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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

患者に氏名等を述べてもらうも、医療者が手元情報と確認せず「誤った患者に検査・処置を実施」してしまう事故散発―医療機能評価機構

2023.2.16.(木)

検査や処置などの際に、患者自らに氏名等を口に出して言ってもらったが、医療者がそれを「手元の情報」(検査予定一覧など)と照合しなかったため「誤った患者に検査や処置を実施」してしまった—。

日本医療機能評価機構が2月15日に公表した「医療安全情報 No.195」から、こうした事例(医療事故)が依然として発生しており、2019年1月1日から昨年末(2022年12月末)までの間に5件報告されていることが分かりました(機構のサイトはこちら)。

照合せずに「誤った患者に検査・処置を実施してしまう」医療事故が散発(医療安全情報195 230215)

「確認」にとどまらず「照合」することが重要だが、それをどう遵守してもらうか

日本医療機能評価機は、全国の医療機関から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故には至らなかったものの担当医療スタッフ等が「ヒヤリ」とした、「ハッ」とした事例)の報告を受け、背景等を詳しく分析して「事故等の再発防止に向けた提言」等を定期的に行っています【医療事故情報収集等事業】(国立病院や特定機能病院などでは事故等の報告が義務付けられている、昨年(2022)年7―9月を対象とした第71回報告書に関する記事はこちら)。

さらに事故事例などの中から「特段の注意が必要と考えられる事例」(繰り返し発生している医療事故など)を毎月ピックアップ。簡潔に整理し「医療安全情報」として公表しています。医療現場に「こうした事故が頻発しているので最大限の注意を払ってほしい」と強く呼びかけるものです。

【最近の医療安全情報に関する記事】
人工呼吸器の再接続を誤り、患者が呼吸困難に陥る事例
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メイロン静注7%「20mL」とメイロン静注7%「250mL」を誤って処方した事例
病理検体を「他患者の検体が入った容器」に誤って入れてしまった事例
新生児・乳児の沐浴時に、湯の温度が高すぎて熱傷を生じさせてしまった事例
看護師がPTPシートのまま薬剤を患者に手渡し、患者が誤飲してしまった事例
人工呼吸器の回路接続が外れ、あるいは緩んでおり、患者が呼吸難等に陥ってしまった事例
インスリン投与後、経腸栄養剤のルート未接続や開始忘れなどにより、患者が低血糖を来してしまった事例
輸液ポンプなどの流量入力を誤り、医師による指示の「10倍の速度」で薬剤を投与してしまった事例
ガイドライン遵守せず免疫抑制・化学療法を実施し、B型肝炎ウイルスが再活性化してしまった事例
咀嚼機能低下者にパン食を誤提供し、窒息させてしまった事例
服用薬剤(持参薬)の処方・指示が漏れ、既往症が悪化した事例
酸素ボンベのバルブ開栓確認を怠足り患者が低酸素に陥った事例
メトトレキサートの過剰投与に伴う骨髄抑制
「事前に患者が選択・同意した術式」と異なる術式による手術の実施
誤った情報登録によるアレルギーのある薬剤の投与
IVH実施時のガイドワイヤー回収忘れ
患者移乗時の転落
パルスオキシメータープルーブの長時間装着による熱傷事例
気管・気管切開チューブの誤接続事例
徐放性製剤を粉砕した事例
立位での浣腸による直腸損傷事例
鎮静薬の誤調整事例
小児用ベッドから転落事例
電子カルテの誤入力
ガーゼの体内残存2
ガーゼの体内残存1



2月15日に公表された「医療安全情報No.195」では、「照合の未実施による誤った患者への検査・処置」事例がテーマに取り上げられました。

ある病院のCT検査室の待合室で、患者Xと患者Yが検査を待っていました。診療放射線技師AがCT検査票を見て患者Xをフルネームで呼んだところ、患者Yが返事をしました。技師Aは入室した患者Yに氏名と生年月日を言ってもらいましたが、それを患者XのCT検査票とは照合せず、そのまま検査を実施しました。診療放射線技師Bが患者Xから「検査はまだか?」と聞かれ確認したところ、「患者Yに患者Xの検査をしていた」ことが判明しました。



また別の病院では、患者Xに「9時開始の骨シンチグラフィ」を、患者Yに10時開始の胆道シンチグラフィ」を予定していました。診療放射線技師は、9時に来院していた患者Yを「骨シンチを行う患者Xである」と思い込み、検査室に入ってもらいました。同院では「患者の入室時に、検査予定一覧を手元の情報として患者照合を行う」ルールが設けられていました。技師は患者Yに氏名と生年月日を言ってもらいましたが、検査予定一覧との照合はしませんでした。担当医も「患者Xである」ことを確認せずに患者Yに骨シンチ用の放射性医薬品を投与。その後、撮影時間などを説明した際に「患者氏名が異なる」ことが分かり、「誤って患者Yに患者X用の放射性医薬品 を投与したしまった」ことが判明しました。



誤った患者に検査・処置を行えば、「当該患者にとって大きな肉体的・精神的負担を課す」(健康被害もちろん、2回目の検査・処置も必要となる)、「医療資源の無駄遣いとなる」、「業務効率が著しく低下する」などの極めて大きな問題につながることは述べるまでもないでしょう。このため例えば「患者に氏名と生年月日など2つの情報を『言って』もらい、医療者側の情報(電子カルテの画面など)と照合する」などの対策を参考に、各医療機関で再発防止策を練ることなどを機構は求めています。

また、こうした患者誤り事例は度々発生しており、機構の報告書(第71回報告書の記事はこちら第70回報告書の記事はこちら第69回の記事はこちら第68回の記事はこちら)では、例えば「確認にとどまらず、照合を行う」ことなどの重要性を強調しています。

しかし、例えば後者の医療機関ではすでにルールが出来上がっていたにも関わらず「ルールを遵守しなかった」(患者の言葉を一覧と照合しなかった)ことが事故発生の背景にあるようです。ルールを作成した後に、どのようにして「全スタッフにルールを遵守してもうらか」も重要となります。時間をかけて「多忙であってもルールを遵守しよう」という風土を各医療機関で醸成していくことが重要でしょう。非常に難しいテーマです。



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