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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

腔鏡下手術で切除した臓器・組織を体外に取り出し忘れ、再手術を実施しなければならい事故が頻発―医療機能評価機構

2021.12.16.(木)

腹腔鏡下手術の際、切除した臓器・組織を体外に取り出すことを忘れ、再手術を実施しなければならなくなった―。

日本医療機能評価機構が12月15日に公表した「医療安全情報 No.181」から、こうした事例(医療事故)が2017年1月1日から今年(2021年)10月末までの間に13件も報告されていることが分かりました(機構のサイトはこちらこちら)。4-5か月に1回、こうした事故が生じている計算で、相当の頻度と言わざるをえません。

腔鏡下手術で切除した臓器・組織を体外に取り出し忘れ、再手術を実施しなければならい事故が頻発(医療安全情報181 211215)

回収バッグの中には「X線透過性」のものがある点などにも留意を

日本医療機能評価機では、全国の医療機関から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故には至らなかったものの担当医療スタッフ等が「ヒヤリ」とした、「ハッ」とした事例)の報告を受け、背景等を詳しく分析して「事故等の再発防止に向けた提言」等を定期的に行っています【医療事故情報収集等事業】(国立病院や特定機能病院などでは事故等の報告が義務付けられている、2021年度の第1四半期(2021年4―6月)の報告書に関する記事はこちら)。

また事故事例などの中から「特段の注意が必要と考えられる事例」(繰り返し発生している医療事故など)をピックアップ。その内容を簡潔に整理し「医療安全情報」として毎月公表しています。医療現場に「こうした事故が頻発しているので最大限の注意を払ってほしい」と強く呼びかけるものです。

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ガーゼの体内残存2
ガーゼの体内残存1



12月15日に公表された「医療安全情報No.181」では、「腹腔鏡下手術に切除した臓器・組織の遺残」事例がテーマとなりました。

ある病院で、胃がんの患者に対し「腹腔鏡下胃切除術、胆嚢摘出術」を実施しました。医師は切除した胆嚢を回収バッグに入れ、閉創前に取り出すことを看護師に伝えましたが、取り出すのを失念しました。閉創時、医師と看護師は器械・ガーゼカウントを行ったものの「回収バッグ」はカウントの対象外でした。また手術終了時にX線撮影を行いましたが、回収バッグはX線透過性であったため腹腔内に残っていることに気付くことができませんでした。その後、医師が標本を整理している際に「胆嚢を取り出していない」ことに気付いたといいます。

別の病院では、多発性子宮筋腫の患者に対して「腹腔鏡下子宮筋腫核出術」を実施。最大10cm大のものを含めて合計10個の筋腫を核出しました。術後4日目に超音波検査で3cm大の腫瘤像が認められ「血腫の可能性あり」と判断されました。患者と相談し「外来で経過観察する」方針で退院。後日、主治医が手術動画を見直した際に「子宮筋腫を10個中、9個しか体外に取り出していない」ことに気付いたといいます。



まさに「確認不足」のために生じた医療事故と言えます。機構では、事例が発生した病院での改善策を参考に、例えば▼閉創前に医師と看護師が「切除した臓器を体外に取り出した」ことを確認する▼回収バッグをカウントの対象とする▼回収バッグには「X線透過性」のものがあり、腹腔内に残存してもX線画像に写らない場合があることに留意する▼複数の子宮筋腫を核出する際、医師は核出した数と取り出した数を看護師に伝え、看護師は個数を記録し、共有する―などの対策を検討してはどうかとアドヴァイスしています。

ところで「個人の注意だけで医療事故やヒヤリ・ハット事例を防止することはできない」という点に十分にも留意する必要があります。どれだけ注意深く業務を行っても、人は必ずミスを犯します。とりわけ、極めて多忙な業務環境にある医療従事者はミスが生じやすい状況に置かれていると言えます。こうした中では、「ペナルティの導入」などには意味がなく(効果がない)、かえって弊害のほうが大きくなる点を忘れてはなりません。



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