使用済内視鏡を洗浄・滅菌せずに「他の患者」に使用してしまう医療事故が散発―医療機能評価機構
2022.4.15.(金)
「使用済の内視鏡」を洗浄・消毒せずに別の患者に使用してしまった―。
日本医療機能評価機構が4月15日に公表した「医療安全情報 No.185」から、こうした事例(医療事故)が2016年1月1日から今年(2022年)2月末までの間に9件報告されていることが分かりました(機構のサイトはこちらこちら)。
「使用前の内視鏡」「使用済の内視鏡」を置く場所を決め、関係スタッフに周知を
日本医療機能評価機では、全国の医療機関から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故には至らなかったものの担当医療スタッフ等が「ヒヤリ」とした、「ハッ」とした事例)の報告を受け、背景等を詳しく分析して「事故等の再発防止に向けた提言」等を定期的に行っています【医療事故情報収集等事業】(国立病院や特定機能病院などでは事故等の報告が義務付けられている、2021年度の第1四半期(2021年4―6月)の報告書に関する記事はこちら)。
また事故事例などの中から「特段の注意が必要と考えられる事例」(繰り返し発生している医療事故など)をピックアップ。その内容を簡潔に整理し「医療安全情報」として毎月公表しています。医療現場に「こうした事故が頻発しているので最大限の注意を払ってほしい」と強く呼びかけるものです。
【最近の医療安全情報に関する記事】
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▽メイロン静注7%「20mL」とメイロン静注7%「250mL」を誤って処方した事例
▽病理検体を「他患者の検体が入った容器」に誤って入れてしまった事例
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▽看護師がPTPシートのまま薬剤を患者に手渡し、患者が誤飲してしまった事例
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▽ガイドライン遵守せず免疫抑制・化学療法を実施し、B型肝炎ウイルスが再活性化してしまった事例
▽咀嚼機能低下者にパン食を誤提供し、窒息させてしまった事例
▽服用薬剤(持参薬)の処方・指示が漏れ、既往症が悪化した事例
▽酸素ボンベのバルブ開栓確認を怠足り患者が低酸素に陥った事例
▽メトトレキサートの過剰投与に伴う骨髄抑制
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▽IVH実施時のガイドワイヤー回収忘れ
▽患者移乗時の転落
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▽鎮静薬の誤調整事例
▽小児用ベッドから転落事例
▽電子カルテの誤入力
▽ガーゼの体内残存2
▽ガーゼの体内残存1
4月15日に公表された「医療安全情報No.183」では「使用済内視鏡を洗浄・滅菌せずに別の患者に誤使用する」事例がテーマとなりました。
ある病院で、透視室において「気管支鏡」2本を使用し、3例の検査を予定していました。医師Aは1例目の患者Xの検査終了後、気管支鏡を3例目の患者Zに使用するために、内視鏡室に洗浄を依頼しました。2例目の患者Yの検査終了後、気管支鏡を「使用済み内視鏡置き場」に置くことになっていたものの、医師Aはモニタの横にかけたままにしてしまいました。3例目の患者Zの検査の際、医師Bが内視鏡室に「洗浄された気管支鏡を取りに行く」ことになっていましたが、モニタ横に気管支鏡がかけてあったため「未使用」と思い使用しました。検査終了後、内視鏡室より「気管支鏡を取りに来ていない」と連絡が入り、「患者Yに使用した気管支鏡を洗浄・滅菌せずに患者Zに使用していた」ことが判明しました。
別の病院では、夜間に緊急で大腸内視鏡検査を同じ検査室で2件続けて実施しました。医師Aは、1例目の患者Xの検査後、「内視鏡を使用済み内視鏡置き場に置く」ルールを知らず、入っていた袋に戻し、検査室のカメラ置き場の清潔区域に置きました。医師Bは、2例目の患者Yの検査の際、カメラ置き場の清潔区域にあった内視鏡の袋が開封されていたものの「誰かが準備したもの」と思い使用しました。翌朝、消化器内視鏡技師が「前日の2件の検査に対し、内視鏡が1本しか使用されていない」ことに気付き、医師Bに確認したところ「患者Xに使用した内視鏡を洗浄・滅菌せずに患者Yに使用していた」ことが判明しました。
内視鏡を洗浄・滅菌せずに使いまわせば「感染」の危険性があることは述べるまでもありません。現下の新型コロナウイルス感染症対応の中では、そうした点にとりわけ留意しなければなりませんが、こうした事故が散発しています。
機構では、▼使用前・使用済みの内視鏡を置く場所をそれぞれ決め、内視鏡検査に関わる職員に周知する▼使用済みの内視鏡を置く場所が分かるように表示する▼検査終了後は、使用済みの内視鏡を決められた場所に置く―といった取り組み・ルールを、各医療現場で遵守することを求めています。
ただし事例を見ると「ルールを遵守しなかった」ことが積み重なって事故が生じていることがわかります。医療機関でルールを定めても、現場スタッフがそれを遵守しなければ意味がありません。「ルールを周知する」「『ルールを遵守しなければならない』という風土をつくる」ことが非常に重要です。
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