人工呼吸器の再接続を誤る事例が散発、人工呼吸器使用患者のもとを離れる際は「回路接続」「胸郭の動き」を確認せよ―医療機能評価機構
2023.1.18.(水)
患者から人工呼吸器をいったん外し、再接続時に「人工呼吸器の回路にテスト肺を接続してしまった」ため、人工呼吸器のアラームが鳴ら ず、患者に回路を再接続していないことに気付くのが遅れてしまった—。
日本医療機能評価機構が1月16日に公表した「医療安全情報 No.194」から、こうした事例(医療事故)が依然として発生しており、2019年1月1日から昨年(2022年)11月末までの間に3件報告されていることが分かりました(機構のサイトはこちら)。
人工呼吸器をテスト肺に接続したためアラームが鳴らず、「接続誤り」に気づかないことも
日本医療機能評価機は、全国の医療機関から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故には至らなかったものの担当医療スタッフ等が「ヒヤリ」とした、「ハッ」とした事例)の報告を受け、背景等を詳しく分析して「事故等の再発防止に向けた提言」等を定期的に行っています【医療事故情報収集等事業】(国立病院や特定機能病院などでは事故等の報告が義務付けられている、昨年(2022)年7―9月を対象とした第71回報告書に関する記事はこちら)。
さらに事故事例などの中から「特段の注意が必要と考えられる事例」(繰り返し発生している医療事故など)を毎月ピックアップ。簡潔に整理し「医療安全情報」として公表しています。医療現場に「こうした事故が頻発しているので最大限の注意を払ってほしい」と強く呼びかけるものです。
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▽ガーゼの体内残存2
▽ガーゼの体内残存1
1月16日に公表された「医療安全情報No.194」では、「テスト肺使用による人工呼吸器回路の再接続忘れ」事例がテーマに取り上げられました。
ある病院において、看護師が人工呼吸管理中の患者の体位変換を行う際、人工呼吸器の回路を気管切開チューブから一度外し、テスト肺を接続しました。体位変換後、患者の呼吸状態や人工呼吸器の回路の接続を確認しないまま退室してしまいました。8分後、セントラルモニタのアラームが鳴り、「SpO2 85%、心拍数40回/分」であることに気付きました。看護師が訪室したところ「患者に人工呼吸器の回路を再接続していなかった」ことが分かりました。
また別の病院では、看護師が人工呼吸管理中の患者(自発呼吸あり)の体位変換を行う際、人工呼吸器の回路を気管切開チューブからいったん外し、テスト肺を接続しました。体位変換後、患者に人工呼吸器の回路を接続せず退室してしまいました。看護師は、5分後に患者の経管栄養を開始し、30分後には人工呼吸器の加温加湿器の蒸留水を交換しましたが、患者の呼吸状態や人工呼吸器の回路接続は確認しませんでした。体位変換から1時間後、患者の家族が来院し、患者に人工呼吸器の回路が接続されていないことに気付きました。
人工呼吸器が適切に接続されていなければ、患者の生命が非常器に危険な状態に陥ってしまうことは述べるまでもありません。新型コロナウイルス感染症が流行する中では、人工呼吸器を使用するケースが増えており、上記のような事故が生じやすい環境になっていると言え、多くの医療機関で「再発防止」に向けた取り組みを進める必要があります。
機構では、「人工呼吸器を装着している患者のもとを離れる際は、▼回路が患者に接続されていること▼患者の胸郭の動き—を確認する」といった基本的事項を再徹底するなどの取り組みを推奨。これらを参考に「自院にマッチしたルール(手順)を構築し、実際に取り組む」ことが極めて重要です。
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