インスリン投与後、経腸栄養剤のルート未接続等で患者が「低血糖」を来す事例散発―医療機能評価機構
2021.5.17.(月)
インスリン投与後、経腸栄養剤のルート未接続や開始忘れなどにより、患者が低血糖を来してしまった―。
日本医療機能評価機構が5月17日に公表した「医療安全情報 No.174」から、こうした事例(医療事故)が2017年1月1日から今年(2021年)3月末までの間に6件も報告されていることが分かりました(機構のサイトはこちらこちら)。
経腸栄養剤のルート接続確認の誤に、滴下を開始せよ
日本医療機能評価機では、全国の医療機関から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故には至らなかったものの、担当医療スタッフ等が「ヒヤリ」とした、「ハッ」とした事例)の報告を受け、背景等を詳しく分析した上で、「事故等の再発防止に向けた提言」等を定期的に行っています【医療事故情報収集等事業】(国立病院や特定機能病院などでは事故等の報告が義務付けられている)。
あわせて事故事例などの中から、「特段の注意が必要と考えられる事例」(繰り返し発生している医療事故など)をピックアップ。その内容を簡潔にまとめて「医療安全情報」として、毎月公表しています。医療現場に最大限の注意を払うよう強く呼びかけるものです。
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5月17日に公表された「医療安全情報No.174」では、「インスリン投与後、経腸栄養剤のルート未接続や開始忘れなどにより、患者が低血糖を来してしまった」事例がテーマとなりました。
ある病院で、看護師が、糖尿病治療薬の「ノボラピッド注」22単位を患者に皮下注射した後、経腸栄養剤の滴下を開始いました。1時間半後、シーツに経腸栄養剤が漏れていることに気づき、接続部を確認すると、「経腸栄養剤のルートを経鼻栄養チューブに接続していなかった」ことが分かりました。患者の血糖値が低下しており、急遽20%ブドウ糖液を投与しています。
また別の病院では、看護師Aが患者の血糖を測定し、看護師Bが糖尿病治療薬の「ノボラピッド注」10単位を皮下注射しました。 その後、看護師Aは経腸栄養剤の注入を忘れてしまいました。3時間後、主治医の回診時に患者の意識レベルが低下していたことから、血液検査とCT検査を実施。血糖値が11mg/dL(標準値は空腹時に60-110mg/dL、食後に100-140mg/dL)であり、「経腸栄養剤が注入されていなかった」ことが判明したため、急遽20%ブドウ糖液と経腸栄養剤を投与することになりました。
今般の事故事例も、いわゆる「うっかりミス」と言えます(多忙な医療現場では「うっかりミス」が生じやすい)。ダブルチェック等の徹底で「ミスが生じても早期に発見し、事故を防止できる」体制を構築することが重要でしょう。
機構では、例えば▼経腸栄養剤のルートを経鼻栄養チューブなどに接続したことを「確認した後」に滴下を開始する▼各患者へのインスリンと経腸栄養剤の投与について看護師間で情報共有する―ことなどを提案しています。
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