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ガイドライン遵守せず免疫抑制・化学療法を実施し、B型肝炎ウイルスが再活性化する医療事故―医療機能評価機構

2021.2.15.(月)

B型肝炎治療ガイドラインを遵守せずに免疫抑制・化学療法を実施し、B型肝炎ウイルスが再活性化してしまった―。

日本医療機能評価機構が2月15日に公表した「医療安全情報 No.171」から、こうした事例(医療事故)が2017年1月1日から昨年(2020年)12月31日までの間に13件も報告されていることが分かりました(機構のサイトはこちらこちら)。

「免疫抑制・化学療法によるB型肝炎ウイルスの再活性化」について院内で情報共有を

日本医療機能評価機は、全国の医療機関から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故には至らなかったものの、担当医療スタッフ等が「ヒヤリ」とした、「ハッ」とした事例)の報告を受け、背景等を詳しく分析の上で、「事故等の再発防止に向けた提言」等を定期的に行っています【医療事故情報収集等事業】(国立病院や特定機能病院などでは事故等の報告が義務付けられている)。

また事故事例などの中から、「特段の注意が必要と考えられる事例」(繰り返し発生している医療事故など)をピックアップ。その内容を簡潔にまとめて「医療安全情報」として、毎月公表しています。医療現場に最大限の注意を払うよう強く呼びかけるものです。

【最近の医療安全情報に関する記事】
咀嚼機能低下者にパン食を誤提供し、窒息させてしまった事例
服用薬剤(持参薬)の処方・指示が漏れ、既往症が悪化した事例
酸素ボンベのバルブ開栓確認を怠足り患者が低酸素に陥った事例
メトトレキサートの過剰投与に伴う骨髄抑制
「事前に患者が選択・同意した術式」と異なる術式による手術の実施
誤った情報登録によるアレルギーのある薬剤の投与
IVH実施時のガイドワイヤー回収忘れ
患者移乗時の転落
パルスオキシメータープルーブの長時間装着による熱傷事例
気管・気管切開チューブの誤接続事例
徐放性製剤を粉砕した事例
立位での浣腸による直腸損傷事例
鎮静薬の誤調整事例
小児用ベッドから転落事例
電子カルテの誤入力
ガーゼの体内残存2
ガーゼの体内残存1



2月15日に公表された「医療安全情報No.170」では、「免疫抑制・化学療法によるB型肝炎ウイルスの再活性化」がテーマとなりました。

ある患者に、数年前から関節リウマチ治療のための免疫抑制剤が処方されていました。しかし、免疫抑制剤を開始する前に「HBs抗原」の検査を実施していませんでした。当該患者が、別途、心臓カテーテル検査の目的で入院した際、血液検査において「HBs抗原が高値」であったことから、肝胆膵内科にコンサルトが行われました。精査の結果「B型肝炎」と診断し、核酸アナログ製剤の投与が開始されています。



また、急性リンパ性白血病で骨髄移植後に免疫抑制剤を使用している患者について、外来診察時に肝障害が認められました。検査の結果、HBV既感染パターンであり、「1-3か月毎に実施すべきHBV-DNA定量検査」が行われていないことに気付きました。精査の結果、「HBVの再活性化による急性肝炎」と診断し、緊急入院となっています。

B型肝炎治療ガイドラインを遵守せずに免疫抑制・化学療法を実施したことから、B型肝炎ウイルスが再活性化してしまった事例が散発している(医療安全情報171 210215)



日本肝臓学会の「B型肝炎治療ガイドライン」には「免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン」が明記され、例えば▼血液悪性疾患に対する強力な化学療法中や終了後に、HBs抗原陽性あるいはHBs抗原陰性例の一部において「 HBV再活性化によりB型肝炎が発症し、その中には劇症化する症例があり、注意が必要」である▼免疫抑制・化学療法「前」に、肝機能異常の有無にかかわらずHBVキャリアおよび既往感染者をスクリーニングする▼「HBV DNA 量のモニタリング」は1-3か月ごとを目安とし、治療内容を考慮して間隔および期間を検討する―ことなどが推奨されています。

B型肝炎治療ガイドラインにおける「免疫抑制・化学療法により発症する B 型肝炎対策ガイドライン」



今般の事故事例は、このガイドラインに沿った治療を行っていないことが明らかです。

機構では、▼「免疫抑制・化学療法により発症するHBV再活性化」について、B型肝炎治療ガイドラインとともに院内で周知する▼免疫抑制・化学療法を開始する患者がHBs抗原陽性の場合は専門診療科に相談する▼院内で「HBV再活性化に注意する薬剤」を明確にし、HBs抗原をスクリーニングする仕組みの構築を検討する―などの対策を院内で構築するようアドヴァイスしています。

なお、「B型肝炎治療ガイドライン」では、「添付文書上、B型肝炎ウイルス再活性化について注意喚起のある薬剤」(2019年2月現在)を次のように整理しています。

【免疫抑制剤】
▽アザチオプリン(アザニン錠50mg、イムラン錠50mg)
▽エベロリムス(サーティカン錠0.25mg、0.5mg、0.75mg)
▽シクロスポリン(サンディミュン点滴静注用250mg、ネオーラル内用液10%、ネオーラルカプセル10mg、25mg)
▽タクロリムス水和物(グラセプターカプセル0.5mg、1mg、5mg、プログラフカプセル0.5mg、1mg、5mg、プログラフ顆粒0.2mg、1mg、プログラフ注射液2mg、5mg)
▽ミコフェノール酸モフェチル(セルセプトカプセル250)
▽ミゾリビン(ブレディニン錠 25、50)
▽抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン(サイモグロブリン点滴静注用25mg)
▽グスペリムス塩酸塩(スパニジン点滴静注用100mg)
▽バシリキシマブ(遺伝子組換え)(シムレクト静注用 20mg、シムレクト小児用静注用 10mg)

【副腎皮質ステロイド剤】
▽コルチゾン酢酸エステル(コートン錠25mg)
▽デキサメタゾン(デカドロン錠0.5mg、レナデックス錠 4mg、デカドロンエリキシル 0.01%)
▽デキサメタゾンパルミチン酸エステル(リメタゾン静注2.5mg)
▽デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム(デカドロン注射液1.65mg、6.6mg、デキサート注射液1.65mg)
▽トリアムシノロン(レダコート錠4mg)
▽トリアムシノロンアセトニド(ケナコルト-A皮内用関節腔内用水懸注50mg/5mL、ケナコルト-A筋注用関節腔内用水懸注40mg/1mL)
▽フルドロコルチゾン酢酸エステル(フロリネフ錠0.1mg)
▽プレドニゾロン(プレドニゾロン錠1mg、5mg、プレドニゾロン散0.1%)
▽プレドニゾロンリン酸エステルナトリウム(プレドネマ注腸20mg)
▽プレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム(水溶性プレドニン10mg、20mg)
▽ベタメタゾン(リンデロン錠 0.5mg、リンデロン散0.1%、リンデロンシロップ0.01%)
▽ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム(リンデロン注2mg(0.4%)、4mg(0.4%)、ステロネマ注腸1.5mg、3mg)
▽ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩(セレスタミン配合錠、セレスタミン配合シロップ)
▽ベタメタゾン酢酸エステル・ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム(リンデロン懸濁注)
▽ヒドロコルチゾン(コートリル錠10mg)
▽ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム(ソル・コーテフ注射用100mg)
▽ヒドロコルチゾンリン酸エステルナトリウム(水溶性ハイドロコートン注射液100mg)
▽メチルプレドニゾロン(メドロール錠 2mg、4mg)
▽メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム(ソル・メドロール静注用125mg、500mg)
▽メチルプレドニゾロン酢酸エステル(デポ・メドロール水懸注20mg、40mg)

【抗腫瘍用薬】
▽エベロリムス(アフィニトール錠5mg)
▽オファツムマブ(遺伝子組換え)(アーゼラ点滴静注液100mg、1000mg)
▽テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(ティーエスワン配合カプセルT20、T25、ティーエスワン配合顆粒T20、T25)
▽テムシロリムス(トーリセル点滴静注液25mg)
▽テモゾロミド(テモダールカプセル20mg、100mg、テモダール点滴静注用100mg)
▽フルダラビンリン酸エステル(フルダラ錠10mg、フルダラ静注用50mg)
▽ベンダムスチン塩酸塩(トレアキシン点滴静注用100mg)
▽ボルテゾミブ(ベルケイド注射用3mg)
▽メトトレキサート(メソトレキセート錠2.5mg、メソトレキセート点滴静注液200mg、注射用メソトレキセート5mg、50mg)
▽モガムリズマブ(遺伝子組換え)(ポテリジオ点滴静注20mg)
▽リツキシマブ(遺伝子組換え)(リツキサン点滴静注100mg、500mg)
▽シロリムス(ラパリムス錠1mg)
▽アレムツズマブ(マブキャンパス点滴静注30mg)
▽ルキソリチニブリン酸塩(ジャカビ錠5mg)
▽イブルチニブ(イムブルビカカプセル140mg)
▽パノビノスタット乳酸塩(ファリーダックカプセル10mg、15mg)
▽イマチニブメシル酸塩(グリベック錠100mg)
▽ニロチニブ塩酸塩水和物(タシグナカプセル150mg、200mg)
▽ダサチニブ水和物(スプリセル錠20mg、50mg)
▽ボスチニブ水和物(ボシュリフ錠100mg)
▽ポナチニブ塩酸塩(アイクルシグ錠15mg)
▽フォロデシン塩酸塩(ムンデシンカプセル100mg)
▽レナリドミド水和物(レブラミドカプセル2.5mg、5mg)
▽オビヌツズマブ(ガザイバ点滴静注1000mg)
▽ロミデプシン注射用(イストダックス点滴静注用10mg)

【抗リウマチ薬】
▽アダリムマブ(遺伝子組換え)(ヒュミラ皮下注20mgシリンジ0.4mL、40mgシリンジ 0.8mL)
▽アバタセプト(遺伝子組換え)(オレンシア点滴静注用250mg)
▽レフルノミド(アラバ錠10mg、20mg、100mg)
▽インフリキシマブ(遺伝子組換え)(レミケード点滴静注用100)
▽エタネルセプト(遺伝子組換え)(エンブレル皮下注用10mg、25mg)
▽ゴリムマブ(遺伝子組換え)(シンポニー皮下注50mgシリンジ)
▽セルトリズマブペゴル(遺伝子組換え)(シムジア皮下注200mgシリンジ)
▽トファシチニブクエン酸塩(ゼルヤンツ錠5mg)
▽トリシズマブ(遺伝子組換え)(アクテムラ点滴静注用80mg、200mg、400mg、アクテムラ皮下注162mgシリンジ)
▽メトトレキサート(リウマトレックスカプセル2mg)
▽バリシチニブ(オルミエント錠2mg、4mg)
▽サリルマブ(ケブザラ皮下注150mg、200mgシリンジ)
▽ベリムマブ(ベンリスタ点滴静注用120mg、400㎎、皮下注200mgオートインジェクター、200mgシリンジ)
▽ペフィシチニブ臭化水素酸塩(スマイラフ錠50mg、100mg)
▽ウパダシチニブ水和物(リンヴォック錠7.5mg、15mg)
▽フィルゴチニブマレイン酸塩(ジセレカ錠100 ㎎、200mg)

【抗ウイルス薬】
▽シメプレビルナトリウム(ソブリアードカプセル100mg)
▽ダクラタスビル塩酸塩(ダクルインザ錠60mg)
▽アスナプレビル(スンベプラカプセル100mg)
▽ソホスブビル(ソバルディ錠400mg)
▽レジパスビル/ソホスブビル(ハーボニー配合錠)
▽エルバスビル(エレルサ錠 50mg)
▽グラゾプレビル水和物(グラジナ錠50mg)
▽ダクラタスビル塩酸塩・アスナプレビル・ベクラブビル塩酸塩(ジメンシー配合錠)
▽グレカプレビル水和物・ピブレンタスビル配合剤(マヴィレット配合錠)
▽ソホスブビル/ベルパタスビル配合剤(エプクルーサ配合錠)



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