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病床機能報告 病床ユニット

複数患者の電子カルテを同時に開き、患者氏名の確認が不十分なために「患者を間違ってオーダしてしまう」事例が頻発―医療機能評価機構

2022.12.27.(火)

今年(2022年)4-6月に報告された医療事故は1131件、ヒヤリ・ハット事例は7054件であった。医療事故のうち7.1%では患者が死亡しており、9.4%では死亡にこそ至らないまでも「障害残存」の可能性が高い—。

こういった状況が、日本医療機能評価機構が12月23日に公表した「医療事故情報収集等事業」の第71回報告書(今年(2022年)7-9月が対象)から明らかになりました(機構のサイトはこちら)(前四半期(2022年1-3月)を対象にした第70回報告書に関する記事はこちら)。

また報告書では「患者間違いに関連した事例」を取り上げています。今回は「電子カルテでオーダなどする際に、誤った患者を選択してしまった」事例に着目。▼複数患者の電子カルテを同時に開かない▼必ず「患者氏名の確認」を行う—ことなどの重要性を強く訴えています。

2022年7-9月、依然「治療・処置」関連の医療事故が最多に

今年(2022年)7-9月に報告された医療事故は993件でした。今夏には、新型コロナウイルス感染症の第7波が我が国を襲っており、これに伴う「延べ患者数の減少→事故報告件数などの減少」が生じているものと思われます。

事故の程度別に見ると、▼死亡:75件・事故事例の7.6%(前四半期に比べて0.5ポイント増)▼障害残存の可能性が高い:110件・同11.1%(同1.7ポイント増)▼障害残存の可能性が低い:273件・同27.5%(同0.7ポイント増)▼障害残存の可能性なし:300件・同30.2%(同5.7ポイント増)―などとなりました。前四半期に比べて事故が重度化しているように見えますが、やはり「中長期的に動向を見ていく」必要があります。

医療事故の概要を見ると、最も多いのは「治療・処置」の335件・35.8%(前四半期に比べて2.3ポイント増)。次いで「療養上の世話」の315件・31.8%(同1.8ポイント増)、「ドレーン・チューブ」84件・同8.5%(同0.3ポイント減)、「薬剤」60件・同6.0%(同1.6ポイント減)などと続きます。「治療・処置」「療養上の世話」のシェアが増加しており、コロナ禍で「重症患者が増加している」こととの関連などが気になります。

長引く新型コロナウイルス感染症の影響で、医療現場の混乱が続いていると考えられます。今後も中長期的に動向を見守る必要があります。

2022年7ー9月における医療事故の状況(医療事故情報収集等事業・第71回報告書1 221223)

ヒヤリ・ハット事例、さまざまな場面で発生している点に留意を

ヒヤリ・ハット事例に目を移すと、今年(2022)年7-9月の報告件数は1万415件。内訳を見ると、依然として「薬剤」関連の事例が最も多く4064件・ヒヤリ・ハット事例全体の39.0%(前四半期と比べて1.8ポイント減)を占めています。次いで「療養上の世話」1861件・同17.9%(同2.3ポイント減)、「ドレーン・チューブ」1355件・同13.0%(同0.6ポイント増)などと続いています。

医療事故に比べて「シェアや順位の変化」などが小さいようです。ここから「事故に結びつくシチュエーションは大きく変わっていない」が、医療現場が混乱しているために「実際に事故につながる事例に変化が生じている」のではないか、と推測できます。

ヒヤリ・ハット事例のうち、医療機関での実施がなかった6716件について、「仮に実施してしまっていた場合の患者への影響度」を見ると、「軽微な処置・治療が必要、もしくは処置・治療が不要と考えられる」事例が93.8%(前四半期から1.0ポイント増)と、ほとんどを占めている状況にも変化はありません。

しかし、「濃厚な処置・治療が必要と考えられる」ケースも5.3%(同1.0ポイント減)、さらに「死亡・重篤な状況に至ったと考えられる」ケースも0.9%(同0.1ポイント減)あります。一部にとどまってはいますが、「一歩間違えば重大な影響が出ていた」事例が生じており、「すべての医療機関において院内のチェック体制を早急に点検しなおす」必要があるでしょう。

2022年7ー9月におけるヒヤリ・ハット事例の状況(医療事故情報収集等事業・第71回報告書2 221223)



なお、その際には、Gem Medが繰り返しお伝えしているように「個人の注意だけで医療事故やヒヤリ・ハット事例を防止することはできない」点に留意すべきでしょう。どれだけ注意深く業務を行っても、人は必ずミスを犯します。とりわけ、極めて多忙な業務環境にある医療従事者はミスが生じやすい状況に置かれており、こうした中では、「ペナルティの導入」などには意味がなく(効果がない)、かえって弊害のほうが大きくなると危機管理の専門家は指摘します。

「人はミスを必ず犯す」という前提に立ち、「必ず複数人でチェックする」「ミスが生じる前に、あるいは生じた場合には、すぐに気付ける仕組みを構築する」「また包み隠さず報告できるような、院内のルールを遵守し、医療安全を確保し、医療の質を向上させようという、風土を作り上げる」など、医療機関全体で対策を講じることが必要です。

ただし、「複数人でのチェック」には大きな落とし穴がある点に留意が必要です。A・Bの2人でチェックをする際に、Aさんは「Bさんがチェックをするので『だいたい』で良かろう」と、Bさんは「Aさんがチェックをしているので『だいたい』で良かろう」と考えてしまうことが少なからずあります。この場合には「1人でのチェック」よりも甘くなってしまいます。こうした点も十分に認識したうえで、慎重に「複数チェック」を導入する必要があるでしょう(関連記事はこちら)。

複数患者のカルテ画面を開かず、患者の氏名を確認することなどが患者間違い防止に重要

報告書では毎回テーマを絞り、医療事故の再発防止に向けた詳細な分析を行っています。今回は、前回報告書前々回報告書につづく「患者間違いに関連した事例」と、「離床センサーが電源の入れ忘れや使用方法の間違いにより作動しなかった事例」を詳細に分析し、改善策を提示しています。

本稿でも、引き続き「患者間違いに関連した事例」を眺めてみます。

すでに報じているとおり、2019年1月から昨年(2021年)12月までに、144件もの患者間違い事故が報告されている点に驚かされます(年間50件程度、月に4件以上、週に1件程度発生している計算)。

これまでに「患者を治療室などに呼び込む場面」、「患者にモノを投与する/使用する/渡す場面」、「輸血の場面」における「患者間違い」防止策が検討されてきました。

今回は「電子カルテで患者氏名を選択・設定する際」のミスに注目しています。いくつかの事例を眺めてみましょう。

【事故事例】
▽透析中の患者Xの血液ガス検査を実施した結果、KCL(塩化カリウム)を投与して補正 することになりました。しかし投与2時間後、誤って患者YにKCLをオーダし、投与していたことが判明。患者Yは透析中のためカリウム値の上昇は見られず、幸い症状やバイタルサインの変化もありませんでした。患者Xへは、カリウム補正が遅れたため、ECUM(限外濾過)を追加してカリウム補正をすることとなりました。
→「2名の人工透析患者をICUで治療していた」こと、「医師Aが、患者Xのベッドサイドで研修医Bに指示しましたが、その際、研修医Bは別の端末で患者Yのカルテを開いており、気づかないままにオーダした」こと、「電子カルテ画面が患者Yのものであることに医師Aが気づかなった」ことが背景にあります

▽救命センター初療室に患者Xが搬送されました。看護師が「交差血のオーダと医師のサインが入ったラベル」を受け取り、交差血スピッツに患者Xの血液を入れ、ラベルを貼付しました。その際、ラベルの名前は「センター◯◯」でしたが、初療室に他の患者がいなかたことから、看護師はIDの確認をせずにサインし、輸血室へ提出しました。その後、初療室の電子カルテを使用しようとしたところ、現在患者は1人しかいないにもかかわらず、別の患者Yのカルテが開いていました。実は、患者Yは1時間前に死亡しており、氏名不詳のままであったことに気づきました。交差血のオーダを確認すると患者YのIDになって おり、検査の中止を依頼するに至りました
→「氏名不詳の患者の場合、表記が『センター○○』となり、氏名の確認ができなかった」こと、「初療室の患者が1人の場合、ラベルや電子カルテなどがその患者のもので間違いないと思い込んでしまう」ことなどが背景にあります

▽患者Xは左腎盂形成術の術前評価として、外来で逆行性尿路造影検査が予定されていました。 医師Aは、検査実施前に透視室の外にある電子カルテで検査内容を確認。その際、電子カルテ画面は、医師Bが開いた患者Yのものでした。医師Aは、患者Yのカルテを参照して尿管ステント挿入術を行うと認識し、患者Xに尿管ステントを挿入してしまいました。検査終了後、電子カルテに記録する際に「別の患者のカルテを参照していた」ことに気付き、患者Xに尿管ステントを誤って留置したことを説明し、膀胱検査室で不要な尿管ステントを抜去しました
→「医師Aは別の医師Bが開いた電子カルテを使用し、かつ患者確認が不十分であった」ことなどが背景にあります

【ヒヤリ・ハット事例】
▽発熱とSpO2低下で救急搬送された患者Xに尿検査の指示が出ました。患者Xは膀胱留置カテーテル挿入中であり、看護師は尿を採取し提出した。その後、検査科より「検査しようとしたが何度やっても検査ができない」と連絡があり、検体には患者Yのラベルが貼られていたことがわかりました。研修医に確認すると、誤って患者Yに尿検査をオーダ入力したが、すぐに取り消したことがわかり、「患者間違い」であったことを検査科に説明し、患者Xのオーダで検査を実施することができました

▽コロナ当番の救急外来に、10歳の患者Xが本人のみ来院しました。医師は、救急患者一覧に受診患者の表示がないため、氏名を「かな」で検索。同姓同名の9歳の患者Yが1名のみ検索されたため、受診患者Xと勘違いしてカルテ記載、検査オーダを行いました。看護師が指示を確認しよう2つの識別子で患者認証を行ったところオーダがなかったため、「誤入力の可能性」を好悪して、再度、2つの識別子で確認。誤りが判明したため、検査オーダを修正し、患者Xの検体を提出することができました

▽看護師はスマートデバイスを使って患者Xの体重を患者Yのカルテに入力してしまいました。翌日、他の看護師が患者Yの体重が12.6kgも減っていることに気付き、入力間違いが判明。その後、カルテの入力を修正することができました。誤入力した体重による医師からの指示はありませんでした



こうした事例の背景を詳しく分析し、機構では次のような改善が図れるのではないかと提案しています。これらを参考に「自院にマッチしたルール(手順)を構築していく」ことが重要です。

【電子カルテ使用時のルール】
▽複数の患者のカルテは同時に開かない
▽患者に装着されているリストバンドのバーコードを読み取って電子カルテを開く
▽ICUのベッドサイドの端末では、そのベッドの患者以外の電子カルテは開かないというルールを徹底する
▽使用後のログアウト操作を徹底する
▽自分のIDでログインする

【確認時のルール】
▽電子カルテの患者氏名を必ず確認してから入力する
▽医師は、検査オーダの入力前・後—、帳票の出力時、看護師へ手渡す前に、必ず患者氏名が正しいかを確認する
▽看護師は、検査用紙を受け取る際に、患者氏名と検査内容を医師と確認する

【その他のルール】
▽初療室の患者が1人のみでも、ラベルがその患者のものと思い込まない
▽誤ったデータを送信した場合の対応手順を見直す



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