パルスオキシメータプルーブの長時間装着で熱傷、定められた時間で装着部位変更を―医療機能評価機構
2020.4.16.(木)
パルスオキシメータ本体と接続し、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)と脈拍数を連続して測定するセンサである「パルスオキシメータプローブ」を、長時間装着したままにし、定められた時間での装着部位変更などをしなかったため、装着部位に熱傷が生じてしまった―。
日本医療機能評価機構が4月15日に公表した「医療安全情報 No.161」から、こうした事例が2015年1月1日から2020年2月29日の間に7件報告されていることが分かりました(機構のサイトはこちら)。
パルスオキシメータやプルーブの添付文書等には「装着部位の変更が必要」等の注意書き
日本医療機能評価機構では、全国の医療機関から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故に至る前に防いだものの「ヒヤリとした、ハッとした」事例)の報告を受け(国立病院や特定機能病院等では報告を義務付け)、その内容や背景を詳しく分析し、事故等の再発防止に向けた提言等を定期的に行っています(医療事故情報収集等事業)。
さらに事故事例などの中から、とくに留意すべき事例を毎月ピックアップ。その内容を簡潔にまとめて「医療安全情報」として公表し、医療現場に特段の注意を払うよう強く呼びかけています(最近の情報はこちら(気管・気管切開チューブの誤接続事例)とこちら(徐放性製剤を粉砕した事例)とこちら(立位での浣腸による直腸損傷事例)とこちら(鎮静薬の誤調整事例)こちら(小児用ベッドから転落事例)とこちら(電子カルテの誤入力)とこちら(ガーゼの体内残存2)とこちら(ガーゼの体内残存1))。
4月15日に公表された「No.161」では、「パルスオキシメータプローブ による熱傷」がテーマとなりました。
ある病院で、新生児(日齢1)の経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)が安静時に低下したためモニタ監視をしていました。午後10時(22時)にパルスオキシメータプローブが外れたため装着し直し。3時間毎に装着部位を変更することになっていましたが、看護師が多忙のため変更を失念していました。翌日9時30分にパルスオキシメータプローブを外したところ、皮膚の異常を発見。皮膚科医師の診察で、「低温熱傷」と診断されました。
また別の病院に入院中の患者は、寝たきりであり、終日パルスオキシメータプローブを装着していました。添付文書には「8時間ごとにパルスオキシメータプローブの装着部位を変更することや、皮膚の観察を行うこと」と記載されていましたが、入浴や清拭時にのみ行い、各勤務帯ではこれを実施していませんでした。清拭時にパルスオキシメータプローブを外したところ、熱傷を来していることが判明しました。
実際にパルスオキシメータやパルスオキシメータプローブの複数製品について取り扱い説明書や添付文書を確認すると、次のような注意事項が明記されています。
▽プローブは一定時間(ディスオキシプローブは約8時間、リユーザブルプローブは約4時間)ごとに装着部位を変える。SpO2プローブの装着部位は通常2-3度、温度が上昇するため、熱傷を生じさせることがある。また装着部位で皮膚障害を生じることがある
▽高熱の患者、末梢循環不全を起こしている患者のSpO2モニタリング時には、センサの位置を頻繁に変える。SpO2プローブの装着部位は通常2-3度、温度が上昇するため、熱傷を生じさせることがある。また装着部位で圧迫壊死を生じることがある
▽高熱を発している場合、末梢循環不全を起こしている場合は本品の位置を頻繁に変える。装着部は温度上昇するため、低温熱傷を生じるおそれがある
事例は、こうした注意事項を遵守しなかったために患者の熱傷が生じてしまったものです。機構では、▼パルスオキシメータプローブの添付文書で装着時の注意事項を確認し、記載された時間を目安に装着部位を変更する▼パルスオキシメータプローブの装着部位を変更した際、装着していた部位の皮膚の状態を観察し、記録する―ことなどを徹底するよう求めています。
また、こうしたルールが院内で確立されていたとしても、それを遵守する風土や環境が整えられていなければ、せっかくのルールが画餅に帰してしまいます。例えば「多忙であってもルールを遵守しよう」と考えられる意識の醸成、「複数人で互いにルールを遵守しているか確認しあえる」環境の整備(このためには人員確保が必要となることは述べるまでもない)なども非常に重要です。
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