酸素ボンベのバルブ開栓確認を怠り、患者が低酸素状態に陥る事例が散発―医療機能評価機構
2020.11.17.(火)
酸素ボンベのバルブが開いていることを確認し忘れ、患者が低酸素状態に陥ってしまった―。
日本医療機能評価機構が11月16日に公表した「医療安全情報 No.168」から、こうした事例(医療事故)が2016年1月1日から2020年9月30日までの間に5件報告されていることが分かりました(機構のサイトはこちら)。
酸素ボンベ使用時は、バルブ(元栓)・圧力計・流量設定ダイヤルを確認せよ
日本医療機能評価機構は、全国の医療機関から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故には至らなかったものの、「ヒヤリとした、ハッとした」事例)の報告を受け、その内容や背景を詳しく分析し、「事故等の再発防止に向けた提言」等を定期的に行っています【医療事故情報収集等事業】(国立病院や特定機能病院などでは報告が義務付けられている)。
さらに事故事例などの中から、「特段の留意が必要と考えられる事例」(繰り返し発生している医療事故など)を毎月ピックアップし、その内容を簡潔にまとめた「医療安全情報」として公表しています。医療現場に最大限の注意を払うよう強く呼びかけるものです。
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11月16日に公表された「医療安全情報No.168」では、「酸素ボンベの開栓未確認」がテーマとなりました。
ある医療機関において、「酸素を毎分4L投与中の患者」を看護師がCT検査室に搬送しました。「酸素ボンベ」→「検査室の中央配管の酸素」への切り替えが行われ、酸素ボンベのバルブ(元栓)が閉められました。検査終了後、診療放射線技師が酸素ボンベの開栓を確認しないままに、「中央配管」→「酸素ボンベ」へと切り替えてしまいました。看護師が検査室に行くと、患者のSpO2値は75%に低下しており、酸素ボンベを確認するとバルブ(元栓)が開いていませんでした。
また別の医療機関において「酸素を毎分3L投与中の患者」を血管造影室に搬送するために看護師が酸素ボンベを準備し、流量設定ダイヤルを操作して酸素の流出を確認後、バルブ(元栓)を閉めました。その際、圧力調整器に残った酸素の放出がなされなかったため、圧力計の表示値は10MPaのままでした。出棟する際、流量設定ダイヤルを「毎分3L」に合わせると酸素が出る音が聞こえたため、看護師は「開栓している」と思い込んでしまいました。血管造影室に移動中、患者のSpO2値が71%に低下したため酸素ボンベを確認すると、バルブ(元栓)を開けていなかったことに気付いたといいます。
酸素投与が必要な患者に対し、酸素ボンベのバルブを閉めたままでは当然、低酸素状態に陥ってしまいます。事故発見が遅れれば、脳などに重大な障害を及ぼすことにもなりかねません。
機構では、例えば「酸素ボンベ使用時は、『バルブ(元栓)が開いている』ことを確認してから酸素の流量を調整する」「酸素ボンベ使用時は、(1)バルブ(元栓)(2)圧力計(3)流量設定ダイヤル—の順で確認する」などの手順を各医療機関で徹底することなどをアドヴァイスしています。
なお、個々人でのチェックには限界もあります(とりわけ多忙な医療機関ではチェックがおざなりになりがちです)。酸素ボンベのバルブチェックに限りませんが、さまざまな事項について、例えば「複数チェック」や「指さし確認」を取り入れていくことなども重要です。
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