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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

2021年、前年に比べて医療事故やヒヤリ・ハット事例報告が増加、医療の透明性が高まっていると考えるべき―日本医療機能評価機構

2022.10.6.(木)

昨年(2021年)1年間に報告された医療事故は5243件あり、前年に比べて12.9%増加した。このうち7.9%で患者が「死亡」しており、死亡事故シェアは前年に比べて1.1ポイント増加している—。

同じく2021年の1年間に報告されたヒヤリ・ハット事例は101万件超で、前年に比べて6.4%増加。仮に誤った行為を実施すれば「死亡」などの重大事故につながった可能性がある事例は1.4%あり、前年から0.3ポイント増加している―。

このような状況が、日本医療機能評価機構が9月30日に発表した2021年の「医療事故情報収集等事業」の年報から明らかになりました(機構のサイトはこちら)(2020年の状況に関する記事はこちら、2019年の状況に関する記事はこちら、2018年の状況に関する記事はこちら、2017年の状況に関する記事はこちら、2016年の状況に関する記事はこちら)。

ただし「ミスが増えている」というよりも、「事故やヒヤリ・ハット事例を包み隠さず報告しており、医療の透明性が高まっている」と考えるべきでしょう。

2021年度は医療事故報告件数、重度事例件数ともに増加

日本医療機能評価機構では、医療安全の確保に向け、医療機関で発生した医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故には至らなかったがヒヤリとした、ハッとした事例)を収集・分析する「医療事故情報収集等事業」を実施し、定期的にその内容を公表しています。

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ガーゼの体内残存2
ガーゼの体内残存1



昨年(2021年)に報告された医療事故の状況を見てみると、件数は合計で5423件(前年からうち国立病院など報告義務のある医療機関に限ると4674件で、前年から621件・12.9%増)となりました。

事故全体を程度別に見ると、「死亡」が407件(事故事例の7.8%、前年比べて1.1ポイント増)、「障害残存の可能性が高い」ものが500件(同9.5%、同0.1ポイント減)、「障害残存の可能性が低い」ものが1440件(同27.5%、同1.0ポイント減)、「障害残存の可能性なし」が1449件(同24.8%、同0.5ポイント減)などとなっています。前年に比べて死亡事故が増加している点が懸念されます。中長期的に動向を見ていく必要があるでしょう。

医療事故の概要を見てみると、最も多いのは「治療・処置」で1772件(事故全体の33.8%、前年から2.3ポイント増加)。次いで「療養上の世話」の1593件(事故全体の30.4%、前年から2.5ポイント減)、「薬剤」の415件(同7.9%、同0.2ポイント減)、「ドレーン・チューブ」の400件(同7.6%、同0.6ポイント減)などと続きます。前年に続き「治療・処置」に関する事故の増加が目立ち、コロナ感染症との関連を今後見ていく必要がありそうです。

2021年に報告された医療事故事例の概要(医療事故情報収集等事業2021年報1 210930)



事故に関連した診療科(複数回答が可能)を見ると、これまでと同様に整形外科が最も多い状況に変わりはありませんが、そのシェアは10.7%で前年から1.2ポイント減(前年も前々年に比べ0.5ポイント減)となりました。コロナ感染症の影響で「患者の疾患構成が大きく変化している」可能性もあります。患者調査などの動向と比較分析することも有用でしょう(関連記事はこちら)。

このほか、▼外科の7.5%(前年度から増減なし)▼消化器科の7.3%(同0.5ポイント増)▼内科の7.1%(同0.5ポイント増)▼循環器内科の7.0%(同0.2ポイント増減)、消化器科の6.8%(同0.4ポイント増)—などで多くなっており、上位診療科は顔ぶれこそ変わらないものの、順位が入れ替わっています。

ヒヤリ・ハット事例は100万件超、医療現場の透明性確保がさらに進む

次にヒヤリ・ハット事例を見てみましょう。昨年(2021年)1年間に報告されたヒヤリ・ハット事例は合計101万921件で、前年に比べて6万855件・6.4%の増加となりました。ただし「ミスが増加している」というよりも、「ミスを医療現場で適切に把握し、包み隠さずに報告している」、つまり「透明性が増している」と考えるべきで、報告件数の増加は「好ましい」方向に動いていると考えるべきでしょう。

内訳を見ると、「薬剤」が最も多く32万1431件(ヒヤリ・ハット事例全体の31.8%、前年に比べて0.3ポイント減)、次いで「療養上の世話」22万818件(同21.8%、同増減なし)、「ドレーン・チューブ」14万8748件(同14.7%、同増減なし)などで多くなっています。前年と比べて目立つ変化はなさそうです。

「ヒヤリとした、ハットした」にとどまり、実際に患者に誤った行為などをしていないケースが全体の約3分の1に当たる34万8586件あります。これらについて、「仮に誤った行為を実施してしまった」場合の影響を推測すると、「死亡」もしくは「重篤な状況」に至ったであろう重大なミスは4990件・1.4%(前年から0.3ポイント増)、「濃厚な処置・治療が必要になった」と思われる中程度のミスは2万3854件・6.8%(同0.1ポイント増)となっています。大きなミスが増加している可能性もあり、「十分な注意」「1人がミスをしても他者が気づき、リカバリーできる体制づくり」などの重要性がさらに増していくと考えられます。

2021年に報告されたヒヤリ・ハット事例の概要(医療事故情報収集等事業2021年報2 210930)



なお、年報では具体的な医療事故をクローズアップして背景など分析。再発防止策などを提言していますが、2021年報ではコロナ感染症の影響でこの提言(現地状況確認調査)が行えていません。次期年報(2022年報)に期待が集まります。



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