メイロン静注7%「20mL」とメイロン静注7%「250mL」を誤って処方し、患者が心不全等に陥る事故散発―医療機能評価機構
2021.11.16.(火)
末梢性めまい症や腫瘍崩壊症候群の治療において「メイロン静注7%20mL」をオーダーするべきところ、誤って「メイロン静注7%250mL」をオーダー・処方・投与してしまい、患者が高ナトリウム血症や心不全を来してしまった―。
日本医療機能評価機構が11月15日に公表した「医療安全情報 No.180」から、こうした事例(医療事故)が2019年1月1日から今年(2021年)9月末までの間に3件報告されていることが分かりました(機構のサイトはこちらこちら)。
確認不足で隣り合った別規格薬剤をオーダー、オーダリングシステムの仕様見直しも重要
日本医療機能評価機では、全国の医療機関から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故には至らなかったものの、担当医療スタッフ等が「ヒヤリ」とした、「ハッ」とした事例)の報告を受け、背景等を詳しく分析して「事故等の再発防止に向けた提言」等を定期的に行っています【医療事故情報収集等事業】(国立病院や特定機能病院などでは事故等の報告が義務付けられている、2021年度の第1四半期(2021年4―6月)の報告書に関する記事はこちら)。
あわせて機構では、事故事例などの中から「特段の注意が必要と考えられる事例」(繰り返し発生している医療事故など)をピックアップ。その内容を簡潔に整理し「医療安全情報」として毎月公表しています。医療現場に最大限の注意を払うよう強く呼びかけるものです。
【最近の医療安全情報に関する記事】
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▽新生児・乳児の沐浴時に、湯の温度が高すぎて熱傷を生じさせてしまった事例
▽看護師がPTPシートのまま薬剤を患者に手渡し、患者が誤飲してしまった事例
▽人工呼吸器の回路接続が外れ、あるいは緩んでおり、患者が呼吸難等に陥ってしまった事例
▽インスリン投与後、経腸栄養剤のルート未接続や開始忘れなどにより、患者が低血糖を来してしまった事例
▽輸液ポンプなどの流量入力を誤り、医師による指示の「10倍の速度」で薬剤を投与してしまった事例
▽ガイドライン遵守せず免疫抑制・化学療法を実施し、B型肝炎ウイルスが再活性化してしまった事例
▽咀嚼機能低下者にパン食を誤提供し、窒息させてしまった事例
▽服用薬剤(持参薬)の処方・指示が漏れ、既往症が悪化した事例
▽酸素ボンベのバルブ開栓確認を怠足り患者が低酸素に陥った事例
▽メトトレキサートの過剰投与に伴う骨髄抑制
▽「事前に患者が選択・同意した術式」と異なる術式による手術の実施
▽誤った情報登録によるアレルギーのある薬剤の投与
▽IVH実施時のガイドワイヤー回収忘れ
▽患者移乗時の転落
▽パルスオキシメータープルーブの長時間装着による熱傷事例
▽気管・気管切開チューブの誤接続事例
▽徐放性製剤を粉砕した事例
▽立位での浣腸による直腸損傷事例
▽鎮静薬の誤調整事例
▽小児用ベッドから転落事例
▽電子カルテの誤入力
▽ガーゼの体内残存2
▽ガーゼの体内残存1
11月15日に公表された「医療安全情報No.180」では、「メイロン静注7%250mL製剤の誤った処方」事例がテーマとなりました。
ある病院では、医師が「メイロン静注7%20mLを、ポタコールR輸液500mLに混注し、1日2回投与する」予定としました。オーダーを入力する際、上段に「メイロン静注7%(250mL/袋)」、下段に「メイロン静注 7%(20mL/A)」と表示され、規格や剤形を確認せず上段を選択してしまいました。
看護師は、メイロン静注7%250mLを輸液に混注することに違和感を覚えましたが、医師に確認することはありませんでした。
輸液用バッグを用いて、投与1日目と2日目は看護師、投与3日目と4日目は薬剤師が「メイロン静注7%250mLとポタコールR輸液500mL」を混注しました。投与4日目に、医師が看護師から末梢静脈ライン閉塞の報告を受け確認したところ、メイロン静注7%250mLが投与されていることに気付きました。
患者は、心不全と軽度の肺水腫を来していました。
オーダリングシステムでは、一般に同じ名称の薬剤は隣り合って表示されます。同じ薬剤について複数の規格が採用されていれば、当然、それらが隣り合って表示されることから、同様の事故は他の薬剤でも生じえます。
そこで機構では、▼オーダー画面の薬剤名は「規格を先に表示する」仕様とする(例えば、【250mL】メイロン静注7%、【20mL】メイロン例えば静注7%など)▼メイロン静注250mL製剤の処方時にアラートを表示する(例えば、「250mL製剤:過剰投与で高ナトリウム血症の恐れあり」など)▼院内の使用目的・使用実績を踏まえ、メイロン静注250mL製剤を処方・オーダーできる診療科、払い出す部署・病棟を限定する―などの取り組みを検討してはどうかと提案しています(もちろん、自施設にマッチした取り組みの実施が重要)。
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