ると、これまでと同様に整形外科が最も多く全体の11.9%(前年から0.5ポイント減)を占めています。ほか、外科の7.5%(同0.3ポイント減)、循環器内科の6.8%(同0.1ポイント減)、消化器科の6.8%(同0.4ポイント増)、内科の6.6%(同0.5ポイント増)などで多くなっており、上位診療科の順位に変化はありません。

ヒヤリ・ハット事例は95万件超に増加、医療現場の透明性確保が進む

次にヒヤリ・ハット事例を見てみましょう。昨年(2020年)1年間に報告されたヒヤリ・ハット事例は合計95万66件で、前年に比べて5000件弱の増加となりました。ただし「ミスが増加している」というよりも、「ミスを医療現場で適切に把握し、包み隠さずに報告している」、つまり「透明性が増している」と考えるべきで、報告件数の増加は「好ましい」方向に動いていると考えられます。

内訳を見ると、「薬剤」が最も多く30万4514件(ヒヤリ・ハット事例全体の32.1%、前年に比べて0.1ポイント減)、次いで「療養上の世話」20万7355件(同21.8%、同増減なし)、「ドレーン・チューブ」13万9759件(同14.7%、同0.2ポイント減)などで多くなっています。これまでと比べても、構成割合などに目立つ変化はなさそうです。

「ヒヤリとした、ハットした」にとどまり、実際に患者に誤った行為などをしていないケースが全体の3分の1強に当たる33万1955件あります。これらについて、「仮に誤った行為を実施してしまった」場合の影響を推測すると、「死亡」もしくは「重篤な状況」に至ったであろう重大なミスは3662件・1.1%(前年から0.3ポイント減)、「濃厚な処置・治療が必要になった」と思われる中程度のミスは2万2137件・6.7%(同0.7ポイント減)となっています。大きなミスが減少しているように見えますが、「十分な注意」「1人がミスをしても他者が気づき、リカバリーできる体制づくり」などの重要性はいささかも減っていません。

2020年に報告されたヒヤリ・ハット事例の概要(医療事故情報収集等事業2020年報2 210628)

「持参薬に起因する医療事故」を詳しく分析

年報では、具体的な医療事故をクローズアップして背景など分析。再発防止策などを提言しています。2020年報では、次の3つの事故事例を詳しく調査・分析(現地状況確認調査)しています。
(1)添付文書の用法・用量を逸脱してフィコンパ錠を開始・増量した事例
(2)手技練習用の製剤を皮下注射した事例
(3)入院後、持参薬のオプスミット錠の投与を継続しなかった事例



Gem Medでは、このうち(3)の「入院後、持参薬のオプスミット錠の投与を継続しなかった事例」に注目してみます。

オプスミット錠(一般名:マシテンタン)は、肺動脈性高血圧症の治療に用いる薬剤です。

ある患者に退院時処方として同剤が出されました。次回の入院の際に、患者は同剤と他の薬剤を持参したため、薬剤科で「持参薬鑑別書」と「持参薬指示書」が作成され、後者には主治医が「オプスミット錠の継続」を指示。看護師も指示書に従って、同剤の内服管理を行いました。

同院では、オプスミット錠を採用していなかったことから、主治医が個別購入を依頼し、同剤が納品されました。看護師から「持参薬のオプスミット錠がまだ残っている」旨の報告があったため、主治医は同剤の処方を行いませんでした。結果、「同剤の無投与」状態が生じてしまい、患者の呼吸状態が悪化しBiPAP装着による呼吸管理をするに至りました。

事例の背景には、▼持参薬から院内処方に切り替える時には、処方の際に「持参薬指示書からの切り替え」のコメントにチェックを入れることになっていたが、主治医が入れていなかった▼主治医の「持参薬指示書からの切り替え」にチェックが入っていなかったため、薬剤師が「持参薬からの切り替え」と気付かず、院内処方と持参薬鑑別書を照合しなかった▼看護師が持参薬の剤数などを正確に把握できていなかった―など、複合的な要因が重なっていることが分かりました。

高齢化が進展する中では、急性期病棟でも高齢の入院患者が増え、「持参薬」のある患者が増加しています。そうした状況においては、事例のような医療事故が起こる可能性は、どの病院でもあります。

事故が発生した病院では、▼入院後、定期処方するタイミングで持参薬を「全て院内処方に切り替える」ように医師に依頼する▼看護師がセットした1週間分の薬剤を病棟薬剤師が確認することにする▼個別購入した薬剤が依頼から1週間経っても処方されない場合、薬剤師は医師に確認することにする―などの改善策をとっています。

事例を参考に、各病院において「自院にマッチした事故防止策」を検討・作成・実施することが重要です。ただし、「院内ルールの作成」だけでは十分とは言えません。ルールを遵守する風土(「まあ、いいか」を避ける風土)を院内で醸成していくことも非常に重要です。



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