中心静脈カテーテル挿入時にガイドワイヤー回収を忘れ、患者体内に残存する事例が散発―医療機能評価機構
2020.7.16.(木)
中心静脈カテーテルの挿入時にガイドワイヤーを抜き忘れ、患者の体内に残存してしまった。抜去のために患者は再入院等を余儀なくされた―。
日本医療機能評価機構が7月15日に公表した「医療安全情報 No.164」から、こうした事例が2015年1月1日から2020年5月31日までの間に16件報告されていることが分かりました(機構のサイトはこちら)。
IVH施行時は、カテーテル端からガイドワイヤー後端を出し、確実に保持を
日本医療機能評価機構は、全国の医療機関(国立病院や特定機能病院等では報告が義務付けられている)から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故に至る前に防ぐことができたものの、「ヒヤリとした、ハッとした」事例)の報告を受け、その内容や背景を詳しく分析。「事故等の再発防止に向けた提言」等を定期的に行っています【医療事故情報収集等事業】。
さらに事故事例などの中から、とくに留意すべき事例を毎月ピックアップ。その内容を簡潔にまとめて「医療安全情報」として公表し、医療現場に特段の注意を払うよう強く呼びかけています(最近の情報はこちら(患者移乗時の転落)とこちら(パルスオキシメータープルーブの長時間装着による熱傷事例)とこちら(気管・気管切開チューブの誤接続事例)とこちら(徐放性製剤を粉砕した事例)とこちら(立位での浣腸による直腸損傷事例)とこちら(鎮静薬の誤調整事例)こちら(小児用ベッドから転落事例)とこちら(電子カルテの誤入力)とこちら(ガーゼの体内残存2)とこちら(ガーゼの体内残存1))。
7月15日に公表された「No.164」では、「中心静脈カテーテルのガイドワイヤーの残存」がテーマとなりました。
ある病院で、医師が、中心静脈カテーテルの端からガイドワイヤーの「後端を出さない」まま内頚静脈にカテーテルを挿入しました。挿入後にガイドワイヤー抜き忘れに気付き、胸部X線画像で体内にガイドワイヤーが残存していることを確認。放射線科医師に相談し、透視で確認すると、ガイドワイヤーは上大静脈から右大腿静脈に残存していました。その後、ガイドワイヤーを回収しています。
また、別の病院では、医師が患者の右大腿静脈に中心静脈カテーテルを挿入。挿入後、透視下でカテーテルの位置を確認しましたが、ガイドワイヤーの残存には気付きませんでした。さらに入院中にCT検査が実施されましたが、▼医師▼診療放射線技師▼読影医―の誰もガイドワイヤー残存に気付かず、患者は他院へ転院しました。転院3日後に発熱があり、中心静脈カテーテルを抜去してCT検査を実施したところ、大腿静脈から上大静脈にガイドワイヤーが残存していることが分かりました。再入院し、ガイドワイヤーを回収しています。
事態を重く見た機構では、例えば「カテーテルの端からガイドワイヤーの後端を出し、確実に保持してカテーテルを挿入する」など、自院で「ガイドワイヤー回収忘れのない方策」を構築することを求めています。▼本事例の共有▼複数人でもガイドワイヤー回収チェック—など、複数の対策を組み合わせることも重要でしょう。
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