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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

薬剤の投与経路誤り事故頻発、投与経路確認や「液体の内服・吸入薬は静脈ラインに接続不可の形で準備する」等の工夫を―医療機能評価機構

2022.12.16.(金)

用法の指示があったにもかかわらず、薬剤の投与経路を間違えてしまった—。

日本医療機能評価機構が12月15日に公表した「医療安全情報 No.193」から、こうした事例(医療事故)が依然として発生しており、2015年3月1日から今年(2022年)10月末までの間に「15件」も報告されていることが分かりました(機構のサイトはこちら)。

薬剤の投与経路を誤る医療事故が依然として頻発している(医療安全情報193 221215)

液体の内服薬や吸入薬を「注射するものと思い込んでしまう」ことも少なくない

日本医療機能評価機は、全国の医療機関から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故には至らなかったものの担当医療スタッフ等が「ヒヤリ」とした、「ハッ」とした事例)の報告を受け、背景等を詳しく分析して「事故等の再発防止に向けた提言」等を定期的に行っています【医療事故情報収集等事業】(国立病院や特定機能病院などでは事故等の報告が義務付けられている、本年(2022)年4―6月を対象とした第70回報告書に関する記事はこちら、昨年(2021年)1年間を対象とした2021年報に関する記事はこちら)。

さらに事故事例などの中から「特段の注意が必要と考えられる事例」(繰り返し発生している医療事故など)を毎月ピックアップ。簡潔に整理し「医療安全情報」として公表しています。医療現場に「こうした事故が頻発しているので最大限の注意を払ってほしい」と強く呼びかけるものです。

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ガーゼの体内残存2
ガーゼの体内残存1



12月15日に公表された「医療安全情報No.193」では、「薬剤の投与経路間違い」事例が、依然として頻発していることからテーマに取り上げられました。

ある病院において、患者が「腸瘻チューブを自己抜去」してしまったため、「全ての内服薬を注射薬に変更する」指示が出されました。担当看護師A(2年目)は吸入を実施した経験がなく、気管支喘息・慢性気管支炎・肺気腫の症状緩和に用いる「メプチン吸入液0.01%」の吸入指示が出た際、「他の薬剤と同様に静脈注射する」ものと思い込んでしまいました。看護師Aはメプチン吸入液0.3mLを注射器に準備。看護師Bと指示画面を見て投与量は確認したものの、「投与経路の確認」はしませんでした。看護師Bは、普段から「吸入薬は注射器に準備していた」ため、「看護師Aが同剤を静脈から投与する」つもりでいることに気付きませんでした。その後、看護師Aは誤って「メプチン吸入液を静脈注射」してしまいました。



また別の病院では、水薬を準備する際に「注射器で計量し、薬杯に入れて患者に渡す」という手順を踏んでいました。看護師Xは指示画面を確認し、鉄欠乏性貧血の治療に用いる「インクレミンシロップ5%」を注射器で5mL計量しました。看護師Xは、注射器のまま他の錠剤と一緒に看護師Yに渡し、投与を依頼しました。看護師Yは指示画面を確認せず、「注射器に入った薬液は静脈注射する」と認識してしまいました。患者の錠剤内服後、看護師Yは注射器に入ったインクレミンシロップを静脈注射。その直後、患者に嘔気・嘔吐がみられ、モニタ上「頻脈」となる事態に陥ってしまいました。



投与経路を誤った場合、「有用な医薬品が、患者の心身に大きな害を及ぼす毒物になる」ことも稀ではありません。

機構では、▼薬剤を準備する前や投与する前に「指示に記載された投与経路」を確認する▼液体の内服薬や吸入薬は、「静脈ラインに接続できないスポイトや薬杯、カテーテルチップ型シリンジなどに準備」する—などの取り組みを推奨。これらを参考に「自院にマッチしたルール(手順)を構築し、実際に取り組む」ことが重要です。



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2016年1-3月、医療事故が865件報告され、うち13%超は患者側にも起因要素―医療機能評価機構
15年4-6月の医療事故は771件、うち9.1%で患者が死亡―医療機能評価機構
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