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患者の移乗時にベッド等が動き「患者が転落」する事例散発、ベッドやストレッチャーの固定確認等の徹底を―医療機能評価機構

2020.5.15.(金)

スライダーなどの移乗補助器具を使用した患者移乗の際に、ベッドが動き、患者が転落してしまった―。

日本医療機能評価機構が5月15日に公表した「医療安全情報 No.162」から、こうした事例が2016年1月1日から2020年3月31日までの間に9件報告されていることが分かりました(機構のサイトはこちら)。

スライダーなどの移乗補助器具の使用方法を周知等も重要

日本医療機能評価機構では、全国の医療機関から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故に至る前に防ぐことができたものの、「ヒヤリとした、ハッとした」事例)の報告を受け(国立病院や特定機能病院等では報告が義務付けられている)、その内容や背景を詳しく分析したうえで、「事故等の再発防止に向けた提言」等を定期的に行っています(医療事故情報収集等事業)。

さらに事故事例などの中から、とくに留意すべき事例を毎月ピックアップ。その内容を簡潔にまとめて「医療安全情報」として公表し、医療現場に特段の注意を払うよう強く呼びかけています(最近の情報はこちら(パルスオキシメータープルーブの長時間装着による熱傷事例)こちら(気管・気管切開チューブの誤接続事例)こちら(徐放性製剤を粉砕した事例)こちら(立位での浣腸による直腸損傷事例)こちら(鎮静薬の誤調整事例)こちら(小児用ベッドから転落事例)こちら(電子カルテの誤入力)こちら(ガーゼの体内残存2)こちら(ガーゼの体内残存1)))。



5月15日に公表された「No.162」では、「ベッドへの移乗時の転落」がテーマとなりました。

ある病院で、患者を入浴用ストレッチャーからベッドへ移乗する際に、看護師と看護助手がそれぞれベッド側とストレッチャー側に立ちました。「ベッドを固定していない状態」で患者を載せたスライダー(移乗補助器具)を押したところ、ベッドが動き、患者が転落してしまいました。頭部CT検査では「後頭部皮下出血」と診断されました。

ベッドやストレッチャーの固定が不十分なため、患者の移乗時に転落してしまう事例が散発している(医療安全情報162 200515)



また別の病院では、看護師が「処置までの時間がない」と焦り、スライダー(移乗補助器具)を使用して1人で患者をベッドからストレッチャーに移そうとました。その際、ベッド側から患者の左肩と腰を支えてストレッチャー側へスライドするように押したところ、ストレッチャーの固定が不十分な状態であったことから、ストレッチャーが動き、患者が転落したてしまいました。下肢のCT検査では「右脛骨内果骨折」と診断されています。



こうした状況を重く見て、機構では、▼移乗前にベッド・ストレッチャーを固定し、「確実に固定されている」ことを確認する▼移乗時に、介助者は適切な位置につく▼スライダーなどの移乗補助器具の使用方法を周知する―ことの徹底を求めています。

上記の2つ目の事例では、1人で移乗を介助しようとしています。極めて多忙な医療現場では、こうした選択をしがちですが、▼可能な限り複数名で移乗介助を行うルールを設け▼ルールを遵守できる体制を院内で構築する▼多忙な中でもルールを遵守する風土を院内で醸成する▼複数人で互いにルールを遵守しているか確認しあえる環境を整備する―ことなども非常に重要です。これらを実現するためには、人員確保も重要となってくることは述べるまでもありません。



ベッドやストレッチャーからの患者転落は、重篤な障害を及ぼしかねない医療事故です。医療事故調査制度において医療事故調査・支援センターに指定されている日本医療安全調査機構では、昨年(2019年)6月に医療事故の再発防止に向けた提言「入院中に発生した転倒・転落による頭部外傷に係る死亡事例の分析」を公表。そこでは、▼医療機関における転倒・転落による死亡事故が2015年10月以降、「18例」も発生していること▼今後、入院患者の高齢化、認知症患者の一般病棟への入院などで、転倒・転落事故の増加が予想されること▼「迅速な検査(頭部CTなど)と対応体制の確保」「ハイリスク者の確認と院内での情報共有」「多職種連携による転倒・転落事故防止策の構築と実施」などが極めて重要な課題となってくること―を提言しています(関連記事はこちらこちら)。


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