バッグ型キット製剤の隔壁を開通させないまま点滴を行ってしまう医療事故多発、開通確認のうえで薬剤投与を—医療機能評価機構
2023.9.19.(火)
バッグ型キット製剤の隔壁を開通させないまま点滴を行ってしまった—。
日本医療機能評価機構が9月15日に公表した「医療安全情報 No.202」から、こうした事例(医療事故)が依然として発生しており、2020年1月1日から本末(2023年)7月末までの間に26件も件報告されていることが分かりました(機構のサイトはこちら)。
開通の確認、隔壁が設けられている理由の教育など徹底を
日本医療機能評価機は、全国の医療機関から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故には至らなかったものの担当医療スタッフ等が「ヒヤリ」とした、「ハッ」とした事例)の報告を受け、背景等を詳しく分析して「事故等の再発防止に向けた提言」等を定期的に行っています【医療事故情報収集等事業】(国立病院や特定機能病院などでは事故等の報告が義務付けられている、本年(2023)年1―3月を対象とした第73回報告書に関する記事はこちら)。
さらに事故事例などの中から「特段の注意が必要と考えられる事例」(繰り返し発生している医療事故など)を毎月ピックアップ。簡潔に整理し「医療安全情報」として公表しています。医療現場に「こうした事故が頻発しているので最大限の注意を払ってほしい」と強く呼びかけるものです。
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9月15日に公表された「医療安全情報No.202」では、「バッグ型キット製剤の隔壁の未開通」事例がテーマに取り上げられました。
ある病院において、日勤の看護師Aがアミノ酸・糖・電解質・ビタミンB1液である「ビーフリード輸液」を外装から取り出し、隔壁を開通せずに「開通確認」のカバーを外しました。ナースコールがあり患者対応をする必要があったため、Aは作業を中断しました。その後、Aは輸液の準備を再開し、「ビーフリード輸液」に、カリウム補給剤の「アスパラカリウム注10mEq」を混注しました。その後、Aは「開通確認のカバーが外れている」ために「開通済みである」と思い込み、準備した輸液の投与を開始しました。その後、夜勤の看護師Bが「ビーフリード輸液の隔壁が開通していない」ことに気付きました。
また別の病院では、看護師Xが、抗菌剤の「メロペネム点滴静注用バッグ1g」を準備する際、上室のカバーシートと一緒に開通確認シールを剥がしました。カバーシートとシールを剥がしたことで「準備ができた」と思い込んでしまい、隔壁を開通しませんでした。Xは準備した薬剤の投与を開始。その後、別の看護師Yが「メロペネム点滴静注用バッグ1gの隔壁が開通していない」ことに気付きました。
投与開始直前にA薬剤とB薬剤を混合するために、隔壁を設けている製剤は多数あります。当然、隔壁を開通しなければ両薬剤が混合されず、片方の薬剤のみが投与されるにすぎない事態に陥ってしまいますが、上述のように「開通忘れ」事例が多数生じています。十分な治療効果が得られないとともに、また薬害が発生する可能性もあり、再発防止が強く求められます。
機構では、▼隔壁を開通させてから「開通確認」のシールやカバーを外す▼輸液バッグ内の上室と下室を交互に押して混合していることを確認する▼患者に投与する際に「隔壁が開通している」ことを確認する▼なぜ製剤に隔壁があるのか職員に教育する—などの基本的な取り組みを徹底することを呼び掛けています。
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