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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

ASO患者に弾性ストッキングを着用させ、「下肢の虚血」を招いてしまう医療事故が散発―医療機能評価機構

2022.7.15.(金)

下肢閉塞性動脈硬化症の患者に「弾性ストッキング」を着用させてしまい、患者に「下肢の虚血による疼痛や色調不良」などが生じてしまった―。

日本医療機能評価機構が7月15日に公表した「医療安全情報 No.188」から、こうした事例(医療事故)が2018年1月1日から今年(2022年)5月末までの間に7件報告されていることが分かりました(機構のサイトはこちらこちら)。

ASO患者に弾性ストッキングを着用させ、下肢の虚血を招く医療事故が散発(医療安全情報188 220715)

ASO患者に弾性ストッキングを着用させると「動脈血行障害」を悪化させてしまう

日本医療機能評価機は、全国の医療機関から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故には至らなかったものの担当医療スタッフ等が「ヒヤリ」とした、「ハッ」とした事例)の報告を受け、背景等を詳しく分析して「事故等の再発防止に向けた提言」等を定期的に行っています【医療事故情報収集等事業】(国立病院や特定機能病院などでは事故等の報告が義務付けられている、本年(2022)年1―3月を対象とした第69回報告書に関する記事はこちら)。

また事故事例などの中から「特段の注意が必要と考えられる事例」(繰り返し発生している医療事故など)をピックアップ。その内容を簡潔に整理し「医療安全情報」として毎月公表しています。医療現場に「こうした事故が頻発しているので最大限の注意を払ってほしい」と強く呼びかけるものです。

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ガーゼの体内残存2
ガーゼの体内残存1



7月15日に公表された「医療安全情報No.188」では、「下肢閉塞性動脈硬化症の患者への弾性ストッキングの着用」事例がテーマとなりました。

ある病院に救急搬送された患者について、初療を担当した救急科医師は「下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)」があることを把握し、診療録に記載しました。入院後に、消化器科の主治医は初療時の診療録を確認せずに「弾性ストッキングの着用」を看護師に指示しました。看護師も、初療時の診療録を確認しておらず、指示どおり、患者に弾性ストッキングを着用させてしまいました。3日後、患者が足の痛みを訴え、確認したところ「足趾の付け根に発赤」が認められました。



また、別の病院では、内科の主治医が「患者に左下肢深部静脈血栓症を認めた」ため、循環器科にコンサルトを依頼。その際、患者がASOであることを伝えませんでした。循環器科医師は「弾性ストッキングを着用させる」よう回答し、内科主治医・看護師は「ASO患者が弾性ストッキングを着用することのリスク」を知らず着用させました。4日後、看護師が「患者の左下肢の皮膚が暗赤色となっている」ことに気付きました。



弾性ストッキングは、「下肢の圧迫」→「静脈の血流速度の増加」により、下肢への静脈のうっ滞を減少させる効果があります。しかしASOは「動脈の狭窄や閉塞により下肢への血流量が減少する末梢閉塞性動脈疾患」(間欠性跛行や潰瘍・壊死などの症状が現れるケースも、症状がないケースもある)であり、動脈血行障害を有している患者へ弾性ストッキングを装着すれば「動脈の圧迫」→「血流の更なる減少」が生じさせる可能性があります。このため弾性ストッキングの添付文書には【禁忌・禁止】として▼重度の動脈血行障害▼うっ血性心不全—などの患者と記載されているものもあり、従前より「ASO患者への弾性ストッキングの装着には十分な注意が必要」と注意喚起されてきています(関連記事はこちら、PMDA(医薬品医療機器総合機構)の安全情報はこちら)。

にもかかわらず、こうした事態が生じている背景には▼患者状態(ASO)の把握不足▼知識不足▼着用可否の未検討—などがあります。機構では、事態を重く見て、次のような提言を行っています。提言を参考に、自医療機関にマッチした対策を講じることが重要です。

▽弾性ストッキングの適応基準や注意点を明確にして院内に周知する

▽医師・看護師は、患者に弾性ストッキングを着用させる前に「ASOの既往」がないか確認する

▽医師・看護師は、弾性ストッキングの添付文書の【警告】【禁忌・禁止】を確認し、着用の可否を検討する



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